ストレス/家庭・育児・嫁姑・義理づきあいのストレス

ストレス減!子供の行為を「無視」すべきケースと方法

子どもの悪ふざけをやめさせるために、連日しなければならない注意や叱責。子育てにおいて多くの親が強いストレスを感じるようです。実はその対処法こそが、悪ふざけを助長させている可能性があります。悪ふざけが自然に治まり、子育てのストレスを緩和させることができる、接し方のポイントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

 何度叱っても悪ふざけをやめないのはなぜ?

ふざける男の子

「やめなさい」と何度注意してもやめない…。そもそも、その「注意」が悪ふざけを助長しているのかも?

何度注意しても悪ふざけをやめない子、決めたことをやらないで、好きなことばかりやっている子。こうした子どもに、親は年中小言を言い、「やめなさい!」「早くしなさい!」と叱りとばしてしまうものです。しかし、実はこの親の態度が、子どもの好ましくない行為を助長しているかもしれない。そんな可能性にお気づきですか?

一例をあげましょう。主婦のYさんのお宅には、7歳の男の子がいます。その子はとてもやんちゃで、悪ふざけばかりしているので、Yさんはヘトヘトです。お風呂から出た後には、いつも裸のままバスタオルをマントのように羽織り、「おちんちん仮面だ~」と奇声をあげながら走り回っています。「風邪ひいたらどうするの!」「早くパジャマを着なさい」と何度注意しても聞きません。毎日そんな状態なので、Yさんはいつもイライラして怒鳴りつけ、自己嫌悪に陥っています。

7歳の男の子なら、家庭の中でこんなかわいい姿を見せることもあるでしょうね。でも、忙しいときに何度も注意してもやめないと、さすがに疲れ、嫌気が差してしまうでしょう。こんなとき、どう接すれば、子どもは自然にやめてくれるのでしょうか?

行為への「注目」が、子どもの快感につながっている

子どもが悪ふざけをやめないのは、親が「観客」になってしまっているからです。親という権威者の注目を勝ち得、困惑させている――悪ふざけの演者である子どもにとって、これほどの成功と快感はないでしょう。小言を言われることなど、へっちゃらです。怒られれば怒られるほど、注目される快感が高まり、好ましくない行為を続けたくなってしまうのです。

では、Yさんはどうするべきだったのでしょうか? ここで上手に行うべきなのが「取り合わないこと」。平たく言えば「無視」なのです。「無視」という言葉からはネグレクトをイメージし、罪悪感を覚えてしまう人も多いかもしれません。しかし、あくまでも無視をするのは、子どもの“存在”ではなく、好ましくない“行為”の方です。

「報酬」を与えなければ、「好ましくない行為」は減る

といっても、いきなり無視をしていいわけではありません。このケースの場合、まずその場で真剣に注意を伝えます。子どもの正面に座り、目線を合わせて「裸で走り回るのはやめなさい」と伝えます。「そんなことをしたら風邪を引いてしまうし、そもそも恥ずかしいことです」という理由も伝えます。「分かった?」と確認して「はい」と同意を得られたら、その後は子どもの意思に任せます。

もちろん、1回注意したくらいでは、たいてい悪ふざけを繰り返すでしょう。ここからが勝負です。怒られた理由を理解している子が悪ふざけを繰り返すのは、注目という報酬が欲しいため。だからこそ、その報酬を与えない――悪ふざけという行為を「無視」するのです。

観客もいないのに、1人でふざけることほど、馬鹿馬鹿しいことはありません。「おちんちん仮面だ~」と走り回っても見向きもされないのでは、やりがいを感じず、そのうち恥ずかしさが湧いてくるものです。こうして、親がぶれずに、その行動に取り合わない(無視する)ことにより、子どもはひとりでに悪ふざけを止めるようになります。親は、何ごともないかのように、黙々と家事をしたり、テレビを見続けたりするといいでしょう。すると、子どもは自分から悪ふざけをやめていきます。

そして、子どもがその行動をやめて、自分でパジャマを着始めたりしたら、「着替えてくれてありがとう!」と、サンキュー・メッセージを送ります。好ましくない行為は無視し、好ましい行為には注目する。そして、好ましい行為を自発的にしてくれたことに感謝の気持ちを送る。この「無視」と「感謝」をセットにすると、子どもの好ましくない行為が減り、好ましい行為が自然に増えていくでしょう。

信頼関係が築かれていないのに、「無視」をしてはいけない!

抱きあう親子

行為を無視する前に、まずは親子の信頼関係をしっかり築いていることが大切

ただし、この方法が発揮するのは、親子間に十分な信頼関係が築かれていることが前提です。信頼関係が築かれていないのに、子どもの行為を無視していると、子どもは親の愛情不足に絶望し、心を閉ざしてしまいます。つまり、子どもは「自分の“存在”を無視されている」と受け取ってしまうのです。

そもそも、身近な大人との信頼関係を実感できない子は、「好ましくない行為」をたくさん繰り返します。暴れたり、罵声を浴びせたり、噛んだり、叩いたり……。これらは「試し行動」と呼ばれ、愛情に不安を感じた子どもが、「自分という“存在”に注目してほしい」「どんなことをしても変わらずに愛してほしい」というアピールをする行動です。したがって、子どもが「好ましくない行為」をしているときには、どういう意図でそれをしているのかを、よく見極める必要があります

試し行動で「好ましくない行為」を続ける場合、真正面からその行為を受け止め、「大丈夫、どんなことをしても君を愛してるよ」というメッセージを送り続けることが必要です。暴れる体を制しながら、ギュッと抱きしめてもいいでしょう。そして「危ないことはしない」というルールもきちんと伝え、約束をすることです。

こうしたぶれない愛情、ぶれないルールを伝え続けていくうちに、子どもは「自分の“存在”は認められている」という実感をつかむことができます。この実感こそが、他者との信頼関係をつくり、人生を前向きな気持ちで生きていくための最も基礎的な“心の土台”になるのです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます