撥水スプレーの進化は著しい!
雨が降ると多かれ少なかれ靴のアッパーは濡れます。靴の中に雨が浸み込み難くするだけでなく、いわゆる「塩吹き」や「銀面浮き」の状態にアッパーの革をしないためにも、撥水剤の役割は重要です。
梅雨時の悪天候は、気分が滅入ってしまうもの。ムワッと蒸し暑い、傘をささねばならないので、身動きがどうしても制限されてしまう。ましてや近年は、ゲリラ豪雨や爆弾低気圧など、朝晴れていても全く油断できない状況です。
そして、靴の外も中もずぶ濡れになることで、気分が更に萎えてしまいがち。ただ、このトラブルをゼロにするとは言えないまでも、最小限に防ぐには「撥水剤」なる有効なツールがあるのをご存知でしょうか。
ちなみに、「撥水」と「防水」とは厳密には意味が異なります。この記事では実際のメカニズムを重視し、「防水」と謳われている商品についても、必要に応じて「撥水」の言葉を用います。
撥水:皮革や生地に水より表面張力の遥かに小さい溶剤を付着させるのを通じ、そうしない時に比べ表面張力の差を大きくし、「通気性は保持したまま、外部の水を弾かせる」加工。
防水:皮革や生地に密閉効果の高いゴムや溶剤などを付着させるのを通じ、「通気性を多少犠牲としても、外部・内部双方の水を完全に通さなくする」加工。ゴム引きコートが代表例。
バランスの良さと即効性 どちらを重視?
まずは靴の撥水剤のうちで今日最も一般的な、「フッ素樹脂」を主原料に用いたものから。人気の理由はズバリ汎用性の高さで、スムースレザー・スエードやヌバックなどの起毛系の革にはもちろん、布地にも効果があるので革靴だけでなくバッグや服にも使えます。また、同時に撥油性や防塵・防汚性も高められるので、正に一家に一本あると何かと重宝な存在です。特にスプレー式のものは、手も殆ど汚さずに瞬時に処理できるためか、今やこの種の商品の完全に主役。気が付けばシリコンオイルを主成分とするものは、すっかり少数派になってしまいました(どうも素材の接着面にダメージを与えるものも一部にあるらしい……)。
「M.モゥブレィ プロテクターアルファ」は、塗布した後も革の質感に変化を与えず曇りが殆ど起こらない従来からの長所が更に進化しただけでなく、噴射口が若干広くなったためか、より広範囲かつムラなくスプレーできるようになりました。なので、例えば合わせるトラウザーズ(パンツ)の折り目の周りとかも、同じタイミングでスプレーしてしまうのも良いアイデア!
より速い効果を求めるなら、「ヴィオラ 靴用防水スプレー」がお勧めです。上記の「M.モゥブレィ プロテクターアルファ」はスプレーして約30~40分後から撥水効果が一気に出てきますが、こちらはそれより若干早く、スプレー後20分程度で戦力になってくれます。急な外出の時などには、この即効性は確かに便利!
どちらもきちんとシューケアを施した後にスプレーした方が、撥水効果がより発揮されます。また双方とも「噴射剤」には環境保護の観点から炭酸ガスを用いているので、スプレーする前には従来の惰性で缶を振らないようにして下さい。無闇にそうしてしまうと、中身を使い切る前にスプレーできなくなってしまうのでご注意あれ!
持続性が大幅に向上!
そして「持続性重視」の場合にお勧めなのが「コロニル カーボンプロ」。フッ素樹脂を主原料に用いた撥水スプレーの数少ない欠点は、その効果を最大限に出せるのが塗布後1~2日程度、持続しても2週間前後と、素材にダメージを与え難い分効果が短期間に終わってしまう点でした。しかしこちらは、自分の経験でも少なくとも3週間はしっかり効いてくれます。
また、この種の撥水スプレーでは塗布後、恒久的にではないものの革の表面が若干曇るものも中にはあるのですが、この「コロニル カーボンプロ」はスプレー後、逆に革に僅かに光沢が増すような気も……透明度では定評のあるアクリル樹脂が添加されているからかな?そのため、こちらを用いる際はスプレーした後、具体的には汚れを落とした後でスプレーし、約40~50分程度十分乾かしてから乳化性靴クリームでしっかりシューケアするのがお勧め。革の輝きが一層増しますので。
という事で、今回は「フッ素樹脂」を主原料にした製品のお勧めをご紹介しましたが、用途限定であれば、元祖撥水剤とも言えるワックス=蝋分を主原料としたものもどっこい生き残っていまして、実はこれも世代交代が進んでいます。次回の記事ではそちらをピックアップします!
【関連記事】
・「豪雨ニモ負ケズ」な通勤スタイルを叶えてくれるアイテム7選
・革靴の手入れに使うクリームの選び方と使い方
・靴の手入れの必需品!アビー・レザースティックとは