ストレス

5.81倍も変わる!?風邪予防にも重要なストレス対策

平均して、人は1年に2~4回風邪をひくと言われています。そして同じ風邪ウィルスを吸ってしまった場合でも、強いストレス環境下におかれていた人ほど「5.81倍」感染しやすかったという有名な研究があるのです。正しいストレスマネジメントは、有効な風邪予防法でもあるのです。風邪とストレスの関係と、上手なストレス対策法を解説します。

山田 洋太

執筆者:山田 洋太

医師 / 働くひとの健康ガイド

ストレスが高いときには風邪をひきやすい?

ビジネスマンと風邪

大事な仕事や試験などを控えて忙しい状態が続くと、肝心なときに風邪をひいてしまうことがあると思います。ストレスと風邪のひきやすさには、実は本当に関係があるのです

一般的に、人は平均して1年で2~4回風邪をひくと言われています。皆さんも、仕事が忙しいときや大事な試験や商談を控えてストレスフルなときに、最悪のタイミングで風邪をひいてしまったことはありませんか? たかが風邪でも、熱でいつもの調子が出せなかったり、頭痛がつらかったり、咳で眠れなかったりと、日常的なパフォーマンスが大きく下げられてしまい、つらいものです。大事なときに限って風邪をひいてしまうのは、ストレスも関係しているのでしょうか? 今回は風邪予防法としても重要なストレス対策について解説したいと思います。

風邪ウィルスの種類で症状の強さは変わる

働くひとが会社を休む原因として、最も多い「風邪」。症状の強さは、人によっても風邪ウィルスによっても異なります。

風邪ウィルスには200を超える種類があり、鼻水、鼻閉感、咽頭痛、咳、熱、眼の充血などの様々な症状をきたします。一般的に、1つのウィルスのみに感染することで発症し、同時に複数のウィルスに感染することはほとんどありません。また、風邪ウィルスには抗菌薬(いわゆる抗生物質)による治療は効果がありませんので、服用する薬には注意が必要です。風邪ウィルスの中でもダントツにひとからひとへの感染力が高く、症状の強いウィルスは「インフルエンザウィルス」です。

気になるストレスと風邪の関係

それでは風邪とストレスには、関係はあるのでしょうか?

1990年代はじめの研究でも、風邪とストレスの関係を報告しているものが複数あります。その中でも『NEJM』という雑誌における研究で、394名の健康な人に5種類の風邪ウィルスの入った液体を鼻から入れたという有名な研究があります。もちろん被験者に同意が取られた上での研究です。その後、過去1年ストレスを経験した人と比べ、被験者の風邪ウィルスへの感染しやすさ、感染後の症状の強さがどういう関係になるのかについて調査されました。

結果は予想通りのものです。強いストレス環境下におかれていた人ほど、風邪ウィルスに5.81倍感染しやすく、2.16倍症状も強まるという結果でした。ストレスによって免疫が低下することにより、風邪ウィルスに感染しやすくなり、症状も強まることが明らかとなったのです。

ストレス・マネジメントをすることが最良の風邪予防法

風邪をひきやすくなるストレスをマネジメントすることは、風邪予防の最良のアプローチといえるでしょう。

この1ヶ月で繰り返し風邪をひいてしまった方、風邪症状が長引いていると感じる方は、ストレス・マネジメントの取り組みも検討してみて下さい。

ストレス・マネジメントのアプローチとして、次の3つ方法があります。
  1. ストレスへの認知を変える
  2. ストレスを解消させる
  3. ストレスを回避させる
です。

1は、ストレスというものの捉え方を変えるアプローチです。「ストレスは悪いものだ」という考え方をもつこと自体が、身体への負担となってしまいます。ストレスを感じている状況は解決されていくことが少なく、悪化傾向になってしまう場合もあるでしょう。しかし、今回のストレスは確かに辛いし、キツイし、逃げ出したいが、これを乗り越えられれば自分の成長につながる大きなチャンスだという別の捉え方に変えていくことが大切です。以前解説した「キラーストレスとは何か」の記事も是非ご覧ください。

2は、以前紹介した「趣味がない人が試すべきリフレッシュ法」の記事を参考にして下さい。様々なリフレッシュ方法があり、自分の引き出しにしておくことで様々な状況でストレスを解消せることが可能になります。

3は、ストレス自体を遠ざける、避けるという対処です。1や2をやり続けてもどうしても身体が持たないという場合もあります。そのようなときに、ストレスで風邪をひいてダウンしてしまった場合は、悪循環の始まりです。こういうときは、しっかりと休みをとって、たっぷりの睡眠でコンディションを整えましょう。

日常に取り入れたい手軽な風邪予防法

もちろん、ストレス対策以外にも、様々な風邪予防法があります。例えばですが、昔から言われているもので、「にんにくやビタミンCを多く摂ると風邪をひきにくい」というものがあります。これらはとても手軽な方法ですが、最近の研究でも、にんにくやビタミンCを日常的に摂取することで、実際に風邪の予防効果があることがわかってきました。にんにくは、風邪症状の出現を67%減らし、風邪の症状を1日分期間短縮させる(4.63日vs.5.63日)効果があることがわかっています。また、ビタミンCは毎日200mg摂取すれば、身体的な負荷の強い仕事(マラソン選手など)では風邪の発生確率を半分に減らすと言われています。ただし、風邪をひいてから急に飲みはじめても効果は限定的と言われています。働いているひとが日常的に、にんにくやビタミンCを摂取することは科学的な観点からも風邪予防に効果があるかもしれません。

日常的なストレス対策とあわせて、これらの方法を試しながら、自分にあったものを上手に取り入れていくのもよいでしょう。

最後に

慢性的に強いストレスを抱えていると、風邪にかかりやすく、その症状も長引いてしまいます。さらに、風邪をひいたこと自体がストレスになって、さらに状況を悪化させてしまうことさえあります。だからこそ、日常的にストレスそのものを上手にマネジメントする必要性があるのです。

【参考文献】
N Engl J Med 1991, “Psychological Stress and Susceptibility To The Common Cold”
Cochrane, 11 November 2014 “Garlic for the common cold”
Cochrane, 31 January 2013 “Vitamin C for preventing and treating the common cold”
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