2017年秋、ミュージカル界にはコメディから歴史大作、海外作品からオリジナル作まで、多彩な舞台が続々登場。幅広い選択肢が、芸術の季節を豊かにしてくれそうですよ!開幕後は随時、観劇レポートを追記していきますのでお楽しみに。

【9~10月の注目!ミュージカル】
  • 『ファインディング・ネバーランド』9月8日開幕←観劇レポートUP!(本頁)
  • 『パジャマゲーム』9月25日開幕←栗原英雄さんインタビュー&観劇レポートUP!(本頁)
  • 『52days~愚陀仏庵、二人の文豪~』(新宿公演)9月27日開幕←観劇レポートUP!(2頁
  • 『ソング&ダンス65』10月5日開幕←加藤敬二さんインタビュー&観劇レポートUP!(2頁
  • 『レディ・ベス』10月8日開幕←吉沢梨絵さんインタビュー&観劇レポートUP!(3頁
  • 『ねこはしる』10月14日開幕←笠松はるさん、神田恭兵さんインタビュー&観劇レポートUP!(4頁
  • [NEWS]ミュージカル映画『とってもゴースト』製作クラウドファンディングが進行中(4頁
【All Aboutミュージカルにて特集(予定)のミュージカル】

パジャマゲーム

9月25日~10月15日=日本青年館ホール、10月19~29日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
『パジャマゲーム』

『パジャマゲーム』

【見どころ】

1954年にブロードウェイで初演、ボブ・フォッシー(振付)やハロルド・プリンス(プロデュース)らが名声を確立した伝説のミュージカル『パジャマゲーム』。日本ではあまり上演機会がありませんでしたが、英米では“名もなき労働者たち”の賃上げ闘争と恋を描いた画期的な作品として、広く知られています。

今回は『タイタニック』『グランド・ホテル』で日本でもファンの多いトム・サザーランドが演出を熱望、宝塚歌劇での舞台姿を観て“ヒロインのベイブ役にぴったり”とほれ込んだ北翔海莉さんとの出会いによって、上演が実現しました。

スタイリッシュな“フォッシー・スタイル”のダンス(振付はロンドンで『フォッシー』に出演したニック・ウィンストン)、親しみやすい音楽、巧みに練り上げられた台本と3拍子が揃った作品を、トムの“現代的感性”でさらにスピードアップ。分かりやすく、楽しい中に知性をまぶした舞台に仕上がりそうです。

【ハインズ役・栗原英雄さんインタビュー
フォッシー・ダンスに彩られた知的な舞台で
“飛び道具”役を演じます】

栗原英雄undefined1965年栃木県出身。劇団四季に25年間在籍し、『コーラスライン』リチー等のミュージカルから『ヴェニスの商人』バサーニオ、『エクウス』アラン等のストレートプレイ迄幅広く活躍。退団後は映像、舞台と様々な作品に出演。今後の出演作に『メンフィス』『マタ・ハリ』等。(C)Marino Matsushima

栗原英雄 1965年栃木県出身。劇団四季に25年間在籍し、『コーラスライン』リチー等のミュージカルから『ヴェニスの商人』バサーニオ、『エクウス』アラン等のストレートプレイ迄幅広く活躍。退団後は映像、舞台と様々な作品に出演。今後の出演作に『メンフィス』『マタ・ハリ』等。(C)Marino Matsushima

――栗原さんは冒頭、狂言回し的に登場しますが、本編が始まるとパジャマ工場の中間管理職、ハインズとして活躍します。『エビータ』のチェや、栗原さんの当たり役である『九郎衛門』のひろめ屋のような、完全に客観的なナレーターではないのが面白いですね。

「僕のみならず、他のみんなも最初はいかにも“ショーを楽しんで下さいね”といった雰囲気で踊りながら登場するけれど、工場に入った瞬間に、日々疲れはてて7セント半の賃上げのために頑張っている人間に変わります。演出のトムもよく言っていますが、“人間は多面的だ”ということをユーモラスに描いた作品なのだと思いますね」

