*3~4月開幕の注目!ミュージカル
『マディソン郡の橋』3月2日開幕 ←山口祐一郎さん、涼風真世さん取材会レポート&観劇レポートをUP!(3頁)
『ジキル&ハイド』3月3日開幕 ←畠中洋さんインタビュー&観劇レポートをUP!(2頁)
『ツクリバナシ』3月13日開幕 ←出演者&演出家インタビュー&観劇レポートをUP!(
3頁)
『Suicide Party』3月14日開幕 ←金すんらさん、笠松はるさん、谷口あかりさんインタビューをUP!(4頁)
『GEM CLUB2』3月16日プレビュー開幕 ←観劇レポートUP!(5頁)
『A Class Act』3月22日開幕 ←中井智彦さん、池谷祐子さん、染谷洸太さんインタビューをUP!(5頁)
『ロマーレ ~ロマを生き抜いた女 カルメン~』3月23日開幕 ←観劇レポートUP!(6頁)
『In This House』4月4日開幕 ←観劇レポートUP!(6頁)
『リトル・ナイト・ミュージック』4月8日開幕 ←観劇レポートUP!(6頁)
『1789 -バスティーユの恋人たち-』4月9日開幕 ←坂元健児さんインタビュー&観劇レポートをUP!(本頁)
*3月開催の注目ミュージカル・イベント
第三回東京ミュージカル・フェス「ミュージカル・スペシャルトークショー」(4頁)
*AllAbout ミュージカルで別途特集したミュージカル
『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』2月7日開幕 ←瀬奈じゅんさん&大原櫻子さんインタビューを掲載!
『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』3月9日開幕 ←鹿賀丈史さんインタビュー&観劇レポートを掲載!
『メリー・ポピンズ』3月18日プレビュー開幕 ←濱田めぐみさん、大貫勇輔さん、山路和弘さんインタビューを掲載!
『愛の讃歌』3月31日開幕 ←美輪明宏さんインタビュー1&2を掲載!
『アニー』4月21日開幕 ←藤本隆宏さんインタビューを掲載&青柳塁斗さんインタビューを近日掲載
『リトル・マーメイド』ロングラン上演中 ←齋藤舞さん、上川一哉さん、青山弥生さん、芝清道さん、荒川務さんインタビューを掲載!
『1789 -バスティーユの恋人たち-』
4月9日~5月12日=帝国劇場【見どころ】
『1789 -バスティーユの恋人たち-』Photo By Leslie Kee
18世紀末、特権階級に対する貧民たちの怒りが爆発寸前のフランスを舞台に、マリー・アントワネットの侍女オランプと、革命運動に身を投じた青年ロナンが出会い、恋におちる。彼らの愛はすべてを乗り越えることが出来るのか……。
ロナン役の小池徹平さん、加藤和樹さんを始めとする続演キャストに加え、今回はマリー・アントワネット役のwキャストの一人として元・宝塚トップスターの龍真咲さん、ロベスピエール役で三浦涼介さんが参加。新たなスターの輝きとともに、2年前の熱狂が蘇ることでしょう。
【ラマール(ルイ16世の弟アルトワの密偵)役・坂元健児さんインタビュー】
一から立ち上げる必要がない分、今回の『1789』は
迫力も説得力も格段にグレードアップしています
坂元健児 71年宮崎県出身。95年に劇団四季に入団し『ライオンキング』『キャッツ』『ソング&ダンス』等に出演。退団後は『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『パレード』等、様々な舞台で活躍している。(C)Marino Matsushima
――稽古もそろそろ佳境かと思いますが、稽古場はどんな空気でしょうか?
「重さや暗さよりも、“リアリティ”が求められる稽古場です。僕らにとってフランス革命は遠い存在なだけに、下手をするとわざとらしかったり、お客様にアピールするような芝居になってしまう。演出の小池(修一郎)さんはそうではなく、いかにその時代のリアリティを感じて、その中で生きるかということを追求していらっしゃいます。
初演の時には、いろいろなジャンルから集まったキャストの“色とりどりの良さ”があったけれど、今回はそこに自然な一体感が生まれて、作品がより鮮明になってきている印象がありますね。土台から立ち上げる必要がないぶん、迫力も説得力も格段にグレードアップした作品になってきていると思います」
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
――“リアリティ”の表現ですが、上下の差が極端な当時のフランスの階級社会を、どのように実感し、表現されていますか?
「身分が上であれ下であれ、(本作のキャラクターの中には)それぞれ“自分の身を守りたい”という本能があって、それが各自の行動の根底にあると思っています。貴族であれば特権階級のままでいたい。貧困層であれば、何とかして生き延びたい。それも、ただ“飢えている”のではなく、“ずっと前から飢えている”という感覚でやってほしい、と小池さんはよくおっしゃっていますね」
――そんな中で、坂元さん演じるラマールは、ルイ16世の弟アルトワ(吉野圭吾さん)の密偵ということで、階級の垣根を超えて行き来もすれば、ヒロインのオランプ(神田沙也加さん、夢咲ねねさん)にもちょっかいを出したり(?!)と、とても面白いお役ですね。しかも坂元さんのラマールは、フランス版よりずっとかわいらしいです(笑)。
「小池さんから、面白い役にしてほしいと言われてフリーにやらせていただいていますが、コメディを演じようと思っているわけではありません。例えば、チャップリンは自分では悲劇を演じているけれど、それが観客には喜劇に見える。僕も、ラマールとしては大まじめなのに、そこから生じる“ずれ”“勘違い”が結果的に面白く見える、ということを心がけています。例えばオランプを見失うときにはとぼけたりせず、本当に見失っている、それが滑稽に見えるというふうに。コミカルさばかり追求していると“役”ではなくなってしまうので、あくまで自分の中ではシリアスに、と思っています」
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
――本作は『ノートルダム・ド・パリ』や『ロミオ&ジュリエット』と同じく、ポップな楽曲が主体のフレンチ・ミュージカルにあたりますが、こういった作品はいかがですか?
