国内主要メーカーが続々参入、2017年は“有機ELテレビ元年”に

65E6P

有機EL方式大画面テレビで先行するLGエレクトロニクスを代表する製品が65E6Pだ

2016年まで発売がLG一社に限られ「新しい薄型テレビ」に止まっていた有機EL(OLED)テレビ。

今春になり東芝が国内他社に先駆けてレグザX910(65V,55V)を発売、ソニーのブラビアが夏までに、パナソニックのビエラが二ライン三機種を初夏に発売予定と予想され、シャープを除く主要テレビメーカー各社がラインナップ最上位に有機ELを投入、にわかにテレビの主役に躍り出た感があります。

有機EL方式の特長と現在主流の液晶方式の違いについては、ガイド・鴻池賢三氏の記事『話題の「有機ELテレビ」とは? 液晶との違いを解説』にすでに詳しいので改めて深入りせず、ここでは「有機EL元年」にふさわしく実戦的バイヤーズガイドを試みることにしましょう。


有機EL、液晶、プラズマの三方式を復数の視点から比較

バックライトを持つ液晶方式に対し、有機ELはプラズマ方式と同じく自発光デバイスであることはご存知の方も多いでしょう。下図は、有機ELと液晶、そしてプラズマの三方式について、復数の観点から優劣を比較したものです(画像クリックで拡大表示が可能)。

液晶方式の採点に幅が大きいのは、製品のレンジが広大なため

液晶方式の採点に幅が大きいのは、製品のレンジが広大なため


図でもわかるとおり、有機ELは新しい方式だからといって、全ての面で液晶方式に勝るわけでないことがご理解いただけたかと思います。

以下、項目別に解説してみましょう。


視野角で液晶方式を圧倒的に上回る有機EL

有機ELが液晶に圧倒的に勝る点が視野角です。液晶方式の○はIPS、△が主流のVAです。VA方式がパネルに配向された液晶分子が電荷で垂直方向に回転し光を通過遮断させるのに対し、IPS方式は水平方向に回転します。その結果、液晶方式特に大画面で主流のVAパネルは視点が横にずれていくとたちまちコントラストが低下し色が落ちてしまいます。IPSパネルはVAパネルに比べると視野角が確保されますがやはり制限があります。

それに対し、自発光の有機ELは液晶方式のような光のシャッターが不要ですので視野角が広く、コントラストも発色もキープします。

コントラストも自発光有機ELの長所の一つ。液晶方式がエリア駆動等バックライト制御の工夫でダイナミックコントラストを得ているのに対し、有機ELは画素を完全消灯することでほぼ無限大のコントラストを得ることができます。一方、最大輝度は、パワフルなバックライトを搭載すれば明るくすることの容易な液晶方式が現時点で勝ります。

液晶方式の弱点のひとつが動画ボヤケです。黒挿入やインパルス制御といった工夫で初期にくらべ大きく改善されましたが、テスト用映像を有機ELと並列視聴するとやはり残像や滲み、尾引きが見られます。ホールド描画という点で液晶方式も有機ELも同じですが、応答性の早さが差になっています。


黒の表現は有機ELとハイエンド液晶で接戦

画質を大きく左右する精細感と色再現性は有機ELとハイエンド液晶方式を比べた場合、現時点でほぼ互角と考えて下さい。

元々液晶方式は構造上精細感が得られやすいのが特徴で、テレビが4Kへスムーズに移行できたのも液晶方式のこの特長あって、でした。色域(色の表現範囲の広さ)は両方式共DCI-P3(デジタルシネマの色域でハイビジョンのBT.709より広い)をクリアしますが、4K/8Kのめざす指標であるBT.2020(DCIより広く自然界の色彩を99%再現)をカバーするに至っていません(プラズマ方式はDCI-P3未満)。

最大の関心ごとである、黒表現も見てみましょう。エッジ型バックライトを採用した普及クラス液晶方式と比較した場合、黒浮きがなくユニフォーミティ(映像の明暗むらのなさ)に優れる有機ELの圧勝です。しかし、直下型バックライトでエリア駆動数のきめ細かいハイエンド液晶方式と比較すると接戦になります。

現在国内三社を含む有機ELテレビすべてが 韓国LGエレクトロニクス製のパネルを使用し映像エンジン(電子回路)で各社なりの映像に仕立てていますが、これがメーカーの腕の見せ所。

「黒が美しい」ことが売り物の有機ELテレビのはずが、製品によっては往年のプラズマ方式のように暗部が赤っぽく色が浮くことがあります
。ここは液晶方式との比較というより有機ELテレビ同士の比較といえるでしょう。

