困っている人を全面的に助けてあげることは、適切な援助か?

電話をする女性

不安になったらすぐに電話をかけてくる相手の話を、いつでも何時間でも聞く―それは、相手にとって本当に必要な援助ですか?

困っている人の力になってあげたい……そう思えるのは、親切心と優しさがあってこそです。しかし、ただ親切心のみにしたがって援助していると、結果的に相手のためにならないことをしていることが、残念ながら少なくないのです。

たとえば、ささいな出来事でも不安になり、今すぐに誰かに話を聞いてもらわずにいられない人……。こうした人から相談を受けると、「すぐに応じてあげなくては」「何時間でも話に付き合ってあげなくては」という使命感が湧き、要求に応じて何度でも無制限に話を聞き、慰めている方もいます。しかしこうした援助が、実は相手にとって最もよくない結果を生み出していることがあるのです。

相手は、不快な気持ちをその都度誰かに聞いてもらえれば、その瞬間はとても楽になるかもしれません。しかし、このやりとりが習慣になると、相手は不快な気持ちと向き合い内省する力、自分で解決する力を伸ばすことができなくなってしまいます。そして、不快になるたびに話を聞いてくれる人を探し、その時々の憂さを晴らすことでしか、ストレスに対処することができなくなってしまうかもしれません。

ストレスに上手に対処できるようになるためには、苦しくてもいったんその気持ちを抱え、いくつかの対処方法を試みることが必要です。たとえば、高ぶった気持ちが落ち着くのを待ってみる、深呼吸をして気分転換をする、発想の転換方法を学ぶ。こうした対処方法をたくさん試すことによって、人は自分なりのストレス対処方法を身につけることができるようになるのです。
 

了解を得ずにむやみに介入すると、相手の不利益になることも……

腕組みをする男性

「君をためを思ってやったのに」…相手の意思を確認せず、早計に援助が行われると、結果として相手に不利益が生じることもある

また、相手が自分自身でできることに対してむやみに手を貸してしまうことも、本当に必要な援助にはなりません。たとえば、「他人から嫌がらせを受けて困っている」という相談を受けた人が、その人の了解を得ずに、すぐに嫌がらせの行為者に連絡して注意をする。これは、相談した人のためになっているでしょうか?

こうした相談においてまず必要なことは、本人が行為者に対して自分の意思を示しているのか、または、これから意思表示ができそうなのか、こういった点をよく確認することです。不快感や抵抗をはっきりと示しているのに、繰り返し嫌がらせをされる。自分から「NO」と言い出しにくい――こうした場合には、相手に代わって行為者と話をすることが必要になるかもしれません。しかし、上のようなステップを踏まずに、他人の対人関係の問題に第三者がむやみに介入すると、結果的に問題をこじらせたり、相手の対人関係調整力を阻害したりする可能性があります。

このように、「力になりたい」という気持ちが強いあまりに、相手からの連絡に無制限に応じたり、相手の問題に早計に介入することは、結果的に相手のためになっていないことが少なくありません。
 

相談する人と助ける人、双方が守るべき「境界線」

そして、困っている人を援助する際には、自分と相手との「境界線」を設定することが必要です。境界線とは自分と他者の領域を意識し、「自分がすること」「他者がすること」を明確にする“線引き”でであり、けじめです。「境界線」(バウンダリー)は、「壁」(バリア)ではありません。壁のようにシャットアウトしているわけではないので、相手の様子を見守ることができ、必要なときにはすぐに援助の手を伸ばすこともできるのです。

境界線には、たとえば「時間」と「責任」の境界線があります。時間の境界線は、「今日は〇分間話を聞ける」「次回話を聞けるのは○日後」というように設定します。責任の境界線は、「自分がやるべきこと」と「相手がやるべきこと」をはっきり確認し合うことです。
 

困っている人にとって、本当に必要な援助とは何か

そもそも、他人に対する本当に必要な援助とは何でしょう? 助けを求める人が自信を回復し、自分の力で活動できるようになるためにサポートしていくことではないでしょうか。

これを実現するためには、まず相談してきた人と、援助をする人との間の「境界線」を明確にし、お互いがその線引きを認識することです。こうして、双方が境界線を了解した上でお互いが「自分がするべきこと」をする、そして、援助をする側は「本当に相手のためになるサポート」をする。このことが、困っている人を援助する上でのとても大切な心がけなのです。
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