「ゆとり世代」と言われるたびに、カチンときていませんか?
「この年代はこうだから」と言われると頭にくるもの。しかしそう言われるには理由がある
まず、ゆとり世代とは具体的にどの年代の人々のことを指すのでしょうか? 明確な定義はありませんが、中心的には小中学校の間にいわゆる「ゆとり教育」(2002年度施行の学習指導要領による教育)を濃厚に受けた世代、つまり1987年度生まれから1995年度生まれの人々(2017年度中に30歳~22 歳になる人々)を指すようです。
この教育改革は知識偏重の「詰め込み型教育」への反省を元にし、プロセスや経験を重視して個性を重視し、思考力を伸すことを目的として行われてきた教育です。のびのびと学習できるのが利点である一方、競争心やハングリー精神が育ちにくく、基礎学力が低下するという問題点が指摘されていました。
近年の新社会人の傾向「新入社員のタイプ」とは?
2017年現在、この「ゆとり世代」と言われる若者たちの多くが20代となり、社会の働き手として活躍しています。では、この層の若手社会人には、どのような特徴があるのでしょう? 一例として、公益財団法人日本生産性本部「職業のあり方研究会」が毎年発表している「新入社員のタイプ」が参考になります。たとえば、2017年度の新入社員は「キャラクター獲得ゲーム型」。キャラクター獲得ゲームのように、インターネットやSNS等の情報ツールを駆使して効率的に就活を行い、はじめは熱中するものの飽きやすい面もある、といったイメージだそうです。
2015年度の新入社員は、「消せるボールペン型」。消せるボールペンのように見かけはありきたりですが、熱を入れて指導すると色が失われたり、酷使するとインク切れする可能性があるので取扱いには注意が必要、といったイメージだそうです。
2014年度の新入社員は「自動ブレーキ型」。知識豊富で敏感であり、就職活動は手堅く進めますが、自動ブレーキのごとく壁にぶつかる前に就活を終了し、安全運転傾向。また、人を傷つけない安心感がある反面、馬力不足の面も見られる、といったイメージだそうです。
器用だけど飽きっぽい?若手社会人はどう見られてる?
「ゆとり世代だから」というわけではない。若手社会人によく見られる傾向とは?
- 情報の活用が上手で、効率的に活動する
- 熱中しやすいが、飽きっぽいところがある
- 安全、安定を求める
- 平均的で際立った個性がない
- 折れやすく、馬力が足りない
まず1について。若い人ほど新しい情報技術の操作も得意で、流行や表面的な情報をキャッチしてすばやく反応します。これは、いわゆる「ゆとり世代」に限ったことではなく、若年層ならではの知能の特性だと考えられます。2の熱中しやすく飽きやすい特性は、世代性というより若者全般の心理特性であると考えられます。
3について。この世代の人々は、バブル崩壊後の経済低迷期の中で子ども時代から青年期を過ごしています。親世代の苦労を目の当りにしながら、安全・安定志向が高くなるのも無理からぬことだと思われます。4については、日本における集団教育を経験した人であれば、少なからずこの傾向を持つものと思われます。これは、個性重視教育を受けたはずの「ゆとり世代」も例外ではないと考えられます。
5はゆとり世代以前から続き、「脱ゆとり」後も続いている若者の特性だと考えられます。「折れやすく馬力が足りない」と言われるのは、若者を取り巻く文化や環境の多くが「パッケージ化」され、用意されたサービスを消費しながら成長している若者が多いためではないかと考えられます。リスクを覚悟して未知の領域に挑戦し、不安や失敗を乗り越える経験をもたないと、逆境からの回復力は育ちません。
「ゆとり世代」扱いされないためには「粘り強さ」がカギ?
以上で考察したように、たとえ周囲から「ゆとり世代はこれだから」と揶揄されたとしても、その多くはこの世代だけに特徴的なものではなく、若者が以前から言われ続けてきたこと、そして、これからの若者たちも言われ続けることであろうと考えられます。ならば、「ゆとり世代はこれだから」と言わせないために、自分でできることがあるはずです。何ができるのかは、自分が置かれた状況や求められるものによって異なります。自分自身で考え、答えをつかみとっていくことが大切です。
いちばんよくないのは、逆境に置かれたときに抱えた課題やストレスを他人や環境、社会のせいにし、トライ・アンド・エラーで挑戦することをあきらめてしまうことです。
私が若年層の人々にぜひ意識していただきたいと思うのは、「粘り強さ」です。困難に思えてもすぐにあきらめずに粘ってみること。一つの切り口でうまくいかなければ、切り口を変えながら、目標を達成できるまで挑戦し続けることです。この姿勢を続けていけば、「ゆとり世代はこれだから」という批評も聞かれなくなるのではないかと思います。