休職するかを決断するのは自分自身…

疲れた会社員

休職を決断するのは自分自身。心身の健康を守るためにも、「休職」という選択肢があると意識しておくことは大切です

突然ですが、質問です。あなたが「会社を休むかどうか」を決めるのは誰だと思いますか? 社長? 人事担当者? それとも直属の上司でしょうか?

正解は、「あなた自身」です。まずは私から、「会社を休むこと」はあくまでも「あなたが決めていい事なのだ」ということをお伝えしておきたいと思います。

もし、高ストレス状態から心と体に異変があり、限界を超えそうだと感じたら、休職という選択肢を取り、自分の身を守ることは極めて重要なことだからです。

とはいえ、会社と労働契約を結んでいる以上、安易な考えでむやみに休まない方がいいことも大前提です。そこで今回は、「休職したい」と思った時にどうするべきなのか。ストレスがかかったときに出てくる心と体の症状や、症状が出ることを未然に防ぐための対処法などを交えながら、「休職したいと思った時に気をつけたいこと」について産業医・心療内科医の立場から、お話します。

休職すべき? 高ストレスで起こる心と体の症状・進行

人間関係の悩みを抱えていたり、長時間労働などで身体的な疲労がたまっていたりするビジネスパーソンは、知らず知らずのうちに、日常的にストレスにさらされた状況に陥りがちです。ストレスがうまく解消されず、蓄積され続けると、心や体に異変が現れ始めます。具体的にどんな変化がおきるのか、順番を下記にまとめました。キーワードは「ゲイツ心配おねしょ」。これは、私が覚えやすいようにゴロ合わせ風に考案したもので、実在する人名とはもちろん関係ありません。講演会などでお話すると、その状況を想像されるのか、クスッと笑われる方が多いのですが、言葉の意味は下記の通りです。

ゲ :元気が出ない
イ :イライラする
ツ :疲れやすい
心配:心配性になる
お :起きられない
ね :寝られない
し :症状(めまい、頭痛、動悸、食欲不振、軟便)
よ :抑うつ(億劫、行動に移せない、興味の喪失)

※高ストレスによる心と体の症状は、原則この順番で起こりますが、症状に関しては初期状態でも併発する場合があります。

最初の「ゲ:元気がない」。これは想像しやすいかもしれませんが、なんとなく疲れが取れない、元気が出ない状態です。多くの人が体験したことがあると思いますので、それがストレスによるものなのかは判断しにくいかもしれません。しかし、それが日常化している場合、もしかしたらストレスによるものかもしれません。

次に「イ:イライラする」についてですが、スケジュール通りに業務が進められていなかったり、多くの仕事が立て込んでいたりすると、心に余裕がなくなり、イライラする状態に陥りやすくなります。イライラするということは、平常心とは違う状態にあるということなので、ここでもストレスを感じていると言えるでしょう。

3つ目の「ツ:疲れやすい」は、徹夜明けなど特殊な状況では無いにも関わらず、体のだるさが続いたり、座っているだけでも疲れを感じたりします。朝起きて疲れが取れていない状態が1週間以上続いている場合、これもストレスによるものかもしれません。

この中で、少し分かりにくく、対処が必要な重要なラインともいえる「心配性」ついて、詳しくご説明したいと思います。

「心配性」とは、一つのものごとが気になって他のことが考えられなかったり、業務が予定通り進まないことが心配で、仕事のことが頭から片時も離れないような状態のことです。元々の性格の人もいると思われる方もいらっしゃるでしょう。そういう方と区別するには、具体的に仕事に影響が出ているかで判断することができます。

例えば、ルーティンの慣れた仕事で今までは30分で終えていたものが、確認作業や直しが増え60分かかるようになってしまった場合など、仕事の効率が明らかに悪くなってしまっている。一つのことが気になってしまうあまり、挨拶されても気づかず無視してしまう。会議中でも人の会話の内容が頭に入らずコミュニケーションがうまく取れないなどの事象が挙げられます。また意外かもしれませんが、メールの内容に誤字脱字が多く、うまく改行がなされていないというような事も、高ストレス状態による「心配性」からくるものと言えます。「え? こんな事が?」と思われるかも知れませんが、これは、完全に心に余裕がなくなり、以前はできていたメールの受け取り手への配慮が出来なくなってしまった故に起こる事なのです。

