ストレス

人の愚痴を聞いて湧く感情は、自分に気づくチャンス

人から愚痴を聞いているうちに、自分まで腹が立ったり悲しくなったりして、相手以上に感情的になってしまうことはありませんか? あるいは、人の思いを勝手に想像して、息苦しくなることはありませんか? もし心当たりがあれば、自分の思いに向き合うタイミングかもしれません。他人と接する中で自分の思いに気づくためのヒントについてお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

他人の愚痴を聞くと、感情が揺さぶられてしまう……

他人のことなのに、他人以上に怒りや不安が掻き立てられる。その思いの底には、自分の心が抱える課題があるかもしれない。

他人のことなのに、その人以上に怒りや不安が掻き立てられる。その思いの底には、自分の心が抱えている課題があるかもしれません。

他人の愚痴や繰り言を聞いているうちに、自分まで感情的になってしまい、怒りや不安が収まらなくなることはありませんか? また、心の中で勝手に相手の感情を想像してしまい、「あの人はこう思っているに違いない……」と思い込んで、悶々としてしまうことはないでしょうか?

たとえば、友人のパートナーに対する愚痴を聞いているうちに、許せない気持ちがわいてきて、友人以上に怒りを爆発させてしまう。子どもから学校であったちょっとした嫌な出来事を打ち明けられただけで、子ども以上に動揺してしまう……。

もし、このようなことに心当たりがあれば、「この感情はどこから来ているのだろう?」と自分に問いかけてみることが大切です。

想像する「他人の思い」は、実態とずれていることも多い

最近、このような相談を受けました。「老いた親は、娘の私を苦労して育ててきたのに『親孝行もしてくれない情けない娘』と思って、心の中で私を責めている。だから、私は自分の生活ばかり楽しんじゃいけないんです……」。このように、その娘さんは親が満足する“親孝行”ができない自分を、いつの頃からかずっと責め続けてきたのです。

とはいえこの方は、実際に親の思いを確認したわけではありません。私は実態以上に、本人の思い込みの方が強い可能性を感じたため、その思いが生じる背景について、この方と一緒に振り返ってみることにしました。

その結果、「親が自分に向けている」と思い込んでいた上記の思いは、実は「自分が自分に対して思っていたこと」であったことが分かりました。つまり、親がその人を責めていたのではなく、その人が自分自身に対して「親孝行もできない娘」だと思い、責めていたのです。

では、どうしてこのような思いが生じるのでしょう? それは、自分の本音にまっすぐに向き合い、ありのままに受け止めることはとても難しいことだからです。自分が自分に対して感じる思いを「他人が自分に向けている思い」だとすり替えて捉えれば、自分を傷つけることなく、とりあえず現状にとどまらずに、自分自身を生産的な行動へと駆り立てることができます。

他人の話に触発され、抑えていた感情が噴出することもある

自分の中にある未解決な問題が相手の話に過剰に反応している。そんな可能性もあります。

自分の中にある未解決な感情が、相手の話に過剰に反応している。そんな可能性もあります。

冒頭の例に戻りましょう。友人にパートナーの愚痴を打ち明けられ、友人以上に怒ってしまう人。子どもに学校で起きた嫌な出来事を打ち明けられ、子ども以上に動揺してしまう人。こうした人々は、なぜ他人の話によって感情が大きく揺さぶられてしまうのでしょう?

そこには、相手の話によって無意識に押し込んでいた思いが刺激され、過剰に感情的になってしまっていることが考えられます。

もちろん、上記は解釈の一例にすぎません。しかし、他人の話に過剰に感情が掻き立てられる場合、自分の中にある未解決な問題が、相手のストーリーに触発され、感情が過剰に揺さぶられている可能性があるのです。

自分の感情と向き合うには、安心できる人、場の存在が必要

したがって、以前はそんなことはなかったのに、最近このような思いを度々経験するようになった場合、それは、自分の心が自分の感情と向き合いたがっているのかもしれません。もしくは、その感情が癒されることを求めているのかもしれません。

もちろん、長い間しまっておいた感情や問題を無理にこじあけるべきものではありません。しかし、そのままにして生きていても、心のどこかに満たされない思いや息苦しさが募っていきます。心の中にしまっている感情は、いずれは何かの形で解放されることを求めます。抑えていた感情が表出されるときには、感情が大波のように乱れ、心の均衡が乱れてしまうことがしばしばです。したがって、感情を支えてくれる人や場の存在はとても大切になります。

自分の感情と向き合う際には、安全・安心できる環境の中で行い、時間をかけてその感情との折り合いをつけていくことが大切になるのです。
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