――近年は演技や歌がメインだった栗原さんですが、今回はニュアンスたっぷりにフォッシー・ダンスを踊っていらっしゃいますね。

「僕も今回はちょこちょこ踊ります(笑)。(古巣の劇団四季で)踊ってきて良かったと思いますね。今回はバリバリのフォッシー・ダンスですが、それがショーという枠ではなく、ごく普通の町に住んでいる人たちの物語の中で展開するのが面白いですね。
『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

ベイブは一生懸命働くことで穏やかな生活を守ろうとしている女の子で、シドはシカゴで何かしらの事情があったのかシーダーラピッズのこのパジャマ工場で成功したい。僕が演じるハインズも、ナイフ投げの芸人をやってきたけどうまくいかなくて、この工場に来て時間管理責任者として生きている。

社長は会社を発展させたいが社員の給与は上げたくない、労働者たちは、7セント半の賃上げを求めながら必死に働いている。大きな船も沈まないし、生死をさまよう事もないけど。直面している自分たちの状況の中で様々な問題にぶち当たりながらも必死に生きている。人生って捨てたものじゃないね、というミュージカルなのではないでしょうか」

――ハインズは一見、几帳面な中間管理職ですが、実は本作で最も面白いお役かもしれません。
『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

「性格に難がありますよね(笑)。極端なんです。まずはルーティーンが大好きで、毎日同じ時間に起きて同じものを食べて出社するというような日常を送っていて、それが崩れるとどうにもならない。実は僕もルーティーン派で、朝は出かける2時間前に起きて、コーヒーをゆっくり入れて……手早く入れても美味しくないので……という自分のペースで生活しているので、それが崩れるとなんだか気持ち悪いというハインズの感覚には共感できます。

でも、ハインズの“やきもちやき”の一面は、僕には無いなぁ。劇中、ハインズは社長秘書である恋人グラディス(大塚千弘さん)が浮気をしないかとずっとやきもきしていて、彼女にはすっかり呆れられている。恋人を束縛するような台詞をどう言ったらいいんだろう、と迷っています」

――トムさんの演出は『タイタニック』に続いて2度目。今回の彼の演出はいかがですか?

「“破壊と再生”のグレードが上がっています(笑)。彼は古典的なミュージカルが大好きで、伝統を大切にしながらも、今の時代に合うよう、見直すことを恐れません。例えば、台本のト書き(登場人物の行動を指定する文章)に彼はとらわれないんです。ト書きというのは劇場の寸法や小道具、大道具のサイズを考慮して書かれていることが多いので、そういうものはとっぱらって一から作ろう、と言っていますね」

――オープニング・シーンも段取りなど、細かく変更されています。

「そうですね。昔は“ミュージカルは長ければ長いほどいい”という共通認識があったそうなのですが、そうすると(話の)本質になかなか入っていかないんですね。今回は説明的な部分はそぎ落として、例えば僕が(彼は)社長です、労働組合委員長です、と紹介するような部分は、(敢えて言わないことで)お客様に“誰だろう”とわくわくしてもらった方がいい。それよりどんどん物語の求心的なところに入っていったほうが、工場の慌ただしい空気も伝わるし、なぜ彼らが賃上げ闘争に熱を上げるのかも感じていただける、というのがトムの考えです。まだまだ変わっていきそうですが、僕らも先読みしすぎて自分をがんじがらめにするのではなく、作品をより良くするため、皆と討論しながら変えてゆく彼のやり方に柔軟に応じていかなければなりません。

この前、三谷幸喜さんの芝居で、稽古初日に台本が5頁ぐらいしか出来ていないという状態を経験したのですが、次の原稿があがってくるたびにワクワクして、大変だけど楽しかった(笑)。“作っていく”という作業はホント楽しいですよ。突然必要な小道具が増えていったりするから、スタッフの方々は大変だと思うんですけどね(笑)」

――ご自身の中で今回、テーマにされていることは?
『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

『パジャマゲーム』稽古より。撮影:花井智子

「冒頭の台詞で“この芝居はシンボリズムがいっぱいです”と言うこともあり、“シンボリズム”の意味をトムと考えながらやっています。格差であったり、物事の二面性の象徴がこの物語なのかな、と。そしていつも大切にしているのが、芝居を固めないこと。演技というのは自分から発生するものではなく、目の前で起きていることと相手役からの影響によって生まれるもの。

