やりたくないのに多数派に従ってしまう――それが「同調」

同僚との会話

雰囲気よく働きたいのに、みんながグチを言うとつい同調していませんか?

「うちの会社なんて……」「この職場で頑張ったところで……」――あなたの職場に、こんな”あきらめムード”が漂っていませんか? 「グチの一つや二つ、どこの職場でもある」と軽視していると、そのムードが急速に蔓延し、退職者続出の事態になってしまうことがあります。なぜ“あきらめムード”は伝播してしまうのでしょう? このムードを打破するには、何が必要なのでしょう?

謎を解くカギとしてぜひ覚えておきたいキーワードが、「同調」と「革新」です。あきらめムードに巻かれるか、よい職場環境を作るかは、実は個人が選ぶことができます。以下で詳しく解説しましょう。

多数派の意見に沿う「同調」

まず「同調」について説明します。同調とは、ある集団内の“多数派”が主張する方向に、残りのメンバーの意見や態度、行動が流れていくことです。たとえば、仕事帰りに飲み会に誘われたとき、本当は行きたくなくないのに、職場のメンバー全員が参加を表明すると断りにくい空気を感じるもの。嫌々ながらも何となく参加してしまう……。こんな事態に多くの人が直面していると思いますが、これこそ「同調」のなせるわざです。

では、なぜ多数派の意見に、異を唱えるのは難しいのでしょうか?「同調」の心理を証明するものに、アッシュという心理学者が行った面白い実験があります。まず、下の質問にお答えください。左枠内Aと同じ長さの線は、右枠内1~3のどれにあたるでしょう?
アッシュの線の実験

     左枠のAの線は、右枠のどの線と同じ長さでしょう?


――答えは、どう見ても「2」の線ですよね。しかし、アッシュが集団実験を行ったところ、自分以外の回答者(全員サクラ)が全員2以外の線を選択したとき、なんと4割弱のもの人がそれにつられて同じ線を選択してしまったのです。この実験からも飲み会参加のような選択に限らず、自分以外の多数派が一斉に同じ意見を主張すると、人は周囲の意見に同調してしまいやすいことが証明されています。

風通しの悪い少人数職場に蔓延する「グチ」は怖い?

職場内の“あきらめムード”も、このように人間が自然と持っている「同調」の心理効果から蔓延していきます。周囲の人々が「うちの会社なんて……」「この職場で頑張ったところで……」と一斉に不満を言っていると、相当に強い意志を保っていないと周囲の不満に巻かれて同じように考えてしまうわけです。仮に飲み会などで職場のグチ大会が始まったとき、そこまで不満を感じていないのに気がつけばグチに参加していた――。こんな経験を持つ人も多いのではないかと思います。

ちなみに同調の現象は、「多数派が一斉に同じ意見を主張している」ことがポイントになります。実は先ほどの実験でも、自分以外のメンバーのうち誰か1人でも正しい線を選択していれば、同調の確率は激減するのです。「職場のグチ」においても、自分以外の誰か一人でもグチに加担しない人がいれば、グチへの同調に全体の流れが持っていかれてしまうことは防げます。

つまり、組織内にある程度の人数がいて、多様な意見を認める職場の場合は、グチ蔓延のリスクは低下するのです。一方で、風通しの悪い少人数の職場では、いったん誰かの口からグチが出ると全員の同調が急速に蔓延し、職場環境が悪化しやすくなると考えられます。

一人の「革新」で、あきらめモードの流れは変えられる?

職場の仲間

あきらめムードの職場でも「私はこんな職場にしたい」と言い続ければ、職場環境は変えられる!

ところで、グチの蔓延する職場環境自体が嫌で変革を起こしたいとき、個人ができることはあるのでしょうか? ここで、ぜひ知っておきたいキーワードが「革新」です。

心理学者のモスコヴィッチらが行った「色」に関する実験によると、一般的に「青」に見える色を集団に提示したとき、少数のサクラが「これは緑だ!」と一貫して主張し続けると、実験参加者の8.42%がその意見に影響され、「緑」と回答することが分かりました。このように、集団内では逸脱した少数派の意見であっても、一貫して同じことを主張し続けることによって、多数派に影響を与える現象を「革新」と呼びます

この実験結果を応用すれば、既にあきらめムードが蔓延しきっている職場で、一貫して「職場を良くしよう」「この仕事ができて楽しい!」と主張し続ける人がいれば、「革新」が生じる可能性が高まるわけです。

あなたなら、“あきらめムード”に巻かれて「同調」を続けますか? それとも、「革新」の一歩を踏み出しますか? 選ぶのはあなた自身です。
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