世界100カ国の人に聞いた「快眠のためにしていること」
世界にはいろいろな快眠習慣があります
コーヒー、玉ねぎ、木の香り…眠れないときにかぐ香りは?
■コーヒーの香り(インドネシア)コーヒーといえば眠気覚ましの定番として知られていますが、インドネシアでは眠る前にコーヒーの香りをかぐそうです。コーヒーが好きな人は、コーヒーの香りをかぐと気持ちが落ち着くことがあると思います。この時、脳の中ではアルファ波という脳波が出ています。アルファ波は、リラックスしているときに多く現れるものです。
コーヒーの種類でいうと、グアテマラやブルーマウンテンの香りで、特にアルファ波が多く出ることがわかっています。眠る前にグアテマラやブルーマウンテンの香りをかぐと、心と体がリラックスできて眠りやすくなると言えるかもしれません。
■木の香り(ウクライナ、ルーマニア)
ウクライナとルーマニアの間にある国・モルドバでは、眠れないときに木の香りをかぎます。日本でも森林セラピーが注目されています。ヒノキ科やスギ科の樹木の香りに含まれる「セドロール」という物質は、寝つきを良くし熟睡感を高めてくれることが実証されています。「セドロール」は、エッセンシャルオイルの「シダーウッド」に多く含まれています。
■玉ねぎの香り(イギリス)
イギリスでは玉ねぎの香りにも、快眠効果があると考えられています。私が以前に協力したテレビ番組での実験でも、玉ねぎの香りの快眠効果は実証されています。ただし、香りが強すぎると刺激のため眠れなくなるので、香るか香らないか程度の少量の玉ねぎにしておくのが良いようです。
■カモミール、カレー、レモングラス(その他の国々から)
他の国でのアンケートでは、ぐっすり眠りたいときに使われる香りとして、カモミール(イタリア)やカレー(スリランカ)、ラベンダー(イギリス・コロンビア・シンガポール・トーゴ)、レモングラス(カンボジア)などがありました。快眠効果がある香りについては、以前の記事でも詳しく解説していますので、興味のある方は「科学的にも証明済み! 快眠を助ける4つの香り」もぜひご覧ください。
アーモンド、バナナ、肉?……各国のぐっすり眠れる食べ物
■夕食時間にも国によって差ハンガリーやマレーシアでは、眠る前に夕食をとるそうです。一方、イギリスやイタリア、スペイン、トルコ、ルーマニアでは、眠る前に何も食べないようにしています。これまでの睡眠についての研究では、満腹のときに眠ると睡眠の質が悪くなることがわかっています。ですから、医師としては、夕食は就寝する3時間前までに終わることを勧めています。
とはいえ、小腹がすいて眠れないということもあります。そんなときは、うどんなど消化の良い炭水化物を少しだけ、おなかに入れて眠りましょう。
世界では、いろいろな快眠食材が食べられています。いくつか印象的まものをご紹介します。
■アーモンド・胡桃、胡麻(中国)
特に医食同源の国・中国では、アーモンドやオート麦、胡桃(くるみ)、胡麻(ゴマ)、さくらんぼ、ハスの実などが食べられています。アーモンドや胡桃(くるみ)、胡麻(ごま)には、マグネシウムが多く含まれています。マグネシウムは精神を安定させる「セロトニン」や、抗ストレスホルモン「コルチゾール」を作り出す副腎皮質の機能を助けます。また、オート麦やアメリカンチェリーには、睡眠ホルモン・メラトニンが多く含まれていて、睡眠の質が良くなります。
■バナナ(タイ、スウェーデン)
タイやスウェーデンでは、バナナが食べられています。バナナには、必須アミノ酸のトリプトファンやビタミンB群、炭水化物が多く含まれています。これらの栄養素は体の中で睡眠ホルモン・メラトニンに変わるので、バナナはお勧めの食材の一つです。ただし、イギリスではバナナを食べると悪夢を見ると思われているようです。
