定年・退職のお金/老後資金の貯め方

リスク資産のポートフォリオはシンプルに考える

新興国の経済発展と、それに伴う海外での需要増によるインフレ。あるいは、円安に伴う国内物価の上昇。こうしたインフレ要因として想定されるものに対するヘッジ手段について考えてみます。

鈴木 雅光

執筆者:鈴木 雅光

投資信託ガイド

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老後資金の運用はシンプルに考える

老後の資産運用の注意点

老後の資産運用の注意点

前回、新興国経済の発展や円安によって生じるインフレリスクへの対策として、コモディティや株式に投資するのが良いのではないか、と申し上げましたが、問題はそこから先ですね。

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コモディティ、株式といっても、具体的に、何を買えば良いのか、という点で迷う方は多いと思います。

ここで大事なのは、何事もシンプルに考えることです。分散投資は大事ですが、あれもこれもというように手を広げてしまうと、投資している金融商品の数ばかりが増えてしまい、資産管理に苦労することになります。幅広い資産に分散させている効果は得ながらも、実際に投資している金融商品の数は最小限に抑えた方が、資産管理のしやすさでも、コスト面でも有利になるはずです。

MSCIコクサイ連動型インデックスファンドで海外投資は十分

たとえば先進国の株式市場に分散投資させるにあたって、日本の個別株式、米国の個別株式、欧州の個別株式などというように資金を分散させたら、恐らく一個人でそのポートフォリオを管理するのは不可能でしょう。なので、そのポートフォリオをパッケージ化した投資信託を利用するのが、一番リーズナブルです。

また海外株式に投資する場合、比較的値動きの幅が小さい先進国株式か、ハイリスク・ハイリターンな新興国株式かという選択肢があり、両者に分散させるのが模範的な考え方ではあるのですが、2006年7月から2016年7月までの10年間で、先進国株式と新興国株式の相関係数を計測すると、+0.89という数字が出てきます。一般的には+0.70~+1.00までが強い正の相関係数といって、ほぼ同じ値動きをすると考えられています。

つまり、相関係数が+0.89ということは、ほぼ同じ値動きになるので、流動性リスクや政治リスクなどに影響されにくい先進国株式だけを保有すれば良いと考えられます。ちなみに先進国株式は、MSCIコクサイというインデックスに連動する投資信託を1本持てば十分でしょう。

ちなみにMSCIコクサイには日本株が含まれていませんから、それは別途、TOPIXなどに連動するインデックスファンドと組み合わせます。

リスク資産ポートフォリオの完成形とは

コモディティは貴金属、エネルギー、食糧など、これまた種類が多岐にわたっていますが、インフレリスクのヘッジ手段としては、金を持てば良いでしょう。これも、現物を買うのではなく、金のETFで十分に代用が効きます。ちなみに金と国内株式の相関係数は+0.13なので、これは相関性がない(同じ値動きにならない)ことを意味しますし、先進国株式との相関係数は+0.24で、相関性はあるものの、他の資産に比べて低く、多少の分散投資効果は狙えそうです。

このように考えると、TOPIX連動型のインデックスファンド、MSCIコクサイ連動型のインデックスファンド、金価格に連動するETFの3つに分散投資すれば、リスク資産のポートフォリオは、ほぼ完成形に近いと考えられます。

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