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ニンテンドースイッチはWii UでPS Vita?

品薄が続いている任天堂の新ゲームハード「ニンテンドースイッチ」。なんでこんなに売れているのでしょうか? 理由は色々ありますが、それらを1本線にまとめる言葉は「Wii UでPS Vita」かもしれません。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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ニンテンドースイッチなんで売れているのか良く分からない問題

ニンテンドースイッチの図

分かりやすく、これで売れた! と言いにくいのがニンテンドースイッチの難しいところです

品薄が続いている任天堂の新ゲームハード「ニンテンドースイッチ」。8月に入ってから出荷が増えましたが、入荷分を購入希望者が大きく上回る為、多くの店舗で抽選販売が続いています。さらには任天堂の公式オンラインストア「My Nintendo Store」で2017年8月24日から、10月発送分の予約を開始しましたが、こちらも予約受付が開始されるたびに接続困難となり、あっという間になくなります。Amazonなどのインターネット通販では、本体価格にプレミアがついて40,000~45,000円に。

さて、好調なニンテンドースイッチですが、ガイドはよく「ニンテンドースイッチってなんでこんなに売れているの?」という質問をされることがあります。実は、この質問、結構困るのです。売れる要因はいくつも考えられます。本体同時発売の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が高評価だったから、今後の注目タイトルについて発売スケジュールを前もって明らかにし、期待感を高めたから、据え置機としても携帯機としても遊べる利便性、スリープからの起動などの動作が快適だから、「スプラトゥーン2」を遊びたい人が多いから。

これらすべてを総合して売れていると言ってしまえばそうでもあるんでしょうが、一方でそれらを有機的に結ぶ説明ができるかというと、それがとても難しいのです。ですが、実は国内市場に関しては、一本筋道をつけることのできる仮説が立てられました。ということで、ちょっとご説明してみたいと思います。


スイッチの居場所とドラクエ11

ドラクエ11の図

3DSでもPS4でも大人気のドラクエ11

仮説をご説明するには、まずそのヒントについてお話しなければいけません。ヒント1は「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(以下ドラクエ11)」の売れ方です。ニンテンドースイッチとは何の関係もなさそうに思うかもしれませんが、お付き合いください。

ドラクエ11はニンテンドースイッチ版の発売予定もありますが、現状は見通しが発表されず、2017年7月29日にニンテンドー3DS(以下3DS)版とPlayStation4(以下PS4)版が発売されました。

この売れ方がちょっと面白くて、比べると、3DS版が約160万本、PS4版が約120万本。3DS版の方が多く売れているんですが、ハードの普及台数を考えると、ニンテンドー3DSは約2,300万台で、PS4は約500万台、圧倒的なニンテンドー3DSの普及台数に対し、PS4版のドラクエ11は大健闘していると言っていいでしょう。PS4は累計販売台数に対して、かなりハードがアクティブに動いている印象を受けます。

2017年に入ってからのPS4とニンテンドー3DSのハード販売台数を比較すると、どちらも約120万台程度。ここにスイッチをいれると、ニンテンドースイッチがここまで約150万台。何が言いたいかというと、2017年に入ってからのコンシューマーゲーム業界は、低年齢層に強い携帯ハードのニンテンドー3DSと、大人ゲーマーに強い据え置きハードのPS4が共存しているところに、据え置きハードであり携帯ハードでもあるニンテンドースイッチが割って入ってきた、ということなのです。

じゃあ、ニンテンドースイッチは低年齢層向けの携帯ハードも、大人向けの据え置きハードも押さえられている状況で、どのポジションで売れているのか、ということになります。


スプラトゥーン2のメインユーザーは10代?

サーモンランの図

ローカルで遊ぶとメチャクチャに楽しいサーモンランが追加されたことも、10代のユーザーが購入しやすくなる理由かもしれません

その解答になりそうなのがヒント2です。ゲーム総合情報メディアの「ファミ通」は2017年8月24日、任天堂から発売中のニンテンドースイッチ専用タイトル「スプラトゥーン2」の販売本数が100万本を突破したことを報じ、ニンテンドースイッチとスプラトゥーン2のユーザー分布についての調査結果を発表しました。

【関連サイト】
『スプラトゥーン2』国内推定累計販売本数が100万本を突破、購入者・プレイヤーは10代男性が最多(ファミ通.com)

詳細はリンク先を見ていただきたいのですが、大変に興味深いのは、ニンテンドースイッチも、スプラトゥーン2も、購入者トップは10代だということです。特にスプラトゥーン2は約40%が10代ということで、大変な支持を得ています。

任天堂のハードは、小学校卒業と共にいったん卒業する層が多く、中学生や高校生になると影響力が弱いとされていました。しかし、スプラトゥーン2とニンテンドースイッチはそこを確実に射止めてグングン数字を伸ばしています。このことは、ニンテンドースイッチの人気と無関係とは到底考えられません。

じゃあ、本来その層を押さえていたハードとはなんでしょうか?