「『ノートルダム・ド・パリ』が大ヒットしてから、こういうショーケース形式のミュージカルが確立されましたよね。俳優としては、例えば『レ・ミゼラブル』のような、オペレッタやクラシカルをベースにした歌唱法とは全く異なるのが楽しいです。遊べるというか、例えば汚い声など、声のバリエーションが生かせるじゃないですか。もちろん、それだけのテクニックがないとできないけれど、歌い手としては遊びがいのある楽曲です」
――どんな舞台になりそうですか?
「音楽も魅力的だし、ダンスもアクロバットもあって迫力満点ということで、前回は何度も見に来て下さる方がいらっしゃいました。その中で僕は芝居に緩急をつける役どころですが、全体的にさらにパワーアップしていますので、ぜひ楽しみにしていてください」
――プロフィールについても少しうかがわせてください。坂元さんと言えば『ライオンキング』の初代シンバとして有名です。そのオーディションでは、課題にきっちり取り組んでいらっしゃる姿が印象的でした。
「あれは大変だったんですよ。『終わりなき夜』の最後に、とても高い音があるじゃないですか。あれが誰も出なくて、僕も練習では一度も出たことがなかったんだけど、必死に歌ったらたまたま出て“お、出たね”と(笑)」
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
――劇団を卒業されたのは、レパートリーを広げたかったから?
「僕は23で劇団四季に入った時から、30歳までここで精いっぱいやって、そのあとは小劇場とか、いろいろなことをやりたいと思っていました。実際に30になって迷いましたが、『ライオンキング』は3年やったし、思い切って辞めようと決意したんです」
――その後、弾けたお役を含め、充実したキャリアを築いていらっしゃいますね。
「(弾けた役が)意外と思われたかもしれませんが、僕は劇団で『美女と野獣』のドアマット役のころから、目立たないけれど面白いことを楽しんでやっていたので、やっていることは実はそれほど変わっていないんです。ただ、ロングランものだとみんなが好きにやってしまうと大変なので、抑えている部分もありましたけれど」
――『道化の瞳』(2014年)で怪我で降板されたこともありました。大きな出来事だったのではないでしょうか。
「そうですね。アクロバットのある役でしたが、稽古を積み重ねていく中で、毎日1時間半ストレッチをしていたにも関わらず、だんだん疲労が抜けなくなってきたんです。以前、右足のアキレス腱を切ったことがあって、その時の感覚に似てきたので、これは今日切るなと思っていたら、やはり切れてしまって。もちろんしないにこしたことはないので今後も注意はしますが、怪我自体は一つの“経験”としてとらえてもいいかなと思っています。それと、40歳過ぎてのアクロバットはしないほうがいいな、と(笑)」
――最近では先日出演された『TENTH』「この森で、天使はバスを降りた」での、因習にとらわれたケイレブ役が印象的でした。
『TENTH「この森で、天使はバスを降りた」』より(C)Marino Matsushima
――どんな表現者を目指していらっしゃいますか?
「ずっとやっていくわけですから、“楽しんで芝居をする”ということを大事にしています。ケイレブならどう“かわいそうな男”を演じるか、ラマールだったらどう悲劇性を追求するか。どの役にも課題があるので、それぞれに楽しむ。そして台詞については、“お芝居の台詞を言っている”のではなく、まさに今、この人物の中から出てきた言葉という風に発していく、ということを大切に、と思っています」
【観劇レポート】
激動の時代に翻弄される人々とその愛を、ダイナミックに描き出す
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
いっぽうで趣味に耽る王は弟アルトワの陰謀に気づかず失策を重ね、国民の多くの不信を招く。マリー・アントワネットもようやく王妃としての自らの勤めに気づくが時遅く、歴史の波は彼らを呑み込んでゆく……。
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
とりわけ、様々な角度に傾け可能な巨大パネルが、ある時は革命派が配布物を印刷する工場で前傾し、支配階級からの抑圧を明示したり、1幕終わりでは90度に倒したパネルの上にオランプが立ち、眼下のロナンとの立場の違いを強調するなど、効果的に登場。こうした要素を得て今回の再演は、全体的に細やかにブラッシュアップ。革命に至る道筋の中で懸命に生きる人々の物語が、フレンチ・ロックに彩られ、生き生きと展開してゆきます。
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
いっぽうwキャストの加藤和樹さんは農夫出身らしい武骨さと無鉄砲さが、オランプと出会ってからは硬質な色気に転じてゆく様が心憎いばかり。
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部
『1789 -バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部