ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『リトルマーメイド』インタビュー特集〈魅力を語る〉(5ページ目)

今、二都市で上演中のミュージカル『リトルマーメイド』。誰もがポジティブになれると評判の舞台ですが、その魅力とは? 出演者の齋藤舞さん・上川一哉さん・青山弥生さん・芝清道さん・荒川務さんに一挙インタビュー、役作りや見どころをうかがいました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


【セバスチャン、スカットル役・荒川務さん】

「どんなにつらいことが起きても必ず乗り越えられる」という、
作品の強いメッセージを受け取っていただけたら嬉しいです

  • セバスチャン=宮廷音楽家のカニ。アリエルの美声に惚れ込み、トリトンに彼女のお目付け役をおおせつかると、海が自分の居場所ではないという彼女に海の世界のすばらしさを熱心に説く。
  • スカットル=楽天家のカモメ。自由に飛び回って得た情報をもとに、アリエルに地上の世界のことを教える。セバスチャンらとともにアリエルの恋を応援する。
荒川務undefined85年のオーディションで入団、翌年『ウェストサイド物語』リフ役で初舞台。『マンマ・ミーア!』サム『クレイジー・フォー・ユー』ボビー『コーラスライン』ボビー『ミュージカル異国の丘』九重秀隆『オンディーヌ』騎士ハンス等を演じている。(C)Marino Matsushima

荒川務 85年のオーディションで入団、翌年『ウェストサイド物語』リフ役で初舞台。『マンマ・ミーア!』サム『クレイジー・フォー・ユー』ボビー『コーラスライン』ボビー『ミュージカル異国の丘』九重秀隆『オンディーヌ』騎士ハンス等を演じている。(C)Marino Matsushima

――荒川さんはスカットルのオリジナル・キャストを勤め、現在はセバスチャンも演じていらっしゃいます。

「僕も初演時、はじめは『リトルマーメイド』ではなく他の作品の稽古をしていたんです。稽古もだいぶ佳境に入った頃に、僕が入ることになりました。初日の1か月ちょっと前で、既に作品もかなり出来上がってきていて僕は出遅れたスタートでしたが、この劇団では稽古のやり方はみんな心得ているので、振り覚え歌を覚え台詞を覚え……と、スムーズに入っていけましたね」

――マイペースのスカットルはなんとも憎めないキャラクターですが、どこにポイントを置いていらっしゃいますか?
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:下坂敦俊

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:下坂敦俊

「カモメなので、フライングで実際に飛ぶシーンがあって、そこでは本当に鳥らしく飛べるよう、非常に気を付けています。あとは仕草ですね。喋るにしても、あくまでカモメが喋っているイメージになるように。だから動画サイトでよくカモメの映像を見ましたし、どんな鳴き声、飛び方をするんだろうと、近所の川にたまにカモメが来ると、ずっと観察していました。飛び方はけっこう優雅なんですが、声は一瞬“カラスか?”と思うような、ガーっという鳴き声で。でもいろいろ観察していると、中にはちょっときれいな鳴き声のカモメもいて、同じカモメでも個性があるんだなと思いましたね。

スカットルはキャラクターとしては、いわゆる“知ったかぶり”のおじさんです。よく言えばとっても前向き、違う角度から見ればおせっかいというか暑苦しいといいますか(笑)。とにかく自分の思ったことをすぐに口に出してしまうし、思い込みも激しいし、そんなに賢くもないですが、いい意味の“いい加減さ”が楽しいですよ。細かいことは気にしない気にしない、目の前がよければいいし、楽しいことを前向きにやろうぜ、というキャラクターです」

――セバスチャンはいかがでしょうか? 手と足を開いたポーズをずっとキープしながらのお芝居は大変そうにも見えますが。
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:下坂敦俊

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:下坂敦俊

「セバスチャンはトリトンにも、アリエルにも翻弄される役ですが、その翻弄のふり幅を大事にしています。王であるトリトンへの対峙とアリエルへの対峙は違って、アリエルを目の前にしたときの心中はすごく複雑ですから。王女なのだからダメですよとしっかり叱らなくてはいけない。でもアリエルの笑顔を見ると、ついいいよと言ってしまう。そんなふり幅が芝居に出たらいいなと思いますね。

