学習・勉強法/国語の勉強法

将来AIに仕事を奪われない子に必要な読解力

AI(人工知能)の登場で、なくなる仕事が話題になっています。将来、わが子がAIに仕事を奪われないためには、AIが苦手なこと、つまり、読解力を身につけることが大切です。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

AI(人工知能)はただの計算機!?

ガイドのAI(人工知能)に対する第一印象は、「便利で役に立つけれど、ラスボスに効かない呪文をかけまくるおまぬけさん」です。これはドラゴンクエスト(ドラクエ)4が発売されたときの率直な印象です。

とはいえ、「4人パーティーで全員に戦闘コマンドを入力するのが面倒」でしたから、ガイドのような面倒くさがり屋でせっかちな人間には、確かに役に立つ存在です。

AIとは一言で言ってしまえば、膨大なデータを論理や確率、統計で処理する「計算機」です。計算機である以上、データや計算式を入力しないと答えを出すことはできません。

ドラクエ4のAIの場合、ラスボス(強敵)登場→早く倒さないとパーティーが危険→速攻性の高い呪文という論理に基づいて、「攻撃」か「呪文」かという戦闘コマンドをAIが選択するわけです。ただ、残念ながら当時は容量の関係で、「ラスボスにはこの選択肢は無効」という入力が足りなかったのです。
 

AIの役割の一つはコストカット(労力の削減)

さて、「AIによって多くの仕事(職)が奪われるのではないか」という漠然と不安があります。これは本当なのでしょうか。

まず、AIの大きな役割の一つは、これまた一言で言ってしまえばコスト(労力)の削減です。「4人分の戦闘コマンドを入力する」のは、戦闘のたびにしなければいけないことなのですから確かに労力です。しかし、AIのおかげでこの労力は少なくてすみます。

このように、AIは人間の労力を肩代わりしてくれる、お助けマンなのです。
 

「読む」ことが苦手なAI

しかし、そんなAIでも万能というわけではありません。AIが唯一苦手とされているのが読解力です。文字通り、文章を読んで内容を理解する力です。

AIの数学の学力は東大レベルをゆうに超えているのですが、国語や英語の学力はMARCH(マーチ)レベルを超えるのは難しいそうです。それでも偏差値57が現在のAIの学力だというのですから驚きです。

ところで、この偏差値57という数字が意味することはどんなことなのでしょうか。ベストセラーになっている「AI vs 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社)」を読んでみたところ、MARCHレベルの大学を出ている学生は、将来、AIに仕事を奪われる可能性があると考えられます。

これが事実だとしたら大変な事態ですが、本書には、そうならないためのヒントも書かれています。実際のところ、AIに仕事を奪われないためには、AIが苦手とする読解力がキーワードになりそうです。本書で取り上げられていた問題を見てみましょう。

■次の文を読み、メジャーリーグ選手の出身国の内訳を表すグラフとして適当なものをすべて選びなさい。

メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。
メジャーリーグ選手の出身国の内訳:東大生でも2人に1人が間違えた、グラフの意味を読みとる問題(AI vs 教科書が読めない子どもたちより)

メジャーリーグ選手の出身国の内訳:東大生でも2人に1人が間違えた、グラフの意味を読みとる問題(AI vs 教科書が読めない子どもたちより)


(新井紀子著「AI vs 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社)」より)

この問題の正答率が衝撃的で、中学生の12%、高校生の28%しか正解できませんでした。東大生でもおよそ半数が間違えたというのですから驚きです。

「28%はアメリカ合衆国以外の出身」なので、72%はアメリカ合衆国の出身となります。残りの28%のうち、35%がドミニカ共和国の出身なので、0.28×0.35=0.098、つまり全体の9.8%がドミニカ共和国の出身となります。というわけで、正解は「イ」のグラフのみです。

誤答として一番多かったのが「エ」のグラフです。間違えた人は、「アメリカ合衆国」「28%」「ドミニカ共和国」「およそ35%」という単語と数字だけしかよみとっていないと考えられます。「以外の」という言葉を読み飛ばしているのです。
 

読みとることが“作業”となっている中高生

子どもたちに勉強を教えていると、多くの中高生が文章を読むというよりも、読み飛ばしたりつまみ読みしたりしているという場面に遭遇します。

文章を読んでいるようで、文章中から答えらしい言葉を抜き出してくるという“作業”をしているのです。これは読解力とはほど遠いものと言わざるを得ません。

文章を読みとる力が、このような読解力とはほど遠いものである子は、将来、AIに仕事をとって代わられる可能性は高いかもしれません。しかし、逆の見方をすれば、しっかりとした読解力を身につけていれば、AIに仕事を奪われることがないということが言えそうです。
 

読解力とはどんな力か?

そこで、改めて読解力とはいったいどんな力なのかを紹介しましょう。中学校の理科では、血液の仕組みについて学びます。
 
  • 動脈‥‥心臓から押し出される血液の流れる血管
  • 静脈‥‥心臓へ流れ込む血液の流れる血管
  • 動脈血‥酸素を多く含んだ血液
  • 静脈血‥二酸化炭素を多く含んだ血液

この単元でよくあるのが、「動脈血は動脈を流れる血液」という間違いです。動脈血だから、文字通り動脈を流れる血液だと思いがちですが、それは違います。肺動脈(=心臓から肺へつながる血管)は、全身を回ってきた血液が心臓に戻って肺へ出ていく血液が流れており、二酸化炭素を多く含んだ血液、つまり、静脈血が流れています。

このような間違いは、動脈か静脈か(=血管)は、心臓を基準に判断しなければいけないのに対して、動脈血か静脈血か(=血液)は、酸素の量を基準に判断しなければいけないという基準の違いを読みとっていないことが原因で起こります。
 

本当の学力を身につけるためにも読解力は重要

教科書を読んで、この違いを読みとる力こそが、まさに読解力なのです。読解力とは、教科書を何となく読むのではなく、正しく読みとる力であり、これは国語に限らず、理科や歴史、地理、数学、ひいては英語でも必要とされる力です。

教科書を正しく読むことができれば、塾や家庭教師に頼らなくても、自分で勉強することができます。また、将来、資格取得のために勉強したり、仕事や機械の操作を覚えるためにマニュアルを読んだりする場合にも、読解力は必要です。

読解力があれば、わからないことがあっても、ネットや書籍を調べて、必要な情報や正しい情報にたどり着くことができます。大学生の半数以上がほぼ全く本を読まないのも、この読解力の欠如が背景にあると考えられます。

結局のところ、自分で勉強できる子は、AIに負けない読解力を持っている子であり、そういう読解力を持っている子こそが、将来、AIに負けない子と言えるのです。

■この記事に関連した書籍
新井紀子著「AI vs 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社)
勉強法以前の「勉強体質」のつくりかた(主婦の友社)

■この記事に関連したガイドの記事
読解力を高め、国語力をつける方法・勉強法9
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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