■肉(ブラジル)
ブラジルでは、肉が食べられています。肉にもメラトニンの原料であるトリプトファンが豊富なので、よく眠れない人は試してみてもよいと思います。とはいえ、肉の消化には時間がかかるので、眠る直前はやめておきましょう。
■チョコレート、カレー、もち米、チーズ(その他の国々から)
変わったところでは、チョコレート(イギリス・イタリア・マレーシア)やカレー(スリランカ)などがあります。チョコレートにはカフェインが含まれているので、夜には避けた方が良いでしょう。食べるなら日中に、GABA(ギャバ)を添加したものをお勧めします。カレーを食べると、一時的に体温が上がって、そのあと急激に体温が下がることで眠くなると思われます。こちらも食べてから眠るまでは、しばらく時間をおいた方がよさそうです。
そのほかには、もち米(タイ)、ごはん(イタリア・ブラジル)、サラダ(アメリカ・スペイン・ドイツ)、チーズ(イギリス・オーストラリア・フランス)、スナック・お菓子(マレーシア)、軽食(アメリカ・スペイン・ドイツ・ポルトガル・マレーシア)などがありました。
その他の快眠食材については、「快眠食材・快眠レシピ」でも詳しくご紹介していますので、あわせてお読みください。
アルコール、お茶、ココア…各国の眠るための飲み物
やはり、眠るためにアルコールを飲む国は多いようです。日本でもなじみのあるお酒としては、ビール(イギリス・チェコ・ブラジル)やワイン(オーストリア・ブラジル・リトアニア)があります。他には、ブドウの搾りかすの蒸留酒であるグラッパ(イタリア)や、ウォッカのようなシナプス(オーストリア)、馬乳酒(モンゴル)なども飲まれています。しかし「睡眠の質を落とさないお酒の楽しみ方…飲酒の適量は?」にも書きましたが、アルコールは寝つきを良くする一方で、睡眠の後半では眠りを浅くしてしまうというデメリットもあります。また、眠るためにお酒を飲んでいると、アルコール依存症になる可能性も高まります。アルコールをとるなら、眠る3時間前までに少量だけにしておきましょう。
■紅茶・お茶・ココア(オーストラリア、トルコ、等多数)
紅茶やお茶、ココアを飲むという国も多いようです。紅茶はオーストラリアやオーストリア、ケニア、シンガポール、スペイン、トルコ、メキシコで飲まれています。緑茶はフィリピンやミャンマーで、快眠効果があると信じられているようです。アイスランドやイギリスでは、眠れないときにココアを飲むことがあるようです。
紅茶や緑茶、ココアにはカフェインが含まれています。夜に飲むと眠れなくなりますが、日中に飲んでおくと夜にはぐっすり眠れるかもしれません。昼間にカフェインをとって目を覚まして活発に動いていると、夜には疲れて眠くなるからです。また、茶葉には睡眠を促す「テアニン」という物質も含まれています。詳しいことは、「カフェインとは逆?お茶に含まれるテアニンで快眠!」をお読みください。
■ミルク(世界各国多数)
夜に飲むなら、ミルク系がおすすめです。ホットミルクはアジアやアフリカ、中南米、ヨーロッパの16カ国の人が快眠飲料として挙げました。また、イタリアやポルトガルでは、牛乳にハチミツを加えて飲んでいます。さらに、イランではヨーグルトを飲むそうです。
牛乳に多く含まれているカルシウムは、イライラを解消して気持ちをリラックスさせてくれます。すぐに効果が出るわけではありませんが、牛乳に豊富なアミノ酸一種「トリプトファン」は、睡眠ホルモン・メラトニンの原材料です。小腹がすいたときにも役立つので、牛乳は手軽な快眠飲料といえます。
快眠のための工夫は、国や地域によって実に様々です。皆さんも色々な方法を試して、ぜひ自分にあった快眠の方法を見つけてみてください。