トイトレは粗相や執着の繰り返し…ママはイライラしっぱなし?
トイレトレーニングは、子どもの心に大きな影響を与える大切な発達段階
しかし、このトイレトレーニング、まず親の理想通りには進まないものです。子どもは、おむつを外してパンツに替えたそばからおもらしをし、服や床をたびたび汚してしまいます。トイレや排泄物にやたらと興味を示し、トイレから一向に離れようとしない子もいます。便器に座らせてみても、うんうん唸るだけで一向にうんちを出さない子も……。
毎日こうした子どもに対応していると、親はついイライラしてしまいます。そのため、粗相をするたびに「何やってるの、汚い!」とつい強く叱ってしまったり、排泄が進まない場面や排泄物に執着する場面で、「早くしなさい。どうしてちゃんとできないの!」と急かしてしまったりする場合があります。
2~4歳は「肛門期」? 排泄に執着するお年頃
しかし、精神分析の創始者であるS.フロイトは、この2~4歳頃の子どもの発達段階を「肛門期」と呼び、トイレトレーニングを通じて親があまりに厳しくしすぎると、その子どもの性格に後々大きな影響が現れてしまうと説明しました。では、まずこの肛門期の時期に子どもは何を考え、どんなことにこだわっているのでしょう?
この時期の子どもは肛門の括約筋が発達するため、おなかのなかに、ある程度便を溜めておくことができるようになります。そして、排泄の欲求や排泄の感覚も自覚できるようになるため、「うんちが出そう」「出るとスッキリする」といった感じを体感できるようになります。
しかし、まだ排泄の欲求と排泄のタイミングを上手に合わせることができないため、失敗を繰り返してしまいます。また、同時に排泄物にも関心が向かうため、出したうんちをいつまでも見つめていたり、「うんち」にまつわるお話や発言も大好きになります。
トイレトレーニングを厳しくすると「肛門性格」に!?
S.フロイトの説では、このときに大人が強く叱りすぎたり、「もらさないように」「早くトイレを済ますように」「はしたないことをしないように」と厳しくしつけをしすぎてしまうと、子どもは排泄の感覚や排泄の行為、排泄物への関心を心ゆくまで経験することができず、排泄にまつわる不安や欲求不満を引きずり、独特の性格が形成されてしまうとされています。その独特な性格とは、糞便を溜めこむときの感覚に親しむようにお金を溜めこみ、過剰にケチな性格になってしまうということです。また、つまらないことと分かっていながら、一つのことに過剰にこだわり、そのことを考えたり行動したりせずにはいられない、強迫的な性格になりやすいとも言われています。
精神分析では、このような肛門期の発達段階に固着した性格を「肛門性格」と呼びます。
「厳しいしつけ」が子どもの心に与える影響とは?
「不安」と上手に付き合える子に育てるために、必要なこととは?
トイレトレーニングに限らず、幼児の頃に大人に厳しく叱られて育つと、不安な感情を引きずりやすくなるとされています。これは、幼児期の子どもの脳がまだ十分に育ちきっておらず、大人のように叱られても適当に受け流したり、相手の言葉の裏にある感情を読み取るような、高度な判断や行動をとることができないためです。
したがって、幼児期に大人からいつも否定されたり、頭ごなしに叱られたりして育った人は、大人になっても、意味もなくささいないことに不安を感じやすくなり、その不安を上手に処理することができなくなってしまうことがあります。そして、不安をすぐに振り払おう、不安をすぐになくそうとするあまり、強迫的な考え方や行動に走りやすくなってしまう場合があるのです。
幼児期のしつけは、「指導」と「受容」のバランスが重要
もちろん、自立的に排泄できるようになるには、トイレトレーニングを継続的にしっかり指導していくことが必要です。「ひとりでトイレができること」は子どもが社会で生きていくための、大切な通過点です。したがって、この時期の子どもをしつけるには、「指導」と「受容」のバランスが大切なのです。たとえば、粗相をしたり、排泄にこだわったときには厳しく叱らず、かといって「やりたい放題」にはさせておかないこと。失敗した気持ちやこだわりたい気持ちを受け止めながら、「次はトイレでしようね」などとトイレトレーニングの課題をきちんと意識させること。排泄物にこだわりすぎたときには、その気持ちを受け止めながら、さりげなく他のことに気持ちをそらせてあげること――。このように、トイレトレーニングを進めながら、排泄を通じた子どものデリケートな感情にも応じていくことが必要です。
排泄は、私たち大人が毎日何気なく行っている行動ですが、子どもにとってその行動に取り組むことは、心の発達の面でも大切な課題なのです。そんな子どもの発達課題やデリケートな感情を理解し、上手に対応していきましょう。
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