ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2017年11~12月の注目!ミュージカル(5ページ目)

実りの秋が深まり、街は早くも年末モード。昭和の流行歌に彩られた『きらめく星座』から伝説のカルト・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』、昨秋の話題作の再演『スカーレット・ピンパーネル』まで、一年を締めくくるのにふさわしい舞台が続々登場します。記事アップ後も随時、取材記事や観劇レポートを追加掲載しますので、お楽しみに!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

 

【特別記事】
独占取材!『In This House~最後の夜、最初の朝~』
PVロケ撮影同行レポート

『In This House~最後の夜、最初の朝~』

『In This House~最後の夜、最初の朝~』

ミュージカルのPR映像(PV)と言えば、宣伝ビジュアルのための扮装写真撮影の様子を収録、その際の出演者コメントとあわせて公開するというのが一般的。そんな“常識”にとらわれず、屋外、それも片道3時間半をかけ、伊豆まで遠征してPVを撮影したのが、岸祐二さんらが出演するミュージカル『In This House~最後の夜、最初の朝』(2018年4月上演)です。

おそらく業界初という画期的なこの撮影に松島が同行、作品の空気感が垣間見えるPVがどうやって作られてゆくか、キャスト、スタッフのコメントを織り交ぜつつ、レポートします!
 

雄大な景観の中で
キャストの表情、仕草に新たなニュアンスが加わる

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

9月某日、朝6時半。都内の某駅前に停められたロケバスには、一人また一人とスタッフ、そしてキャストが乗り込み、「おはようございます」の声が幾重にも重なります。時間通りに発車した車は、早朝とあってがら空きの道をすいすいと走り、一路伊豆へ。

二世代のカップルが一軒の廃屋で出会い、生まれるこのドラマの出演者は四人。大劇場ミュージカルでも活躍している岸祐二さん、入絵加奈子さん、綿引さやかさん、そして“2.5次元ミュージカル”出身のホープ、法月康平さんという布陣です。4人で顔を合わせるのはこの日が初だそうですが、互いの呼び名を確認しあううち、自然に和やかなお喋りがスタート。朝食として配布されたおにぎりを巡って早朝から岸さんのダジャレが炸裂したりと、車内は次第に“遠足”気分に。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

朝日きらめく海辺で小休憩した後、うねうねとした山道を突き進み、目的地の稲取細野高原に到着。車を降りると起伏豊かに野原が広がっており、皆さん『サウンド・オブ・ミュージック』の冒頭シーンよろしく、空を見上げてリラックス。ここで昨日既に現地入りしていたディレクターらと合流、スケジュール表に従ってお一人ずつメイクが施されてゆきます。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

それにしてもなぜ、今回ここでのロケが決まったのでしょう。「(PVを撮るなら)ロケにしようよ、と言ったのは僕です」と、本作の演出家、板垣恭一さん。「舞台のPVって、普通はスタジオで衣裳を着ているところを撮影したり、前回公演の舞台映像をそのまま使ったりするけれど、それだとお芝居のファンにしか届かないかもしれない。でも、こういう映像なら誰にでも“何だろう”と思っていただけるじゃないですか」。

プロデューサーの宋 元燮さんも「非日常的な空間で撮影するからこそ、ドキドキわくわく感が生まれる」とロケを即決、作品のイメージを膨らませ、ススキのある場所を探しているうちにここがヒットしたのだそうです。「冬だったら嵐の岸壁で、ドローンを飛ばして撮りたいところだけどね(笑)」と板垣さん。(注・火曜サスペンス的な内容ではありません!)

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』ロケにて。

さてメイクが済み、車はいよいよ撮影ポイントに移動。趣ある大木の側で、お一人ずつ撮影がスタートします。PVのディレクター、深沢さんは「ここを通って木のこのあたりに触れ、見上げてください」とかなり細かく動きを指示。その通りに動くうち、みるみるうちに人生の悲哀を滲ませ、あたりをセピア色に染めてゆくベテランの岸さんに対して、はじめは緊張からか、少々硬い表情で懸命に取り組む、初々しい法月さん。二人の役者としての蓄積がそのまま、彼らが演じる対照的なキャラクターの表現に反映されてゆきます。

稲取細野高原がある東伊豆町は、ロケ協力にも積極的。地元の飲食店特製のロケ弁は膝に乗りきらないほどの大きさで、金目鯛(おそらく名物の稲取キンメ)の煮つけなど、一品一品丁寧に調理。キャストの皆さんからも歓声が上がっていました。(C)Marino Matsushima

稲取細野高原がある東伊豆町は、ロケ協力にも積極的。地元で手配された特製ロケ弁は膝に乗りきらないほどの大きさで、金目鯛(おそらく名物の稲取キンメ)の煮つけなど、一品一品丁寧に調理。キャストの皆さんからも歓声が上がっていました。(C)Marino Matsushima

さくさくと撮影は進み、手が空いた人からロケ弁をいただいて、第二の撮影ポイントへと移動。見渡す限りすすき野と化した雄大な自然に圧倒され、キャストの皆さんは大いにインスピレーションを得た様子。腰まで届くかというほどの高さのすすきをかきわけ歩いてゆく足取り、手先にも実感がこもり、味わい深いイメージ・ショットが次々に生まれてゆきます。

予定時刻の16時に全ての撮影が終了、一行は再びロケバスへ。たちまち夜の闇に包まれながら、皆さんにこの日の手ごたえをうかがってみると……。

岸「楽しかったよね。移動は長かったけど、それだけの価値があった」
法月「集合が6時半と聞いた時にはどうしようかと思ったけど(笑)」
綿引「海も見えたし、ススキの山はとても静かで素敵でした」
入絵「私の頭の中では、“遠き山に日が落ちて~”という歌がずっと流れてて、すっごくいいところでした」

『In This House~最後の夜、最初の朝~』PVロケにて。

『In This House~最後の夜、最初の朝~』PVロケにて。

“今日一日だけで、みんな団結したよね。旅公演したような感覚”という入絵さんの一言に強くうなずく皆さん。自然と“来年の稽古まで会えないのは寂しいよ”“会おうよ、岸さん、仕切りお願いします!”と飲み会(?)の約束も。この日撮影された素材は編集作業を経て、11月にいよいよ公開。キャストの皆さんの表現が映像という形でどのように作品の空気感を伝えているか、仕上がりが楽しみです。(作品内容についての皆さんのコメントは来年、掲載します)

*『In This House~最後の夜、最初の朝~』2018年4月4~15日=東京芸術劇場シアターイースト(公式HPよりPVを御覧になれます)
*岸祐二さんの『レ・ミゼラブル』『扉の向こう側』等、最近のご出演作についてのインタビュー記事はこちら



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