建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

木の温かみのある2世帯住宅[関町北の家]

アトリエスピノザが手掛ける建築実例をご紹介します。1階に親世帯、2階に子世帯が住む、完全分離型の2世帯住宅です。両世帯が坪庭を取り囲むことで、それぞれの家族がお互いのプライバシーを守りながらも、常に気配を感じあえる絶妙な距離感を保っています。

執筆者:川畑 博哉

最寄りの私鉄の駅から徒歩2分という好立地に、親世帯と子世帯が1階と2階に分かれて住む2世帯住宅が建っています。完全分離型でありながらも、プランニングの工夫によりお互いの気配を感じながら暮らせる住まいになっています。

街に溶け込むシックな外観

Sさん一家とご両親が住む2階建ての住宅は、道路に面した広めの駐車場の奥にあります。正面は淡いベージュ色の壁面と約1mセットバックした玄関まわりの木張りの壁のシンプルな組み合わせ。個性的でありながら控えめな外観は、さりげなく街に溶け込んでいます。

外観
北側の道路から長いアプローチが延びる。母屋の手前は4台分の駐車場になる。写真:アトリエスピノザ
外観
東側のヒバ堅羽目板張りの外壁に2世帯の玄関が並ぶ。玄関ポーチは玉砂利洗出し仕上げ。写真:中村 絵
外観
2階の東南の角の開口はバスデッキ。外壁からセットバックした玄関まわりは、上部が庇の役割を果たしている。写真:アトリエスピノザ
外観
南西の角に造られた親世帯のテラス。2階の大きな庇の下は子世帯のテラス。写真:中村 絵
テラス
子世帯のテラスから見た親世帯のテラス。デッキと木製フェンスはセランガンバツ材。写真:アトリエスピノザ

子世帯の高い天井が自然光を導きいれる

Sさん一家の玄関はポーチの南側にあります。正面の木製の階段を上がり回り込んで2階に至ります。まず目に入るのが高さ約4mもある勾配天井です。上部のハイサイドライトから自然光が入り込み、空を眺めることができます。

北西の角にキッチン、西側にテレビ台、東側に家の真ん中にある約1坪の坪庭、南側にウッドデッキのテラスが配されていて、ここから階下の両親の気配を感じることができるのです。

玄関
子世帯の玄関。正面の扉は階段下収納の入口。右は個室。写真:中村 絵
 LDK
天然木のフローリングの子世帯のLDK。木張りの天井は最も高いところで約4mになる。写真:アトリエスピノザ
台所
セミオープンのキッチン。カウンターのトップはコーリアン(人工大理石)。写真:中村 絵
テラス
キッチンから坪庭と南側のテラスを見る。写真:アトリエスピノザ
テラス
坪庭の奥は子供室と寝室。天井下の大きなハイサイドライトからLDKに朝日が入り込む。写真:アトリエスピノザ

バスルームで露天風呂感覚を楽しむ

部屋のほぼ真ん中には約1坪の坪庭が設けられていて、ここも階下の親世帯の坪庭とひと続きになっています。ここは両世帯に自然光と風を導き入れる役割を担っています。

バスルームは東南の角のバスデッキとガラスの引戸で仕切られていて、戸を開ければバスタブに浸かりながら空を眺める露天風呂感覚を楽しむことができるのです。

坪庭
坪庭からガラス窓越しにLDKを覗き見る。写真:アトリエスピノザ
テラス
大きな庇の下の南側のテラス。外壁はヒバ堅羽目板張り。写真:中村 絵
洗面
ガラスの扉で仕切られた洗面室とバスルーム。青い壁面は2cm角の磁器質モザイクタイル張り。写真:中村 絵
風呂
バスルームから東南の角にある1坪のバスデッキに出る。床はセランガンバツのウッドデッキ。写真:中村 絵
子供室
北側と東側に窓のある片流れの天井の子供室。広さは約6帖。写真:アトリエスピノザ 

空間の広がりを演出する親世帯のテラス

親世帯のメインルームは約15帖のLDK。玄関からは坪庭からの自然光に迎えられてここに至ります。天然木のフローリングのリビング・ダイニングは、集成材の梁を現しにした天井が空間のアクセントになっています。北側にキッチンが配され、南側には木製フェンスに囲われたテラスが続き、空間をいっそう広く感じさせます。

2階の南側は書斎。本棚が壁面いっぱいに造り付けになっていて、家族の本がぎっしり詰まった様はまるで図書室の趣です。上部は天井の高さを活かしてグレーチングを敷いたロフト空間になっていて、主に収納として使われています。

玄関
親世帯の玄関。左手にはシンプルなデザインの木製の手摺が造り付けになっている。足元は玉砂利洗い出し。写真:中村 絵
居間
親世帯のLDK。東側の壁面に収納を兼ねたテレビ台、天井近くにエアコンを組み込んだ収納が造り付けになっている。写真:アトリエスピノザ
中庭
リビングからテラスを望む。ガラス引戸の上部の間接照明が室内を明るく照らす。写真:アトリエスピノザ
居間
リビングの南西側を見返す。北側に坪庭と玄関のアプローチが見える。写真:アトリエスピノザ
中庭
背後にカウンターが造り付けになったキッチン。写真:アトリエスピノザ


この家は親世帯と子世帯が独立した玄関を持ち、1階と2階に分かれて暮らす完全分離型です。しかし南側のテラスや家の真ん中にある坪庭によって、両世帯が付かず離れずのちょうど良い関係を保つことができる、理想的なプランニングの家なのでした。

[関町北の家]
所在地: 東京都練馬区
構造・規模: 木造 地上2階
竣工年月: 2015年5月
敷地面積: 202.08m2
建築面積: 86.26m2
延床面積: 152.35m2
設計・監理: アトリエスピノザ/井東 力 市原香代子
構造設計: 本岡構造設計


井東 力+市原香代子[アトリエスピノザ]プロフィール

共に現代建築研究所で「東京国際フォーラム」のインテリア設計などで建築の実務を経験し、2004年に事務所を設立。これまでに首都圏を中心に数多くの戸建て住宅を造り上げてきました。“快適で住み心地の良い住宅を創りたい。その上で「快適さ」、「心地良さ」を深く掘り下げ追求していきたい”との思いで設計活動に邁進してます。

アトリエスピノザ
Tel.03-3759-3185
http://atelier-spinoza.com/

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   井東力 [Ito Chikara]     市原香代子 [Ichihara Kayoko]


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