今回のように“飛び道具”的な役であっても典型的に演じてはいけない、おかしさの中に真実がなくちゃいけないと思っています。例えば酔っぱらっているシーンでも、酔った(パターン的な)動きをするのではなく、なぜ酔っているのかを考えて、ふだん時間にうるさくしている反動としての表現にしてゆく。一つ一つ、その芝居をするリアリティを考えますね」

――栗原さんは長く劇団四季で活躍され、このまま劇団の屋台骨となって行かれるものとばかり思っていました。

「25年在団して、最終的には正劇団員幹事会の一人でしたが、ある日突然辞めましたね。理由は一つじゃありませんが、役者としてもう一つ変わりたい、やったことのないものに挑戦したいと思って……。今までの履歴なんて関係なく、それまでの栗原英雄のキャリアはゼロだと考えて、インディーズ映画に挑戦したり自分でプロデュースして芝居作ったり楽しかったですよ。

そんな中でまたミュージカルに出ませんかというお話をいただいて、『タイタニック』ではトムから、クールに構えてて、人生色々あるじゃないかと判っている二等客の役を振られ、それをたまたま三谷幸喜さんが観てくださって、真田信尹というぴったりの役があるといって『真田丸』にキャスティングしてくださり、TVドラマ初出演となりました。

自然に喋りながらも一音たりとも落とさず、明晰に聞こえる、とディレクターに驚かれ、堺(雅人)さんにも“自分も母音で練習してるんですよ。栗原さんはどうやってやるんですか”と聞かれました。劇団四季で学んだ技術なんですよね。『真田丸』での芝居が三谷さんの『不信』という4人芝居にも繋がっていきましたが、自分としてはただ淡々とやってきた結果だと思います。芝居はリアリティ、相手役と交流する、自分を売ろうという芝居はしない、大切なのは目の前にあるものだというのが僕の中に常にありました」

――その姿勢が三谷さんに求められたのですね。

「三谷さんとはほとんど喋ったことがないんですけどね(笑)。新聞のエッセイに僕のことを書いてくださったのも、後で人に言われて知ったくらいです。僕が言うのもおこがましいですが、どこか感性が似ている部分があるらしく、観に行った劇場でたまたま再会しまして、芝居の感想を聞かれて僕はこう思ったと言うと、こちらもそう思ったので嬉しい、とおっしゃってました。嬉しかったです。

40を過ぎたころ、僕は“自分はあと何回舞台に立てるだろう”と思って、時間を大切にしたくなりました。当たり前の事ですが目の前の仕事に全力を尽くす。一個でも手を抜いたら、一瞬にして(信頼が)なくなる中で、つけられた振りや演出を自分の中で理解して肉体化する日々です。

僕らの仕事って華やかに見えるかもしれませんが、本当に地味な仕事だと思うんですよ。コツコツ出来るかできないかによって、生き残れるかが決まる。昔、日下(武史)さんに“いいか栗、役者ってのは職人なんだよ。その時たまたま出来るかどうか、イチかバチかというのじゃいけないんだ”と言われました。そのためにこつこつと努力しますし、考えます。例えば“この芝居はシンボリズムがいっぱいです”という台詞で、ただ“シンボリズム”という言葉をカギカッコして(強調して)言うのではだめなんです。

言葉の音程、硬さ、柔らかさ、大きさ、フィットするところを探して、演出家のトムを納得させなくてはいけません。トムは日本語は分かりませんが、うまくいっていない時は直感的にわかりますから」

――緻密なお仕事ですね。

「人それぞれですが、俳優の商品価値は”見た目と可愛さ”という方もいらっしゃいますが、僕の商品価値は“演じること”なんですよね。年をとれば、さらにクオリティの高さを求められるのは当たり前だ、お前は出来ないのかと自分に問う。“いや出来る”“それならどうする”と自問自答しながら考え、演じる。その果てに、軽妙で知的な日下さんの芝居であったり、先人たちの域に行けたらと思いますね。決して止まらない。まぐろと一緒です(笑)」