PS Vitaが動いていない

PSVitaの図

2017年のPSVitaはかなり動きが鈍くなっています

スプラトゥーン2の購入者分布を確認すると、トップは前述の通り10代、そしてその次は10歳から5歳の子ども達が続き、3位は20代です。

この層にアクセスしていたハードはなんでしょうか? そこに居たのはPS Vitaのはずです。PS Vitaの現状はどうなっているかというと、累計約550万台とPS4以上の普及台数を持ってはいるのですが、実は2017年に入ってから数千台しか売れてない週が多く、PS4や3DSと比べると勢いがありません。もちろん、大きな理由は2017年になってから、話題になるタイトルがPS Vitaにあまり出ていないということでしょう。それに加えて、少し気になることがあります。

というのは、PS Vitaで1番売れていたタイトルというのは何か、ご存知でしょうか? もしかしたら意外に思われる方もいるかもしれませんが、実は「マインクラフト」です。マインクラフトはPS Vita唯一のミリオンタイトルで、10代に強いハードであったPS Vitaに小学生の層を呼び込んだ功労者です。マインクラフトは非常にたくさんのハードで出ていますが、子ども達がマインクラフトを遊ぼうと思った時、PS Vitaは快適に遊べ、持ち運びもでき、友達と集まって遊びやすく、非常にいいハードだったはずです。

【関連記事】
マインクラフトはPS Vitaを救うか?(AllAboutゲーム業界ニュース)

しかし、PS Vitaと同等以上に、子ども達にとって快適なハードが出ました、それがニンテンドースイッチです。ニンテンドースイッチ版マインクラフトは、ハード単体でテレビに接続でき、すぐさま携帯モードで外に持ち出せ、しかも、PS Vitaでは4人までだったマルチプレイが、オンラインでも、ローカルでも8人まで遊べます。


Wii UでPS Vita

シーソーの図

Wii UとPSVitaをあわせた形でユーザーを吸い上げている、と考えると、妥当な動きなのかもしれません

これまでのお話を、ニンテンドースイッチ発売日から順を追ってまとめていきましょう。おそらく、ニンテンドースイッチ発売当初は、コアな任天堂ファンがそのハードの多くを購入していたでしょう。そこでゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドが大変な高評価を獲得し、一気に話題になります。

その後、4月末にゴールデンウィークを狙って「マリオカート8 デラックス」が発売、任天堂が得意なファミリー層を獲りにいきます。マリオカート8 デラックスはWii Uで発売された「マリオカート8」の豪華版ではありますが、Wii Uの購入を見送った人達には、新作に近い輝きがあったはずです。そして5月頭には、マインクラフトがダウンロード販売開始。ここで、ニンテンドースイッチは、圧倒的高評価のゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドがあり、マリオカートもマインクラフトも遊べ、そしてもうすぐスプラトゥーン2でるぞ、というハードになります。

という流れで、任天堂ファン、ファミリー層に加え、PS Vitaが持っていた10代を大きく巻き込んだ形で、ニンテンドースイッチが大躍進と考えると、かなり自然かなと思います。つまり、ニンテンドースイッチは、Wii Uのターゲットユーザーと、PS Vitaのターゲットユーザー両方にアクセスして成功した、ということになります。その為には、冒頭でご紹介した人気のタイトルや、据え置きハードであり携帯ハードでもある特性など、どの要素も重要であったように思えます。

こうなると、今後のニンテンドースイッチの課題として、10代のユーザーに刺さるソフトが供給し続けることができるか、という点も大きくポイントになるかもしれません。2016年8月25日に発売された「モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver.」の動向や、年末タイトルでは「スーパーマリオ オデッセイ」だけでなく「ゼノブレイド2」が10代のユーザーに歓迎されて数字を伸ばせるか、ということも注目したいところです。

【関連記事】
ニンテンドースイッチはいつになったら手に入る?(AllAboutゲーム業界ニュース)
ローカルサーモンランがイクラでも遊べるとサケびたい(AllAboutゲーム業界ニュース)
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【関連ページ】
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