【アースラ役・青山弥生さんインタビュー】

数あるディズニー・ミュージカルの中でも
真の“魔女”アースラを優雅に、思いっきり演じています

  • アースラ=海の魔女。自分を追放した弟トリトンへの、復讐の機会を窺っている。地上に憧れるアリエルに、その声と引き換えに三日間だけ人間に変えてやろうと罠をしかける。
青山弥生undefined1979年に研究所入所。『嵐の中の子どもたち』で初舞台を踏み、翌年『魔法をすてたマジョリン』マジョリン役に抜擢。『コーラスライン』コニー『オペラ座の怪人』メグ『ライオンキング』ラフィキ『マンマ・ミーア!』ロージー等を演じている。(C)Marino Matsushima

青山弥生 1979年に研究所入所。『嵐の中の子どもたち』で初舞台を踏み、翌年『魔法をすてたマジョリン』マジョリン役に抜擢。『コーラスライン』コニー『オペラ座の怪人』メグ『ライオンキング』ラフィキ『マンマ・ミーア!』ロージー等を演じている。(C)Marino Matsushima

――青山さんはアースラの日本版オリジナルキャストですが、巨大なアースラを青山さんが演じるということで、意外なキャスティングが話題になりました。

「例えば『ライオンキング』でもし自分が男性だったらスカーを演じたいほど思うほど、敵役に興味がありました。小柄だとどうしても演じる役柄が限られますが、この役は6本の足を動かしてくれる俳優(テンタクルス)とともに大きくなれますよね。これなら私でもできるのではないか、役の幅を広げるチャンスかもしれないと思い、チャレンジしたのです。

『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:下坂敦俊

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:下坂敦俊

でも、実は本作の最初のオーディションを、私は受けていませんでした。当時、私は大阪の『ライオンキング』に出演していて、近々同作のブロードウェイ版15周年イベントで日本のラフィキ役として歌うことにもなっていたのです。二兎を追うことはしたくなかったのでオーディションは諦めたのですが、ブロードウェイで歌って帰って来たところ、すでに始まっていた『リトルマーメイド』の稽古で、アースラ役(の候補)がもう一人必要になったと聞き、演出家に“受けてもいいですか”と直訴しました。マイケル・コザリンという音楽スーパーバイザーに歌を聴いていただき、合格しましたが、稽古場では皆、既に振付などがついていて、覚えることが山のようにあり、必死でしたね」

――『魔法をすてたマジョリン』のかわいいマジョリン役が今も目に焼き付いている観客としてはかなりの衝撃でしたが(笑)、ご自身の中でそういった抵抗はありませんでしたか?

「私が魔女らしく見えれば見えるほどアリエルがよく見えるし、中途半端では絶対ダメだと思っていました。悪賢く、執念深い性格を思いっきり表現しようと思っています」

――アースラの高笑いはとても印象的ですが、彼女は悪事をどこか“楽しんで”いるようにも感じられます。

「そうだと思いますね。私の高笑い、さきほどお話しした音楽監督のコザリンさんが気に入って下さって、“携帯の着信音にしたい”と言われました(笑)。ディズニーのヴィランズには独特の美意識があり、特にアースラは美しさの中に残忍さのある役だと思っていますので、あまりアグリーなアースラにはしたくなかったですね。おばちゃんというより、どこかに品を残しておきながら、動きを含めてセクシーな女ボスみたいにできたら、と」

――青山さんの腕が、様式的な美しさを見せる瞬間があり、素敵でした。
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:荒井健

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:荒井健

「私、少女時代に日舞をやっていたので、お扇子の扱いがどこか様式的に見えたのかもしれないですね。優雅さを大事にしています。またヨーロッパ(の宮廷文化)では、お扇子の扱い方次第でメッセージが違ってくるそうで、いろいろ調べて参考にしました。

もう一つ大事なのが、アースラの足を動かしてくれる6人の俳優たち(テンタクルス)との一体感です。初演の時は、お稽古が終わった後も毎日、彼らと鏡を見ながら稽古していました。息が合うまで本当に大変でしたね。本番に入ると自分では(鏡で)見られないのでどうかなと思っていますが、ぴったり合って見えましたら嬉しいです」

――初演から4年が過ぎ、改めて作品について“見えてきたこと”はありますか?

「私は東京開幕以来、他の演目との兼ね合いもあり、今回は久しぶりの出演となりました。初演の頃は自分のことで精一杯だったのですが、今はどういう役割を果たすべきか、見えてきたような気がします。そうは言っても幕が開くと緊張してしまいますが、やはり本当に作品世界に没頭するしかないですね。少しでも気を緩めたら、アースラになりませんし、アリエルとの手綱を緩めるわけにはいかないんです。頭のいいアリエルと取引をするアースラですが、目的は彼女の声を取ることではなく、あくまでトリトンを倒し、国(海の世界)を自分のものにすることだと、明確にしておかないといけません」

――敵役は、常に気を張っているものなのでしょうか。

「そう思います。それが最後の最後に緩んで、一瞬の隙を突かれてしまうんです」

――本作で、一番お好きな部分は?

「最後に、父親が娘(の恋)を許すところですね。もう一生会えないかもしれないのに、娘のためと思って彼女を許すという行為が、素晴らしいなと思います。アリエル役の俳優にもよく“親子だからこそ、あそこまで喧嘩できるんだよ”と言っていますが、子供のことを思うが故のトリトンの行動は本当に偉大ですね。私自身、この(演劇という)世界に入るときに“お前の好きな仕事をやっていいぞ”と言ってくれた、亡くなった父がトリトンに重なって見えます」

――手離すのは親としてはつらいことですが、子供を“信じている”からこそ、出来るのでしょうか。

「そうだと思います。この子は大丈夫だ、もう生きていけると確信できたことで、子供の幸せのために決断をする。家族って素敵ですよね。(アリエルの)姉役の俳優たちにも、トリトンと同様に、妹のことをよく考えていてねとよく言っています。この作品はみんなが、夢に向かうアリエルを中心に廻っていて、こんなにわかりやすい作品は無いと思います。ディズニー・プリンセスの中でもアリエルは特に人気らしいのですが、それは多分にアリエルの願い、祈りを巡って物語がストレートに伝わるからなのでしょうね。この部分(演目の骨格)は皆で大切にしていきたいなと思っています」

――世代を選ばず、楽しめる“最強演目”の一つですね。

「そうなんです。これからの時期は卒業・入学のプレゼントなどにもお勧めですね。名古屋と福岡、どちらの劇場も舞台と客席が近くて、見やすいですよ」

*次ページでトリトン役・芝清道さんインタビューをお送りします!