【『パジャマゲーム』観劇レポート
“等身大の人生”の歓びが溢れ出す
ポジティブ・ミュージカルの決定版】

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

開幕前に携帯電話の電源オフなど、マナー喚起の放送を担当するのは、パジャマ工場の組合委員長プレッツこと上口耕平さん。締めくくりの「“パジャマゲーム”、始まるよぉ!」のイントネーションが何とも明るく楽しく、期待を掻き立てると、早速浮き浮きするような序曲がスタート。

続いて登場する男(工場のタイムキーパー、ハインズ=栗原英雄さん)が軽く口上を述べると、「Racing With The Clock」のタイトルにふさわしい小刻みのナンバーに乗って、パジャマ工場の様子が描かれます。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

ミシン台の前に座った女性陣に男子社員たちが布地を配り、時間に追われながら仕上がったものを拾いあげてゆく。そんなルーティーンのさなかに現れた新任の工場長シド(新納慎也さん)はベテラン秘書のメイベル(阿知波悟美さん)に迎えられますが、着任早々、やる気のない社員とトラブルが勃発。

しかし、そのおかげで苦情処理委員のベイブ(北翔海莉さん)と出会い、二人は互いに惹かれ合います。組合が7セント半の賃上げを要求中ということもあり、上司と部下という立場の違いが障壁となりかけますが、年に一度の社員ピクニックの日、シドはベイブに大接近。二人のキスをきっかけとして始まるナンバー「Once A Year Day」では、デュエットダンスに野球のバットを綱に見立てた綱引き、ベテラン社員も巻き込んでの大縄跳びと、ニック・ウィンストンによる創意溢れる数々の振りが目まぐるしく展開、男性キャストが胸のすくような跳躍を見せれば、女性陣はカラフルなスカートを、足を上げる度ふわりと魅せます。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

息もつかせぬナンバーの最後は、“へとへとだ!”とばかりに全員で寝そべる、お茶目な構図。踊り終わったシドの開口一番、“この一時間で僕はこの町が凄く好きになった”の台詞は、観客の心の高揚をそのまま代弁するかのようです。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

この後も、ベイブに愛の言葉をせがまれてシドが歌い始めるカントリー・ウェスタン風の「There Once Was A Man」やタンゴにサルサと、ラテンの色気が充満する「Hernando’s Hidaway」等、舞台には空間とキャストをフルに使った躍動感溢れるナンバーが続出。

体力の限界に挑むかのような振りを溌溂とこなすカンパニー全体が、本作の第一の見どころです。もちろん個々のキャラクターもそれぞれに魅力を放ち、ベイブ役の北翔海莉さんは歌唱、ダンスを含めて誠実さと清潔感に溢れ、いかにも同僚たちに頼られそうな風情ですが、シドとのシーンでは純情さが覗き、恥じらう表情が愛らしい。二幕の「Steam Heat」では冒頭、宝塚トップスターの経歴を生かしたスタイリッシュかつクールな所作で目を奪います。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

シド役の新納慎也さんは会見時、しきりと“二枚目に見えるか心配”と冗談交じりに(?!)言っていましたが、颯爽たる長身がぴたりと役にはまるのみならず、これまでの個性的な諸役での経験が、シドという二枚目に人間的な厚みを持たせています。ややスローテンポでなかなかの難曲であろう「A New Town Is A Blue Town」等、伝統的なミュージカル・ナンバーもきれいに、たっぷりと歌い上げ、歌い手としての本領も発揮。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

社長秘書グラディス役の大塚千弘さんは大人の女性の色気を嫌味なく見せ、本来は女性にだらしのない役どころであるプレッツ役の上口耕平さんも、彼自身の明るさ、潔さで役を何とも憎めない男に仕上げています。シドとベイブの恋を応援するチャーリー役、広瀬友祐さんは優しいオーラの中にほのかにベイブへの思慕を漂わせ、気になる“いい人”ぶり。

