ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『リトルマーメイド』インタビュー特集〈魅力を語る〉(2ページ目)

今、二都市で上演中のミュージカル『リトルマーメイド』。誰もがポジティブになれると評判の舞台ですが、その魅力とは? 出演者の齋藤舞さん・上川一哉さん・青山弥生さん・芝清道さん・荒川務さんに一挙インタビュー、役作りや見どころをうかがいました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


【エリック役・上川一哉さんインタビュー】

実はアリエルと“似た者同士”の王子が
初めての“恋”を通して成長する過程を御覧いただきたいです

  • エリック=地上の王国の王子。自由な人生に憧れるが、21歳の誕生日までに結婚するよう言われている。遭難した自分を助けてくれた“あの声の持ち主”を探し続ける。
上川一哉undefined05年に研究所入所。『人間になりたがった猫』で初舞台を踏み、のちにライオネル、『春のめざめ』メルヒオール、『キャッツ』ラム・タム・タガー『ユタと不思議な仲間たち』ユタ『ウェストサイド物語』リフ等を演じている。(C)Marino Matsushima

上川一哉 05年に研究所入所。『人間になりたがった猫』で初舞台を踏み、のちにライオネル、『春のめざめ』メルヒオール、『キャッツ』ラム・タム・タガー『ユタと不思議な仲間たち』ユタ『ウェストサイド物語』リフ等を演じている。(C)Marino Matsushima

――上川さんは出演する以前から『リトルマーメイド』をご存知でしたか?

「僕は子供の頃を含めて、ディズニーの『リトルマーメイド』を観たことがありませんでした。劇団で上演することになって初めてアニメ版を観ましたが、アリエルの成長であったり親子愛だったり、いろんな要素がつまってる作品だなあ、これが舞台化されるとどういう作品になるんだろうとわくわくしましたね。携われると決まった時は、すごく嬉しかったです」

――エリックというお役を演じるにあたり、どんなことを大切にしていますか?
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:下坂敦俊

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:下坂敦俊

「僕は、アリエルとエリックは似た者同士だと思っています。アリエルは人間の世界に憧れていて、あの世界に行きたいという、まっすぐな気持ちを持っています。いっぽうエリックは王子として生まれたのでなかなか城をでることができないけれど、自由に生きていきたいという強い気持ちを持っている。この、アリエルと似た“まっすぐな気持ち”を、大切にしたいと思いながら演じてきました」

――初演から現在までに、より深まってきた部分はありますか?

「自由を求める気持ちと、しがらみから抜け出せない自分の立場との対比が見えてきました。(理想を)求めれば求めるほど現状への息苦しさを覚え、夢も遠ざかって行くような気がするなかで、それでもこうなりたいという気持ちを持ち続ける(精神的な)強さがあったことで、アリエルもエリックも、あの結末に辿り着けたんだと思います」

――エリックにはちょっと、じれったい一面もありますね。陸に上がったアリエルとあんなに気が合いながら、(溺れた自分を助けてくれた女性のものと思しき)“あの声”に拘っているという……。

「彼は本当にピュアな人間なので、お客様がじれったく感じる面があるのかなと思います。それまで恋をすることもなかった、何も知らずに育ってきたエリックが、初めて女性を意識する部分も描かれていて、まっすぐに育ってきたピュアさがうかがえて面白いなと感じています」

――彼は何歳という年齢設定でしたでしょうか?

「(執事のグリムスビーから)21歳の誕生日を迎える前にお妃を決めてくださいという話があるので、20歳ですね。現実の世界では20歳と言えばもう大人ですが、エリックは立場上、お城の人々に生活の全てを決められて生きてきて、おそらく初恋もしていなかったと思います。そんな生活が嫌で嫌で、海に憧れを持ち、水夫になりたいと思って生きてきたので、結婚話が出た時にはびっくりしたんじゃないかな。そんな彼もアリエルと出会ったことで、初めて女の子を意識した時のようにドキドキを感じたのだと思います」

――エリックには“あの声”というソロ・ナンバーがありますが、“すべては幻か”と、彼の揺れる心情を歌う歌詞がとても興味深いですね。
『リトルマーメイド」(C)Disney 撮影:堀勝志古

『リトルマーメイド』(C)Disney 撮影:堀勝志古

「このナンバーは彼の想像の世界ですよね。声のイメージしかないものに対して、彼は雷を打たれたような気持ちになっているけど、それが何なのか、恋と呼んでいいものかどうかは分かりません。ただその声の主が誰なのか、知りたい。その一心で毎日浜辺に行って探すけれど、そこにはいない。あれは幻だったのか、でもあの声はずっとここにある、これからどうしたらいいんだ……と思いを持て余しているエリックの内面が、丁寧に描かれたナンバーです」

――その声に出会うことが、自分の道を切り拓くと予感しているのでしょうか?

「そうですね。(遭難して)海の中で意識がない中で聞こえた時に、自分が追い求めている何かを与えてくれるのがこの人だ、と思ったのでしょうね。

一方で、いきなり目の前に現れたアリエルも、自分をいろんな気持ちにさせてくれる。アリエルと幻の声との間で、彼の中には葛藤があるけれど、自分が本当に大好きなのは誰だったのかが、最後にわかるんです」

――同じ男性として共感できるキャラクターでしょうか?

「大好きなものがあるという点で、共感できる部分はありますね。こうありたい、曲げたくないと思うものは僕にもあって、俳優という仕事や踊りに心惹かれる瞬間って、エリックが“海っていいな”と思う瞬間と同じなんだと思います」

――本作のどんな部分がお好きですか?

「この作品はアリエルとエリックはもちろん、いろんなキャラクターに感情移入できるように作られていて、男性であれ女性であれ、年齢を問わず、一度は体験したことがあるような気持ちがたくさん描かれているんですよね。思春期の時に初めて手がふれたドキドキ感だったり、親との喧嘩、親から子に対する思いなど、観ていただいて身近に共感してもらえるのが、僕は好きです。

例えば、お父さんが御覧になると、自分の娘もいつかこうやって結婚してくのかと思うとぐっとくる、とよく聞きます。いかに共感いただける舞台にするかというのは、稽古の段階からみんなが戦ってきた部分でもあるので、感じていただけていたらとても嬉しいです」

――今後、エリックをどう深めていきたいと思っていらっしゃいますか?

「王子ではありますが、皆さんの身近な存在でありたいです。客席と舞台の間に距離があるのではなく、その気持ちわかるなとか、この人こんなことで苦しいんだなと思っていただきたいので、喜怒哀楽や成長過程を嘘なく、自然に見せられるようにしていきたいです」

――現在、本作は名古屋と福岡で上演中です。

「どちらも出演させていただきましたが、カーテンコールで掛け声をいただくこともあって、嬉しいですね。温かさを感じます」

――他県からいらっしゃる方に、お勧めのモノ、コトはありますか?

「やっぱり美味しいごはんですね(笑)。今は福岡に滞在していますが、どこで何を食べても美味しいです。例えば、ですか? ゴマサバ。生のサバをゴマと甘い醤油であえた料理で、それまであまりサバを食べることが無かったけど、福岡ではどこに行っても食べてしまいます。お店によっても味が違って、それぞれに美味しいのでお勧めですよ」

*次ページでアースラ役・青山弥生さんのインタビューをお届けします!
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