ストレス

上司が怖い…理不尽な叱責からメンタルを守る3の方法

上司が怖くて、萎縮したり緊張したりしてしまうという悩みは多いもの。特に、頻繁に理不尽な叱責を長時間浴びせ、部下を追い詰めてしまう「詰める上司」の攻撃の犠牲となり、メンタルを害してしまったり、退職に追いやられてしまうことも実際にあるものです。「詰める叱責」の代表的な5つのパターンと、取るべき3つの基本行動について解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「学習性無力感」を引き起こす、「詰める上司」の問題点

逃げられない状況で度重なる執拗な叱責を受け続けると、人は無気力を学習する

逃げられない状況で度重なる執拗な叱責を受け続けると、人は無気力を学習する

「なぜこんなミスをやらかした!」「なぜこんな簡単なことができない!」と執拗にミスを指摘し、強い口調や長時間にわたる叱責で部下を追い詰めてしまう「詰める上司」。その攻撃にさらされ続けると、部下は合理的な判断ができなくなってしまいます。

人は、逃げられない環境下で一方的に長時間にわたって責められ続けると、すべての善処行動を諦め、その場に呆然と立ち尽くしてしまいます。そして、たびたび同じような罵声を浴びせられても、逃げることも立ち向かうこともできず、“されるがまま”になってしまいます。この状態を「学習性無力感」と呼びます。

大人しく話を聞いているように見えても頭には何の情報も入らず、思考が停止し、深い無力感へと陥ってしまうのです。この状態が続くとメンタルヘルスが阻害され、心の病の発症へとつながってしまうこともあります。
 

注意すべき「詰める上司」・5つの不当な叱責パターン

では、学習性無力感をもたらす不当な「詰める叱責」には、どのようなパターンがあるのでしょう? 代表的なものとして、次の5つを紹介します。

1. 同じ批判の言葉を、長時間・頻回にわたって繰り返す
長時間・頻回にわたり、同じ批判の言葉をくどくどと繰り返します。こうすることで、責められる部下は「自分がいかに無能であるか」「どれだけ上司や組織に迷惑をかけているか」と思わされ、強烈な自責感、自己否定感を植え付けられます。

2. 達成不可能な高いノルマを課し、できないことをなじる
明らかに達成不可能な高いノルマを設定し、「結果が出ない」という事実だけを取り上げてなじります。あらかじめ部下本人に「やります」と言わせて言質を取るため、それを実行していない本人の能力に問題があるものと思わせます。

3. 部下の能力を比較し、プレッシャーを与える
複数の部下の能力とパフォーマンスを比較し、結果の出せない部下の行動を徹底的に批判します。ただし、その時点では好評価を受けている部下も、結果が出せなくなると容赦なく「詰められる対象」へと転落させられます。

4. 「上司の価値観が基準である」と思わせる
「毎日終電まで仕事をしてこそ一人前」「この量なら半日で終わらせるべき」というように、上司の価値観を基準とした仕事のルールを強要します。その基準についていけないのは本人の「努力不足」「意識の低さ」のせいであると思わせ、徹底的に追及します。

5. 非言語的プレッシャーを多用する
壁や机を叩いたり、大きな独り言で毒舌をつぶやく、一定の部下には目も合わせずにその存在を無視するなどして、部下に非言語的なプレッシャーをたびたび与えます。こうした非言語的プレッシャーを頻繁に受けることによって、部下は常に予測不能な攻撃におびえるようになります。
 

「詰める叱責」の犠牲者にならないための3つの基本行動

理不尽な叱責の不当性に早めに気づくことが肝心

理不尽な叱責の不当性に早めに気づき、対処していくことが肝心

では、上のような「詰める叱責」から自分自身のメンタルヘルスを守っていくためには、部下はどのようなことを心がけたらよいのでしょう? 基本となる3つの行動をお伝えします。

1. 「詰める叱責」の不当性に気づき、自分自身を責めない
「詰める叱責」をまともに受け続けると、部下は自責感を覚えるようになります。しかし、それこそ「詰める上司」の思うつぼです。詰める側は受け手に自責感を植え付けることで、自分の攻撃の正当性を担保しようとするからです。

そもそも、反論できない状況で繰り返し、継続的に執拗な批判を与え続けることは、「精神的攻撃」のパワーハラスメントであり、適正な指導としての叱責であるとはいえません。部下が責任を感じて「自分のせいです」と発言したとしても、不当な状況下でそう言わざるをえなかったとすれば、それが本人の責任を証明するものとはなりえないでしょう。

明らかに強すぎるプレッシャーを与えられ、達成不可能なノルマを課せられているなら、何もかもを自分の責任として背負い込む必要はありません。

2. (できれば)上司に叱責の不当性を認識させる
「詰める上司」の多くは、自分自身の行き過ぎた叱責の不当性に気づかず、部下への精神的攻撃をエスカレートさせています。

したがって、その叱責が適正な指導の範囲を超えていることを早めに認識させる必要があります。周囲の人やさらに上の上司に相談して、善処策を探っていくとよいでしょう。

ただし権力の差が大きく、閉塞的な環境である場合、そのような対策が不可能、あるいは功を奏さない場合も多いものです。そうした場合、次の行動を検討します。

3. 相談窓口や専門家に相談し、一人で抱えずに問題を解決する
職場内のハラスメント相談窓口、公的、法的なハラスメント相談窓口、弁護士等に相談をし、一人でその問題を抱えないことが重要です。こうした窓口や専門家に相談すると、今後の行動のアドバイスや介入の検討などをしてもらうことができます。

正しい対処を行う相談窓口・専門家であれば、相談者の不安が増幅しないように本人の要望と状態を把握し、具体的な対処策の案を複数提示してくれます。過剰な叱責が書かれた文面や、長時間勤務の実態を証明するタイムカードなどの証拠を持参すると、より具体的な相談が進みやすくなります。


「詰める」上司の叱責は部下の心を追い詰め、メンタルヘルスを阻害する攻撃性の高い行動です。その叱責を受け続けて苦しくなってきたときには、上記の3つの行動を参考にし、一人で抱えず自分自身を責めずに、具体的な対処をしていきましょう。
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