1932(昭和7)年、フロインドリーブの支店として創業し、終戦後に今の看板を掲げた神戸のフロイン堂は、日本のパン屋さんの中では老舗と言える存在。オーブンやミキサーといった機械は全く使わずに、手で捏ねてレンガの窯で焼く正真正銘の手作りパンを求めて、日々多くのお客さんが店を訪れます。


パンを焼くのは二代目の竹内善之さんと三代目の隆さん、そして千葉から修業に来ている田沢さん。

今から60年ほど前に火が入ったという一層式の窯は店の奥の階段を下りた地下にあります。 煤けた壁のような大きな古い窯は戦争や震災を乗り越え、今なお立派に稼動しています。

ここでクヌギの薪を燃やし、余熱が適温になった時、パンを焼くのです。
「薪は持って来てもらうんですよ。ただ燃えやすいように乾かしてみたり割ってみたりはするんです。」 善之さんは言います。
どんなふうに温度を調節して焼くのだろうと考えたら、晴れの日も雨の日も寒い日も暑い日も同じようにパンを焼くこの人達のしていることが、神業のように思えてきてしまうのでした。

善之さんにパン焼きのお話を伺いました。


温度の管理が大変ですね。

  そうですね、今日みたいに暖かいとちょっと走り回らないかんことになるんですね。

体の中にそういう温度計というか感覚の時計みたいなものをお持ちなのでしょうね。

  あのね、パン屋というのは不思議な商売でね、極めて近い将来なんですが先を読まないかんのですよ。 自分の感じる温度とか湿度とかパンが感じるのと非常によく似ていると思うんです。 ですから30分後、1時間後の状況を読まないかんわけですね。 それがちょっと説明しにくいですけど、やっていますとなんとなくそういうのがわかってくるんですね。 人間がプログラムしたもんじゃなしに、もっと・・・どういったらいいんでしょう、感性みたいなもんですね、うん。

身について備わってくるのでしょうか。 でも、それでも向き不向きがあるのでしょうね。パンのための感覚が敏感でないといけませんから。

  ははは、いやどうなんですかね、やっぱり慣れでしょうね、慣れと経験と勘じゃないですか。 勘ていうのは当たっているかかどうかわかりませんけれど、結局はその積み重ねなんでしょうね。



フロイン堂初代、善次郎氏の若き日の写真が棚に飾られていました。 彼は初代ハインリッヒ・フロインドリーブ一世の奥様と親戚関係にあるのだそう。

「フロインドリーブが神戸のパンに及ぼした影響は絶大なものがあります。 わたしはそう思います。」と善之さん。