仕事に行き詰まり感…キャリアアップの限界を感じたら
「昔のように仕事にやりがいが感じられない」「何だか働くのが空しくなってきた……」 ひょっとすると「上昇停止症候群」に陥っているかもしれませn
この「上昇停止症候群」は、従来は出世欲の強い中年期のサラリーマンが体験しやすい心の現象だと言われていました。管理職のポストが少ない大規模な組織では、出世するには何十人、何百人もの同期社員との出世レースに勝ち抜かなければなりません。受験や就活レースを勝ち抜き、目標のキャリアを実現してきた人にとって、人生の後半に目標を達成できない屈辱感を味わうのは何よりも苦しいことです。
仕事が生きがいの人々が直面する「キャリアの壁」とは
とはいえ、上昇停止症候群は出世欲の強い人だけに見られるものではありません。仕事の専門性や「働くこと」そのものに生きがいを見出す人にもよく見られる現象です。このタイプは出世欲よりむしろ、「この仕事で自分の世界を広げ、自己向上できることがうれしい」「キャリアを磨き、専門性を高めていくことに充実を感じる」といった思いが強いのです。仕事における向上心に価値を置いてきた人が、その分野でのステップアップを望めなくなる――こうした「キャリアの壁」に直面し、上昇停止症候群に陥るケースが増えていると考えられます。このキャリアの壁の原因の一つに、所属会社のシステムとしてある年齢層に達すると配置転換等の対象となり、それまでのキャリアの継続が難しくなる場合があります。また、会社の倒産や解雇によって突然仕事を失ってしまう場合もあります。入社当時は花形だった産業が、10年、20年たつうちに斜陽となり、中高齢層の職員がリストラの対象となっていくケースも稀ではありません。さらに近年では、「人間にしかできない」と言われてきた領域にも人工知能やロボットが参入し、人の手を必要としなくなる仕事も拡大しつつあります。
それまで意欲と目標を持って取り組んできた仕事に急に陰りが見えた時、スムーズに転職できるだけの若さやコネクションがあれば、現状を乗り切ることができるかもしれません。しかし、この壁を乗り越えられない人は、キャリアへの虚無感に襲われてしまうことが少なくありません。
「上昇停止症候群」は自分を見つめる転機
では、今感じている挫折感や虚無感が「上昇停止症候群」によるものかもしれないと気づいたとき、どのように行動すればよいのでしょう? この問題は、すぐにショックから立ち直り、方向を転換できるほどたやすいものではありません。しかし、まずはできることからやっていきましょう。最初に行うべきことは、心身の健康状態のチェックです。憂鬱な気分が1日中、何週間も続いていませんか? 外出や人との交流が苦しい状態になっていませんか? 眠れない状態が続いていませんか? 食事をとれない日が続いていませんか? 物事に集中できない、決断ができない、ミスが続いている、こうした状態が続いていませんか? もしそうなら、今は薬と休養によって心身の状態の回復させることを優先する時期かもしれません。まずは、早めに心療内科や精神科で相談しましょう。
怒りや不安を手放すと、進むべき道が見えてくる
心に浮かぶ後悔や怒り、不安や焦り…それらの感情を手放してみましょう
そんな気持ちが湧いてきたら、順番にそれを手放してみましょう。心に浮かんできた感情をそっと自分の体から外に出し、空に解き放つ――そんなイメージです。無理にポジティブなことを考えなくても大丈夫です。まずは、自分を縛り付ける感情を空に流す。そうするうちに、自然と気持ちが楽になってきます。こうして過去への執着と未来への不安から解放されることで、徐々に進むべき方向性が見えてくるでしょう。
長年を費やして築いた仕事とキャリアの目標に曲がり角が訪れ、感情が大きく揺さぶられているなら、次に進むべき方向を定めるまでには少し時間がかかります。まずは、今の自分を束縛している感情を手放すことで、心をニュートラルな状態にしていきましょう。すると、自分の過去も今後のキャリアの方向性も冷静に見つめることができ、ネクストステップへの歩み方が自ずと見えてくるはずです。