OLEDレグザエンジン Beauty PRO

有機ELパネルをテレビに変えるのが映像エンジンの仕事。東芝レグザX910高画質の鍵がOLEDレグザエンジン Beauty PRO


暗部階調(暗いシーンの濃淡ニュアンスの豊かさ)は現時点で液晶方式が勝っています。液晶パネルの開閉と直下型バックライトの動作制御、という二重のダイナミックファクターが活用できるため、きめ細かい濃淡を描き出しやすいのです。同一メーカーの有機ELとハイエンド液晶でグラデーションチャートを見比べると、有機ELは黒の一歩手前でやや潰れていることが分かります。


有機ELテレビの消費電力はハイエンド液晶とほぼ互角

消費電力にも注目してみましょう。液晶方式が市場でプラズマ方式を駆逐した理由のひとつが消費電力に優れることでした。放電現象を利用して蛍光体を光らせるプラズマ方式は立ち上がりを早めるため、常時予備発光が必要だったことに加え、液晶の画面の明るさを追いかけた結果、消費電力を下げることがますます困難になりました。

一方バックライトの出力を下げれば電力効率が容易に上げられることが液晶方式の特長でしたが、じつは昨年来ハイエンド液晶方式の消費電力が悪化する傾向にあります

4K HDR時代になりHDR10と呼ばれる基準スペックを達成するためにハイエンド液晶が明るさ競争に突入し、最大輝度が1000nits(映像を入力した場合の画面の明るさを示す数値)あるいはそれ以上の製品が現れているからです。

国内三社が今春から夏にかけて発売する有機ELテレビは最大輝度800nits(三社共通)で消費電力は使用状況如何ですが、ハイエンド液晶とほぼ互角と考えられます。

プラズマ方式の弱点だったのが画素劣化(焼き付き現象)です。この点、有機ELテレビも同じ自発光方式である以上、画素劣化の危険が免れません。しかし、プラズマが生産終了してから時間が経ちディスプレイの制御技術が進歩し、各社の有機ELテレビは焼き付き回避システムを搭載しており、神経質になる必要はなさそうです。パネル全体の寿命を推し量るには今後の検証を待たねばなりません。


有機ELテレビの実売価格は高止まり、国内メーカーの製品投入で変動に期待

東芝レグザ65X910

国内勢の先陣を切って発売されたレグザ65X910。メーカー希望小売価格は90万円前後だが、すでに80万円台前半の販売店も。


最後に実売価格。有機ELテレビの位置づけについて国内三社で微妙なスタンスの違いがあります。

有機ELテレビはハイエンドのセグメント内で液晶方式と併存し住み分けていく存在で、今後も液晶方式がテレビの主流である事に変わりはないというのが東芝とソニーの考え方。一方パナソニックは当初から2ライン発売するらしいことから、今後テレビのハイエンドは(液晶方式でなく)有機ELで、というスタンスが窺えます。

東芝の場合、レグザ55X910の実売予想価格が約70万円前後、65X910が90万円前後と発表しましたが、すでに80万円台前半突入のお店もあるようです。

先行するLGのスタンダード機種OLED 65B6Pが70万円、55B6Pが45万円前後で発売され、後者はお店によっては現在すでに30万円を切っています。

パナソニック、ソニーの製品が市場に導入されれば、現在高止まりの国内メーカーの製品の価格にさらに変化が生じるものと考えられ、新方式といってもハイエンド液晶とさほどの差がありません

 

有機ELテレビへの買い替えは、どんな人におすすめ?

さて結論。テレビの買い替えサイクルは通常7~10年です。今年2017年は、パイオニアのKURO等プラズマ方式がフルハイビジョンになり懸命な画質向上の努力を続けていた時期からちょうど十年目になります。国内有機ELメーカーのマーケティング上の狙いの一つが「プラズマ方式からの置き換え」なのです。

プラズマ方式やハイエンド液晶をずっと愛用し、暗めに調光した部屋で映像を凝視することが好きな映像ファンなら、黒が美しく画面に息づくような一体感のある有機ELテレビをお薦めいたします。LGの同じパネルを使い、回路技術で三社三様の映像を演出していることも映像ファンなら見逃せません。

一方、明るい部屋でオンエア中心に見る日常使いのテレビを求めるなら現時点では明るさと発色の鮮やかさに勝る液晶方式をお薦めします。明るい部屋で明るい映像を標準ポジションで見ると、有機ELはやや発色がくすんで地味にみえることがあります。高輝度部分(映像の中の明るく白い部分)のノイズも有機ELの課題のひとつです。


店頭で有機ELを確認するなら地デジ、4K/2Kのブルーレイでチェック

「よし、有機ELテレビを実際に自分の目でみてやろう」と思ったなら、店頭で流しっぱなしのデモ用映像でなく地デジ放送や4K/2Kブルーレイディスクを見せてもらい実力を確認すること。

長らく液晶方式オンリーだったテレビ……今年は有機EL vs 液晶方式のバトルが面白くしてくれそうです。


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