かわいいパン屋さんの正統派のパン

2009年夏、五反田駅にほど近い住宅街に、小さなパン屋さんがオープンしました。BAKERY SUGI-NO-KI(ベーカリー 杉の木)。パンを焼いているのは、ホテルオークラを始め、オーバカナルでブーランジェリーシェフ、ルビアン東京では工場長を務め、キャリアを積んできた金子英史さん。パン職人歴は18年になるそうです。

五反田駅から徒歩5分ほど、清泉女子大学に近い住宅街にある小さな店

金子さんは実はパティシエ出身。地元の洋菓子店から上京して東京の有名店で4年、ヴィノワズリを作るうちに、パンに魅せられたと言います。パンは発酵という過程があるので、「スタートしたら止まらない。そのライブ感がやみつきになったんです。それにパンは日常食で、身近でしょう?」そう、そんなわけで金子さんは主に日常の食事としてのパンを焼くのです。

アンティーク風の木やガラスを生かした店内

生地のおいしさを味わえるパンたち

「粉のおいしさを味わってもらうために、あれこれ具材を入れたりしないパンが多いですね。せいぜい、クルミやレーズン程度で」と金子さん。

わたしが SUGI-NO-KIで、もし3つだけパンを買うとしたら、「ビオ」(バゲット)、「ルヴァン」、そして「クロワッサン」か「パン・オ・ショコラ」を選びます。それらは珍しいものではありませんが、どれも素晴らしいから。

バゲット ビオ(340円)

「ビオ」は、フランス産のオーガニックの小麦粉を100%使用した長時間発酵のバゲット。金子さんはこのパンをそのまま食べるのが好きだとか。

オーガニックの素材を使ったパンやお菓子はほかにもいくつかありますが、 SUGI-NO-KIではオーガニックだからという理由ではなく、味を重視。その都度、おいしいと思った素材を選ぶだけなのだそうです。パンのおいしさは言葉ではなく、安心素材の吟味と職人の技術と、ゆたかな発酵時間から生まれるのです。

ルヴァン(1/4 500円 1/8 250円 1/16 125円)
ルヴァン断面

わたしが SUGI-NO-KIをとにかく取材したいと思ったのは、ある料理人の方から分けていただいた、この店の「ルヴァン」に感動したからでした。ライ麦から起こした自家製酵母、石臼挽きライ麦粉60%の大型パンです。クラストのこうばしさ、しっとりとした生地のやわらかな弾力と重厚な味わいは感動的でした。

このパンは料理と合わせていただくのはもちろんですが、黒ごまペーストにも合いました。「薄切りにしてよく焼いてから、バターをしみじみにして食べるとおいしい」と販売を担当する安田さんに教えていただきました。朝から楽しめるパンです。

ルヴァン カンパーニュ(600円 1/2 300円 1/4 150円)

ルヴァン カンパーニュはルヴァンより軽い食感。石臼挽きのライ麦粉と国産の全粒粉を使っています。金子さんは石臼挽きの粉の香りや食感が気に入って、他の生地にもブレンドしています。ほんのちょっとしたことが、シンプルなパンの味の決め手となるのかもしれません。