『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』(日之出出版)

『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』(日之出出版)

突然ですが、『レミゼ』ファンの皆さんにトリビア・クイズです。以下は〇?×?

  • ブーブリルとシェーンベルクが『レ・ミゼラブル』を書いたきっかけは、ロンドン・ミュージカル『オリバー』である……?
  • さらにさかのぼって、二人がコンビを組むようになったのは、ブーブリルがNYで『ジーザス・クライスト=スーパースター』を観て触発されたため……?
  • 原作者ヴィクトル・ユゴーはマリウスに自分自身を投影しながら執筆した……?
  • もともとフランス語だった歌詞を英訳するにあたって、『マイ・フェア・レディ』のアラン・ジェイ・ラーナーや『屋根の上のヴァイオリン弾き』のシェルドン・ハーニックが候補に挙がったが、二人とも断った……?
  • 冒頭からバルジャンが銀の燭台をもらい、改心するまでのくだりはもともとのフランス語版には無かった……?
  • アン・ハサウェイの母は女優で、舞台版『レミゼ』に出演していたことがあったので、映画版のファンテーヌ役に自然に入ってゆくことができた……?

『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』より

『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』より

答えは……すべてマル。本書に描かれているエピソードです。著者のベネディクト・ナイチンゲールとマーティン・パルマーが、主要な関係者たち(作者のアラン・ブーブリル&クロード・ミシェル=シェーンベルクからプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュ、歴代の舞台版出演者、映画版監督トム・フーパー、その主演のヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウまで)全員にインタビューを行ったことで、本書は単に創作過程を追うだけでなく、上記のような興味深いエピソード満載の背景本となっています。

マッキントッシュに『レミゼ』を最初に紹介したのは……?

より「今」に近いためか、情報量としては映画化にあたってのエピソードにかなりの紙面が割かれていますが、読んでいて最も引き込まれるのは、やはりロンドン初演に至る経緯。演出家を決める際、マッキントッシュはそもそも、彼のもとにフランス語版のテープを持ち込み、『レミゼ』を知るきっかけをくれた演出家ではなく、『キャッツ』を演出したトレバー・ナンに声をかけたとか、(←持ち込んだ演出家は今頃どう思っているかと想像してしまいます)、曲を聴いて情熱の塊となったマッキントッシュが大御所、若手を問わず様々な人材に声をかけ、作品にふさわしいチームを結成していった過程を読んでいると、業界のシビアさや、人脈、そして熱意の大切さを痛感させられます。

『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』より

『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』より

俳優たちが役にどうアプローチしていったかをまとめた章もあり、こちらも作品理解を大いに深めてくれそう。テナルディエを演じたコメディアン、マット・ルーカスの「(テナルディエは)基本的に精神病患者」など、新鮮なコメントも見受けられます。

ファン心を心得た、付録の数々

さらに本書の大きな特色と言えるのが、20点にも及ぶ複製付録。中でも、ロンドン初演のポスターのシンプルさには驚かされます。リトル・コゼットのイラストにタイトルとスタッフ名、劇場名が乗せられているだけで、キャッチコピーは皆無。小さくA musicalと書かれているのが唯一の「説明」です。これでも満員御礼になってしまうのですから、現地の舞台ファンの勘は恐ろしく鋭かったというべきでしょうか。以前は『レミゼ』の代名詞でもあった「盆舞台」の図面もおまけの一つですが、こちらは模型さながらにお盆が回せるように作られています。
ファンには嬉しい付録の数々。写真付きのポケットに丁寧に収められています。

ファンには嬉しい付録の数々。写真付きのポケットに丁寧に収められています。

その他にも小道具表や書き込みだらけの台本の一部など、複製とはいえ、ファン垂涎のアイテムばかり。これらを持っているだけで、気分はすっかり関係者です。編集者もきっと『レミゼ』ファンで、「こんなものが我が家にあったら」と夢見ながら「本物」を集め、付録化したのでは?と思えるほど、ファン心理に寄り添った付録達です。

新演出版、東京公演は終了しましたが、福岡、大阪、名古屋と日本公演はまだまだ継続。これからご覧になる方は、こちらの書籍で作品の背景をインプットしておけば、一味違った『レミゼ』の楽しみ方ができるかもしれませんし、もうご覧になった方なら、この本を通して新たな発見があることでしょう。縦が29センチ、厚さ4センチ近く、となかなかの大型本なのですが、「愛蔵」するにはぴったりの内容、装丁の書籍です。

*書籍情報 ベネディクト・ナイチンゲール、マーティン・バルマー著、山上要訳『レ・ミゼラブル――舞台から映画へ』(日之出出版)2013年6月21日刊行


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