本作唯一の敵役(?!)、雇われ社長のハスラー役、佐山陽規さんは手強い存在感が頼もしく、同じくベテランのハインズ役・栗原英雄さん、メイベル役・阿知波悟美さんも余裕たっぷりの存在感、年輪を重ねるということの素敵さを感じさせます。特に、まるで踊ってなどいないかのように軽々とステップを踏み、ハインズのナンバー終わりで敢えて極めのポーズを短く切り上げ、ひょいと肩の力を抜く栗原さん、会心のパフォーマンスに唸らされずにはいられません。
『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

『パジャマ・ゲーム』(C)Marino Matsushima

いわゆる現代もの(20世紀以降を舞台とした作品)では特に、時代背景や舞台設定とどう向き合うかが大きなポイントとなってくる中、今回の舞台で“50年代のアメリカ”を匂わせるのは衣裳を中心としたビジュアルのみ。社員たちが童心に帰って年に一度のピクニックを楽しむ場面では、もはや“アメリカ”や“50年代”という縛りもなく、等身大の人間たちが集い、歓びを共有する、普遍的な理想世界が目の前に現れます。

一見、たわいないファンタジーのようにも見えますが、そこには演出家トム・サザーランドの、(ささやかな日常の幸福を見ずに“排除”や“不寛容”に血道をあげている)“今”の世相に対する風刺、もしくは願いが込められているのかもしれません。奇跡と言っていいほどの完成度を得て、日本版『パジャマゲーム』は、“ポジティブ・ミュージカルの決定版”と呼ぶにふさわしい舞台となっています。

ファインディング・ネバーランド

9月8~24日=東急シアターオーブ
『ファインディング・ネバーランド』Photo by Jeremy Daniel

『ファインディング・ネバーランド』Photo by Jeremy Daniel

【見どころ】

ジョニー・デップ主演の映画を舞台化し、15年にブロードウェイで初演。ダイアン・パウルス(『ピピン』)の演出と、英国の人気グループ、Take Thatのゲイリー・バーロウによる楽曲が高く評価されたミュージカルが来日。19世紀後半の英国で劇作家バリがある一家と出会い、子供たちに教えた“空想ごっこ”から『ピーターパン』の着想を得てゆく様が描かれます。最新テクノロジーに頼らず、人力を生かして逆に斬新なフライング・シーンなど、創意に満ちた演出で魅せつつ、悲しくも美しいストーリーが観る者の心を浄化。19年には日本人キャスト版が石丸幹二さん主演で予定されているそうですので、その“予習”としても見逃せない舞台です。

【観劇ミニ・レポート】
『ファインディング・ネバーランド』

『ファインディング・ネバーランド』

甘やかな音楽が響き始め、見慣れた緑色の衣裳をまとった少年が光の玉と戯れる。おそらく誰の目にも、それがピーターパンとティンカーベルであることは明らかでしょう。そこに物語の作者であるジェームズ・バリ役の男性が現れ、『ピーターパン』誕生の経緯を語り始めます。ロンドンのケンジントン公園で“ごっこ遊び”に興じるデイビス家と出会ったバリは、父親を亡くしたことで心を閉ざしていたピーターに“想像すること”の楽しさを教えますが……。

一家との出会いがバリの童心を呼び覚まし、『ピーターパン』誕生のきっかけとなってゆく様を、舞台はバーロウのポップなメロディに乗せ、わかりやすく描いてゆきます。中でも上っ面ばかり取り繕う上流社会に閉塞感を抱いていたバリが、海賊(フック)の姿をした“奔放な自我”に心を解き放たれる一幕終わりのナンバー“Stronger”がパワフル。また2幕でバリのために芝居を練習する4兄弟たちの歌唱“We’re All Made Of Stars”の達者な歌唱には唸らされること請け合いです。

後半、大きな悲しみに包まれる舞台ですが、幕切れは爽やか。19年の日本版では、日本人の持ち味がどのように生かされるか、また作品のトーンを大きく左右するだろう少年たちの母親、シルヴィア役やフローマン/奔放な自我役のキャスティングがどうなるか、興味がいや増す今回の来日版です。

*次頁で『52days』『ソング&ダンス65』をご紹介します!