ポーズについては、なるべくカニらしさを出すということでずっと手足を開いていますが、カニの爪は全く重くないですよ。ただずっと手足を開いた姿勢をキープしていると、筋肉はついてきますね。腰にも負担はあります。でも劇団四季ではみんな、鍛えていますから大丈夫ですよ」

――今やスタンダード・ポップス化しているセバスチャンのナンバー「アンダー・ザ・シー」は、名ダンサーの荒川さんが歌われるとダンス・ナンバーにも見えてきます。

「僕自身は踊っている感覚はないですね。周りの海の生き物たちがものすごく盛り上げてくれるので、自分自身は踊るというより、楽しんでいます。できることならもっと踊りたいですが、自然に動いて楽しい空気を醸し出すということが大切ですから。曲調としてはサンバやカリプソといったラテンのナンバーで、血が騒ぎますね。僕はもともとこういうリズムの音楽が大好きで、性にも合っているので、すごく前向きに乗れるナンバーです。前奏が始まると、“来た来た、よしよし~!”という感じですよ(笑)」
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:下坂敦俊

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:下坂敦俊

――この作品のどんな部分がお好きですか?

「ナンバーとしては、(2幕の)アリエルとトリトン、エリック、セバスチャンがそれぞれの思いを歌う「もしも(カルテット)」が好きですね。難しい場面ですが、このナンバーによってドラマにいいうねりが生まれます。2幕の大詰めに入れたということは、作者たちがとても大事にされているナンバーなのでしょうね。いつもあの場面の前には改めて気合を入れるようにしています。

初演の頃は、スカットル役で舞台裏で、“ああいいな~”なんて思いながら聴いてましたが、自分がやるとなると、いいななんて思っている余裕はないですね(笑)。客観的に人がやってるのを見ていいなと思っても、自分が向き合うと苦しい。それがプレイヤーの醍醐味でもあるのではないでしょうか。毎日自分の課題を見つけて、一つ一つクリアしていくのが俳優の仕事の根源であって、職業として舞台に立つからには、そこと向き合わないといけないと僕は思っています。そして結果としてお客さんが喜んでくださることが、僕らの喜びであるわけです」

――尊いお仕事ですね。

「“観るは天国、やるは地獄”と言いますよね(笑)。でも、それでいいんです。お客様が喜んでくださる、笑顔になってくださるとあれば、なんでもしますよ!というのが俳優というものなんだと思います」

――『リトルマーメイド』を御覧になった方に、どんなものを持ちかえって欲しいですか?

「この作品は、今いる世界を飛び出し、ひたすら自分の思いを貫く、強い女の子の話です。人生、どんなつらいことが起きても、必ず乗り越えることが出来るのだという、この作品の強いメッセージを感じていただけたら嬉しいですね。パッションとエネルギーがあれば苦難は乗り越えられますし、自分にいい道を照らしてくれると思います」

――荒川さんは名古屋と福岡、どちらにも出演されていらっしゃいますね。

「今は福岡に出演していますが、どちらの劇場でもカーテンコールで、客席の“熱”を感じます。あとはお子様がよく観てくれていますね。子供の声って、すごく通るので、笑い声やカーテンコールでの掛け声で、反応してくれているのがこちらにもよく伝わってくるんですよ。

他の地方からいらっしゃった方には、ぜひそれぞれの食文化を楽しんでいただきたいですね。名古屋なら赤味噌、八丁味噌が大好きなので、味噌煮込みうどんも味噌カツもよく食べますし、鉄板メニューで言うなら、ひつまぶしも美味しいです。福岡だと、今の季節はフグがいいですね。衣裳が入らなくならないよう、食べ過ぎに気をつけています(笑)」

*公演情報*
リトルマーメイド』ロングラン上演中=名古屋四季劇場、キャナルシティ劇場
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