榎本哲さんが神楽坂に自身の店をオープン
パン・デ・フィロゾフの売り場
元ドミニク・サブロンのシェフブーランジェとして、質の高いパンづくりに定評のあった榎本哲さんが、神楽坂にファン待望のお店を開業しました。
古いものと新しいものが息づくスタイリッシュな店内
店の名前は、パン・デ・フィロゾフ。「フィロゾフ」は「哲学者」を意味するフランス語。榎本哲の哲です。ハード系を中心に、しっかりと焼きこまれたパンが12種類ほど並ぶ台の向こう側に厨房があります。
オーナーシェフの榎本哲さん
2015年、日本のドミニク・サブロン閉店後は「俺のベーカリー&カフェ」などでメニュー開発やコンサルティングの仕事をしていた榎本さんですが、パン・デ・フィロゾフではいよいよ、自身のスタイルで自由自在なパンづくりができるとあって、いつになく楽しそうです。
リュスティック
ワイン仕込みの芳醇な香りのパン、ヴィニュロン
ヴィニュロン ルージュ
パン・デ・フィロゾフの幕開け、第一章で主役を演じているのは「ヴィニュロン」(ホール2980円 1/4 750円)ではないでしょうか。ヴィニュロンとはブドウを育て、ワインを醸造するつくり手のこと。
これは2種類あって、ぱっと見たところでは同じように見えますが、四本のクープが四角く入っているのが赤ワイン仕込みの「ルージュ」、五角形のクープが入っているのが白ワイン仕込みの「ブラン」です。
ヴィニュロン ルージュ断面
ルージュはフレッシュオレンジ、ブラックペッパー、シナモンをいれたヴァンショー(ホットワイン)でレーズンとセミドライフィグ、クルミ、ペカンナッツを煮込み、その水分でパン生地を仕込んでいます。ナイフを入れると、芳醇な香りが立ち上ります。しっとりもっちりとした生地にみずみずしいドライフルーツとナッツたっぷりの、非常に贅沢な質感のパンです。
ヴィニュロン ブラン
ブランは白ワインで煮たドライリンゴ、グリーンレーズンとクルミ入り。小麦粉は北海道産のホクシンと、ドイツのライ麦、そしてカナダ産の石臼挽き粉のブレンドをしています。濃厚なルージュに比べ、こちらのほうが爽やかな感じがしますが、いずれも香りがよく、フルーツとしっとりとした生地のジューシーさ、自然の甘さに魅了されます。
ヴィニュロン ブラン断面
チャーミングなリンゴの木のパン、ポミエ
ポミエ
主役の脇に置かれていますが、この店のアイコンともいえるパンが「ポミエ」(680円)です。ポミエはリンゴの木の枝をイメージし、ドライリンゴとフレッシュジンジャーをコンフィにしてクルミとともに練りこんだ、自家製リンゴ種のパンです。枝にかけられた葉っぱのカードがチャーミング。ちなみにこの葉は「榎」の葉なのだそうですが。
ショップロゴは榎の葉
絶品クロワッサンは健在
クロワッサン
フランスはレスキュールのAOPの発酵バターを使用したクロワッサン(280円)はさっくりとした食感、ノアゼットの香り。ドミニク・サブロン時代に素晴らしく美味しかったクロワッサンを彷彿とさせますが、こちらはカナダ産の石臼挽き粉と群馬産の小麦を使用しています。新しくお店をスタートさせるにあたり、何十種類もテストベーキングした中から選び抜かれた小麦粉です。
パンオショコラ
パン・デ・フィロゾフのバゲットは3種類
バゲットは3種類
フランス産小麦をメインに使った正統派のバゲットの旨み、香ばしさ、美味しさは言わずもがな、なのですが、ちょっと変わった、新しいスペシャリテとして「αバゲット」(220円)というのがあります。
αバゲット
これは湯種を用いた長時間発酵のバゲットです。湯種はよく食パンに使われますね。榎本さんは「俺のベーカリー&カフェ」で食パンを試作しながらそれをバゲットに使うアイデアを思いついたのだとか。湯種によるでんぷんの甘さはご飯に通ずる親しみ深い甘さ。焼きたての食感とクリーム色の内相はまるでシュー生地のようでもあります。
オリーブ エ フロマージュ
αバゲットはハード過ぎず歯切れがいいのでサンドイッチにも向きます。同じ生地を使った「オリーブ エ フロマージュ」(240円)はグリーンオリーブが一粒と、グリュイエールチーズ、タプナードを包んだプチパン。もちもちした感じがポンデケージョのようでもあります。消化にもいい、身体に優しいパンです。
バゲット・ジ・コンプレット
バゲットはもう1種類、「バゲット・ジ・コンプレット」(480円 ドゥミ240円)があります。「ジ」はジャパニーズのジ。北海道産のキタノカオリ全粒粉100%のバゲットです。微細な全粒粉なので口当たりもよく、レーズン種とイーストの併用で味に深みもあります。肉料理に合いそうな、ボディのしっかりしたバゲットです。
ASAMA アサマ山食パン
「ここがスタートライン。商品も、スタッフも、店の感じも、ここから少しずつ、成長させていきたいと思います」榎本さんは言います。
その幕開けは期待通りのものでした。榎本さんならではの感性と技から生まれたパンが、神楽坂の土地の空気とまじりあって、さて、ここからどのように進化していくでしょうか。これからますます注目したいお店です。
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パン・デ・フィロゾフ(Pain des philosophes)
住所:東京都新宿区東五軒町1-8
電話:03-6874-5808
営業時間:10時~19時 不定休
Yahoo!地図情報
東京メトロ神楽坂駅徒歩4分
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