2042年までは高齢者が増え続ける
総務省統計局の人口推計によると、2020年9月の高齢者(65歳以上)は3617万人(総人口に占める割合=高齢化率は28.7%)でした。国立社会保障・人口問題研究所の高齢者数の将来予測(2017年推計)は、2025年は3677万人(同30.0%)で、2042年にピークの3935万人になります。その後、高齢者の数は減り、2056年には2025年とほぼ同数の3670万人となります。人数は同じくらいでも、高齢化率は2025年の30.0%に対して、2056年は38.0%です。つまり、高齢者の割合が増える分、現役世代や子どもの割合が減るということです。
高齢者の生活は、現役世代の負担に負うところが大きいことは、みなさん、ご承知だと思います。公的年金は現役世代からの仕送りですし、公的健康保険と公的介護保険も現役世代が多くを負担しています。
高齢者が増え、それを支える現役世代が減っていく未来がはっきり推測できる以上、社会保障制度の改革を急がねばなりません。現役世代と高齢者が負担している社会保険の保険料や税金などで足りない分は、借金で賄うことになります。
現状でも、国や自治体の借金はかさんでいて、生まれてくるかどうかわからない子や孫、ひ孫世代につけを回すような状況です。それではダメだということで、社会保障制度を持続可能にするための改革が断続的に行われているのです。
年金・医療・介護の社会保障全般が見直される
では、最近の改革を見てみましょう。まず、公的年金には、「物価・賃金スライドの見直し」と「マクロ経済スライドの強化」のルールが盛り込まれました。前者は、物価が上がっても現役世代の賃金が下がれば年金額も減らすというもの。後者は、物価の上昇率から1%程度、年金額を減らすルールを強化するものです。具体的には、物価が下がったら、今まで通り年金額は据え置くけれど、物価が上がったら数年分をまとめて減らすということです。
一方、より年金が増える改正もあります。2022年4月から実施される「時給開始時期の選択肢の拡大」です。年金は支給開始時期を65歳よりも先に延ばすほど、支給額が増えます(繰下げ受給)が、現行は最長70歳まで。それがこの改正により、75歳まで延長されます(受取額は最大84%増)。ただし、裏を返せば、この延長には「より長く働いて、自分で老後資金を増やす努力をしてほしい」という国の思惑も見え隠れします。
次に、加齢とともに利用頻度も金額も高くなる公的健康保険ですが、高額療養費制度での改正もありました。かつては一律だった70歳以上の自己負担額について、現在、収入の高い方(課税所得380万円以上)はより高額負担となっています。
また、75歳以上の後期高齢者は加入する医療保険制度の保険料の軽減措置を受けていますが、それでも2年ごとの改訂では、保険料の限度額、均等割額とも、前回(平成30・31年度)よりアップしました。そして、介護が必要になったときに利用できる公的介護保険は、当初は一律1割負担(支給減額あり)でしたが、所得の高い高齢者の自己負担割合を増やす(2割ないし3割)見直しが行われました。
老齢年金や健康保険、介護保険は、いずれも老後生活に欠かすことのできない公的制度ですが、金額ベースでその恩恵の度合いは低下傾向にあると言えます。それによって、今の高齢者の生活もジワジワと厳しくなっていきますが、これから高齢者になる人はもっと厳しくなりそうです。心して、老後の備えをしましょう。
※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆
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