そして「心配性」がさらに悪化していくと、常に考え事をしており緊張状態が続いて「お:起きられない」「ね:眠れない」「し:症状(めまい、頭痛、動悸、食欲不振、軟便)」など、普段の生活にまで影響が出てきます。人が高ストレス状態に耐えられるのは3ヶ月くらいがひとつの目安で、そのまま進行すれば最悪の結果、「よ:抑うつ」の状態に陥ってしまいます。ここまで進行してしまうと、休職という選択肢を取らざるを得ません。

つまり、「心配性」は抑うつ状態=休職に近づいているという重要なサインで、早急に対応が必要なのです。先ほど挙げたような事象を周囲から指摘されることがあるようならば、自分が高ストレス状態にあることを疑ってみる必要があるでしょう。

状況が改善する可能性も…休職前に試すべき「2つの相談」

それでは、抑うつ状態=休職を回避するためには、どうしたらよいのでしょうか。それは、異変として現れている心や体からのアラートに早い段階で気づき、悪化を食い止める事が重要です。しかし、自分の状態を客観的に把握することは容易ではありません。そこで、自分のことを俯瞰的に見るための2つの方法をご紹介しましょう。

1. 人に相談して客観性を取り戻す
人は誰でも、焦りを感じ追い込まれている時や自身のコンディションが悪い時は、「客観性」を失います。すると「どうすることもできない」「上司が理解してくれるはずない」となり、休職の二文字が頭に浮かびがちになります。これは断言出来ますが、ストレスに関してのセルフケアは難易度が高く、視野が狭くなってしまっていることに、自分で気づくことは絶対にできません。

そこで、一つめの有効的な手段となるのが「人に話を聞いてもらう」ことです。同僚、友達、家族、もちろん私のような医師でも構いませんが、話してみると、自分の悩みが整理され、状況を俯瞰的に見る(客観視する)ことができる場合が多いものです。そうすることで、自分の思い悩んでいた事は、思うほど大きな問題ではなかったことに気づき、解決策が見出せる場合もあるのです。

また、周囲の人はあなたのことを冷静に見てくれています。自分が想像している以上に周りの判断は正しく、自分の状態を的確に指摘してもらえます。ぜひ、友人など周囲の人に相談してみてください。

2.上司に相談し、悩みを認識してもらう

もう一つの方法は、自分の異変を上司に知らせ、掛け合うというアクションを取ることです。

上司に自身のコンディション悪化を知らせることにより、仕事上の配慮(時間外業務の考慮や業務量の調整)をしてもらえる可能性があります。上司が人事に相談してくれることにより、配置換えなど新たな活路が開けることもあります。

私が患者さんから相談を受け、「上司に相談すること」を勧めると、ほとんどの方から「上司も忙しくて話す時間がない」「話したところで、どうせ理解してくれない・対応してくれない」というような返事をする方が非常に多くいらっしゃいます。これも視野が狭くなり客観視が出来ていない時によくある思い込みで、「それでも一度話してみて」と促してみると、実際は上司が動いてくれたというケースも少なくありません。私の感覚では、上司に相談することで約7割というかなり多くの割合の方が、なんらかの対応をしてもらい、休職することを回避できています。

残りの約3割、話はしたものの上司が対応してくれないという方は、「○月までに対応してくれなかったら休職もしくは転職を検討しよう」など「期限を決めること」が重要です。そして、その期限までに対応がなされなければ、ストレスの原因となっている状況から離れるべきです。それが休職という手段であっても、自分の身を守ることを最優先にして下さい。

いま、この記事を読んでくださっているあなたが、もし会社での生活に悩みがあり休職を考えているとしたら、まずは自分の心と体の状態を認識し、それを解決するためのアクションを起こす勇気を持ってみてください。そして、最後は「自分で休職という選択肢も含めて決断していいんだ」という意識を持っていただけたらと思います。そして、少しでも多くの人が健康に働けるようになることを祈っています。
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