ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.28 井上芳雄、剥き出しの愛を究める

今夏『エリザベート』で闇の帝王トートをダイナミックに演じ、俳優として一層の存在感を示した井上芳雄さん。彼がこの秋、取り組むのは“執着”と紙一重の激烈な愛を描く、ソンドハイムの傑作『パッション』です。稽古序盤の彼を訪ね、新たな当たり役の予感からこれまでの軌跡まで、”濃厚に”お話頂きました。*観劇レポートを掲載しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

79年まれ。福岡県出身。大学在学中の2000年に、ミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを果たす。 以降、その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台を中心に活躍。『組曲虐殺』などのストレートプレイや、CD制作、コンサート活動等音楽活動も意欲的に行う一方で、近年では、映像にも活動の場を広げ活躍中。芸術選奨文部科学大臣新人賞ほか受賞多数。(C)Marino Matsushima

井上芳雄 79年まれ。福岡県出身。大学在学中の2000年に、ミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを果たす。 以降、その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台を中心に活躍。『組曲虐殺』などのストレートプレイや、CD制作、コンサート活動等音楽活動も意欲的に行う一方で、近年では、映像にも活動の場を広げ活躍中。芸術選奨文部科学大臣新人賞ほか受賞多数。(C)Marino Matsushima

*最終頁に『パッション』観劇レポートを掲載しました*

舞台は19世紀のイタリア。美しい女性クララと恋仲にある軍人ジョルジオは、上官の従妹で病弱なフォスカに見初められ、“執着”と紙一重の愛を注がれる。はじめは拒絶するジョルジオだったが、ひたすら一途な愛を捧げられることで、彼の心は知らず知らず揺さぶられ…。

『Into the Woods』『スウィーニー・トッド』等、数々の傑作を世に送り出しているスティーブン・ソンドハイムが、80年のイタリア映画『パッション・ダモーレ』をミュージカル化した『パッション』。94年にブロードウェイで初演し、トニー賞では最優秀作品賞を含む4部門を受賞したものの、あまりに濃厚な内容ゆえか、これまで日本では上演されることがありませんでした。誕生から20年あまり経った今秋、新国立劇場が本作をついに本邦初演。同劇場演劇芸術監督の宮田慶子さんが演出を務めます。

深まりゆく秋にぴったりの“大人の愛の物語”で、二人の女性に愛される男を演じるのが、井上芳雄さん。春から夏にかけ、『エリザベート』のトート役でヒロインの人生ばかりか、劇場空間全体をも支配するかのような大きな存在感を放っていたのが、本作では一転、フォスカとの出会いを通して激しい愛の渦に巻き込まれ、大きな内的変化を遂げる役に挑みます。稽古開始翌日の記者会見では出席者全員がソンドハイムの楽曲の難しさを何度となく語っていましたが、それから10日ほどが過ぎ、井上さんの中に作品はどんな姿を見せてきたでしょうか。稽古場の彼を訪ねました。

ソンドハイム作品の手強さ、面白さ

『パッション』製作発表記者会見。左よりフォスカ役シルビア・グラブさん、ジョルジオ役の井上芳雄さん、クララ役の和音美桜さん、リッチ大佐役の福井貴一さん(C)Marino Matsushima

『パッション』製作発表記者会見。左よりフォスカ役シルビア・グラブさん、ジョルジオ役の井上芳雄さん、クララ役の和音美桜さん、リッチ大佐役の福井貴一さん(C)Marino Matsushima

――現時点でのお稽古の手ごたえ、いかがでしょうか?

「もう10日経ったのですね。かなり面白い作品になると思います。やはり音楽が難しいので、なかなか簡単に歌いこなすわけにはいかないんですが。演出の宮田(慶子)さんは本読みにも時間をかけてくださいますし、その上で立ち稽古をやってみようという方で、昨日は1幕最後まで立ち稽古がありました。それによって自分の役がどんな役で、どんなバランスでやっていけばいいかというのが見えてきて、とても面白いですね」

――ソンドハイム作品へのご出演は初めてだそうですが、彼の作品についてはどんなイメージをお持ちでしたか?

「これまではあまり観る機会もなく、接点はあまりなかったんです。どちらかといえば玄人向きの、ドラマ性の強いミュージカルなのかなというイメージがありましたね」

――台本を読みますと、台詞になったり歌になったりと、歌詞と台詞が混然一体となっていて、作詞作曲はソンドハイム、脚本はジェームス・ラパインとあるけれど実際はどうやって書いたのだろうと、非常に不思議に感じました。ストレートプレイに歌が差し挟まれているのか、歌の中に台詞をはめ込んだと考えればいいのか…。

「ほぼ“ストレートプレイ”なのではないでしょうか。1幕の稽古をやっていると、歌っているより台詞を言っているほうが長いですよ。この後、また深く考えていきたいと思うんですけど、けっこう重要なことを言っている箇所が(歌ではなく)台詞だったりするんです。必ずしも感情の高ぶりなどを歌で際立たせるわけではない、面白い作りになっています。稽古していても歌った覚えがないというか、歌っていても、音域的に日常会話の音域からはみ出ないんですよ。わーっと歌い上げる感じではなくて、喋っている感覚で歌えるミュージカル。そこをソンドハイムは狙って書いているのかな、と思いますね」

*『パッション』トーク、次頁でさらに深くうかがいます。本作で描かれる愛の形を、井上さんはどうとらえているのでしょうか?
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