住宅購入の費用・税金/確定申告・住宅ローン減税

住宅ローン控除が使えないのはどんなとき?

住宅ローン控除は10年間にわたり最大400万円(長期優良住宅などは最大500万円)の所得税などを軽減できる制度で、これが使えるかどうかは大きな違いになります。それでは住宅ローン控除が使えないのはいったいどんなときでしょうか。

執筆者:平野 雅之


青空と家の模型

購入した物件で住宅ローン控除が使えるかどうかは大きな違いになる

住宅ローンを利用してマイホームを買ったときなどには、一定の要件を満たせば住宅ローン控除を適用し、入居した年から10年間の所得税などを軽減することができます。

それでは、この住宅ローン控除が「使えない」のはどんなときなのか、一戸建て住宅またはマンション(新築・中古)を購入する場合を中心に確認しておくことにしましょう。


狭い住宅を買ったとき

住宅ローン控除を使うためには、購入した住宅の登記上の床面積(一戸建て住宅は各階床面積の合計、マンションは専有面積)が50平方メートル以上でなければなりません。

50平方メートル未満の一戸建て住宅はかなり狭小で、2階建て以上の物件はあまりないものの、平屋(平家)の場合には50平方メートルに満たないこともあるでしょう。マンションでは、間取りが3DK程度でも50平方メートル未満の場合があります。

また、マンションの場合にはパンフレットなどに記載される「壁心面積」ではなく、それよりも5%前後(物件により異なる)狭くなる「登記面積(内法面積:うちのりめんせき)」で判断されることに注意しなければなりません。

とくに単身者向けのコンパクトマンションなどでは、住宅ローン控除を使えない場合が多いことを知っておきましょう。

なお、住宅ローン控除には「家屋の床面積の2分の1以上が専ら自己の居住用であること」という要件があるため、店舗併用住宅などを購入して居住用部分が半分に満たないときにも住宅ローン控除は使えないことになります。


古くて耐震性のない住宅を買ったとき

購入した時点で、マンションなど耐火建築物は築後25年以内、木造一戸建て住宅など非耐火建築物は築後20年以内であることが原則であり、それより古い住宅を購入した場合には住宅ローン控除が使えないケースもあります。

それより古くても、一定の方法により「地震に対する安全性の基準に適合すること」が証明されている場合、あるいは「既存住宅売買瑕疵保険」に加入した場合には住宅ローン控除を使うことができます。

また、購入してから入居するまでの間に、一定の申請にもとづく耐震改修工事を実施したうえで所定の証明を受けた場合も住宅ローン控除の適用は可能ですが、実質的に一戸建て住宅にかぎられるでしょう。


購入した住宅への入居が遅くなったとき

購入した住宅へ12月31日までに入居しなければ、その年は住宅ローン控除を使うことができず、翌年からの適用になります。年末近くになって新居の引き渡しを受け、「引っ越しは年が明けて落ち着いてからにしよう」と考える場合には、どちらがよいのかよく検討してみましょう。

また、住宅を購入してから(物件の引き渡しを受けてから)6か月以内に入居することも必要です。マイホームを買ったものの何らかの事情で入居が先延ばしになる、あるいは入居前に大掛かりなリフォームをしようとして工期が長くなるような場合には注意しなければなりません。

なお、いったん入居した住宅には12月31日まで引き続き居住していることが原則となるものの、入居した後に転勤命令によって離れ、その年の12月31日までに再入居した場合には住宅ローン控除を使うことができます。


収入が一定額を超えたとき

住宅ローン控除を使うためには、その年の合計所得金額が3000万円以下でなければなりません。会社員が給与だけで3000万円を超えるケースは少ないでしょうが、会社役員や高額収入を得られる職業の人のほか、他の資産を売却した所得があるときには注意が必要です。


マイホーム売却に伴う他の特例を使うとき

購入した住宅に入居した年の前々年から翌々年までの5年間において、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例居住用財産の3000万円特別控除買換えまたは交換の特例の適用を受ける場合には、住宅ローン控除を使うことができません。

マイホームの買い換えをする場合には、売却に伴う特例を使うほうがよいのか、それとも購入に伴う住宅ローン控除を使うほうがよいのか、しっかりと試算したうえでの検討が大切です。


住宅ローンの返済期間が短いとき

住宅ローン控除の対象となるローンは返済期間が10年以上のものです。大都市圏では25年~35年ほどかけて返済する住宅ローンが一般的なものの、地方都市や町村部では10年前後のことも少なくありません。

借り入れる金額が少ないときには、住宅ローン控除の効果を考えれば、9年返済よりも10年返済のほうが有利な場合もあるでしょう。

また、10年以上の住宅ローンを借りても、期間短縮型の繰上返済によって通算返済期間が10年未満になると、その年からは住宅ローン控除が使えないことになります。


超低金利の社内融資を受けたとき

社内融資などの場合でも、実質的な金利が年0.2%以上(2016年12月31日以前は年1.0%以上)など一定の要件を満たせば住宅ローン控除の対象になります。それよりも低い金利の場合には住宅ローン控除が使えません。


転勤などでマイホームを離れたとき

国内への転勤により本人が住まなくなったとき、それが単身赴任で家族は引き続き居住していれば住宅ローン控除の適用は継続されます。しかし、転勤先へ家族揃って引っ越したときには住宅ローン控除が使えないことになります。

また、単身赴任先が海外の場合には、たとえ家族が引き続き居住していても、住宅ローン控除を使うことはできません。

なお、勤務先からの転勤命令などの事由が解消してマイホームに戻ったときは、一定の要件を満たせば「残りの期間」(当初の入居時から10年まで)について住宅ローン控除の再適用を受けられます。


住宅ローン控除が「使えない」あるいは「途中で使えなくなる」主なケースについてみてきましたが、その適用にはさらに細かな要件もあります。ごく一般的な住宅購入ではあまり心配ないものの、他と違う要素があるときは事前にしっかりと確認しておくことが欠かせません。

また、リフォーム・増改築工事などで住宅ローン控除を使おうとするときも、あらかじめその適用要件を確認しておくことが大切です。工事に関する契約をする前に、営業担当者などからよく話を聞くようにしましょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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