食と健康

朝ごはんを食べないのは絶対NG!理由と朝食習慣化のコツ

【管理栄養士が解説】「朝食抜き」という健康法を試している方もいるようですが、文科省が続けている「早寝早起き朝ごはん」キャンペーンや各研究からも見られるように、朝食には大きな健康効果があります。朝ごはん抜きがよくない理由と朝食の健康効果、楽しく習慣化させるコツをご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

「朝食は食べなくてもよい」という健康法は誤りです

朝ごはんを食べないのがNGな理由と朝食の健康効果

「早寝早起き朝ごはん」が推奨され、国の予算で10年もキャンペーンが続けられてきたことからも、朝食の大切さがわかるのではないかと思います

昔から「朝ごはんは身体にいいから食べなさい」といわれます。「朝ごはんは食べないほうがいい」とする「朝食抜き」の健康法なども一部で耳にしますが、残念ながら管理栄養士から見ると、それは完全な誤り。栄養士だから青写真をそのまま押し付けようとしているのでしょ?と思う人もいるかもしれません。ですが、私は患者様の思いを大切にすることをモットーとした栄養士です。

「朝ごはんを食べたくない」という患者様に対しても、もし他の代案があるなら、それを提案し、無理強いをすることはありません。そんな私が「朝ごはんは食べなさい」と言うのです。代案はありません。朝ごはんを食べないなんてもってのほかなのです。
 

朝ごはんを食べない子どもより、食べた子どものほうが学習成績がよい

こんな話を聞いたことがある人はいませんか? 「朝ごはんを食べた子どものほうが成績がいい」。ご冗談を!と思うかもしれません。同じ子どもは2人いませんから、信じられないかもしれません。

しかし、私の恩師・女子栄養大学副学長の香川靖雄教授が古巣である自治医科大学の学生たちを「朝ごはんを食べた群(A群)」「朝ごはんを食べていない群(B群)」に分けて、簡単なテストを行ったところ、やはり「朝ごはんを食べた群(A群)」のほうがテストの成績がよかったのです。後日、「朝ごはんを食べた群(A群)」を「朝ごはんを食べなかった群(A群)」に、「朝ごはんを食べなかった群(B群)」を「朝ごはんを食べた群(B群)」として同様のテストを行ったところ、「朝ごはんを食べた群(B群)」のほうが成績がよかったというのです。

他にも、5歳児に「三角形」を書かせると、朝ごはんを食べた子どものほうがしっかりした三角形を書けるといったデータもあります。

これだけ見ると「テストの前にだけ食べればよいのでは?」とか「体力がつくなら食べさせる価値もあるけど……」と考える人もいるかもしれません。しかし、「早寝早起き朝ごはん」運動のWebサイトによると、朝ごはんを毎日食べている子どものほうが、国語、算数ともに成績が最もよく、どちらかというと食べる、あまり食べない、全く食べないの順に成績が下がっていることがわかります。体力測定の結果も同様です。

この結果は、なぜ起こったのか? それは「朝ごはん」を食べることで、脳にエネルギー源であるブドウ糖が送り込まれるからと考えられます。子どもの脳を測定した大規模なデータは残念ながらありませんが、脳にブドウ糖が送り込まれない状態では、脳の発達にも大きく差が出てもおかしくはありません。大人にとっても子どもにとっても、朝ごはんは重要なのです。
 

朝ごはん習慣をつける第一歩!「睡眠」から変えることが大切

特に育ち盛り、学び盛りの子どもには重要な朝ごはんですが、朝ごはんを食べたがらない子どもに朝食を習慣化させるのは難しく感じるかもしれません。

子どもが朝ごはんを食べたがらない理由には、起きたばかりで眠いということだけでなく、そもそも「お腹が空いていない」ということが挙げられます。子どもの胃は小さいので、一度にたくさんの量を食べることができないのです。夕ごはんが遅かったり、夜中に間食をしてしまったりするとお腹が空かないこともあります。

時間栄養学の分野では「夕ごはんは6時までに」といわれたりもします。ただ、共働き夫妻の子どもの場合は両親のどちらかが帰宅してから夕ごはんになると思いますので、現実的に6時までに食事ができる子どもというのは非常に少ないでしょう。それでも、できるだけ早く食事を済ませれば、翌朝には消化も終わっているはずです。朝ごはんだって、美味しく食べられるはずです。可能であれば7時くらいには食事を終えて、その後は間食をしないようにして、遅くとも10時までには寝るようにすると、早起きもできるようになります。早起きができれば、朝食を食べようという気持ちにもなります。ぜひ、朝ごはんの習慣をつけるためにも早く寝ることを心がけてください。

そして、朝起きたら、カーテンを開けて朝の強い光を浴びること。これによって体内時計が「朝だ」と気づくので、朝ごはんもスムーズに食べられます。
 

朝食抜き派が「朝ごはんを食べるな」という理由は?

最近、私たち栄養士を悩ませている「アンチ朝ごはん派」の人たち。「アンチ朝ごはん派」の方の言い分を聞いてみると、
 
  1. 朝ごはんを食べなければ、その分摂取カロリーが減る
  2. 朝ごはんを食べなければ、夕ごはんから次の食事(昼ごはん)までの時間が空くので胃腸が休憩できる
この2つが挙げられることが多いと感じます。

「朝ごはんを食べない分、摂取カロリーが減る」は確かに、昼・夕のごはんの量が今までと同じで、間食もしない(または今まで通りの量)であれば、減ります。でも、子どもが朝から何も食べないでお昼ごはんまでガマンしていられると思いますか? 子どもの胃は小さいのです。しかも子どもは成長していますから、大人以上にエネルギーが必要です。ガマンしなさいというほうが、かわいそうだと思います。

「胃腸が休憩できる」も、理由としては不自然。夜中、身体が寝ている間に休憩させればよいのではないでしょうか? 午前中に休憩しなければならない理由はどこにもありません。「夕ごはんから朝ごはんを食べないで昼ごはんまでガマンすれば、胃腸が長時間休憩できる」というなら、早めに夕ごはんを食べて、夕ごはんから朝ごはんまでの時間をたっぷり空けるようにしたって胃腸は休憩できますよ。
 

やっぱり「早寝早起き朝ごはん」が健康にいいんです!

こう考えていくと、やはり「早寝・早起き・朝ごはん」の習慣をつけることは非常に重要なことだと言わざるをえません。平成18年から始まった文部科学省の「早寝・早起き・朝ごはん」のキャンペーンは現在も継続中です。文科省が国の予算をかけた国民運動として、長期に渡ってキャンペーンを続けている理由はここにあります。

他にも「早寝早起き朝ごはん」を実行するための秘訣はたくさんあります。「早寝早起き朝ごはん」全国協議会事務局のページにもいろいろな冊子が用意され、無料で閲覧できるようになっていますので、参考にしてみてください。

ぜひ、大人はもちろん全国の子どもたちに、朝食習慣をしっかりつけて、成績優秀で元気な子どもになってもらいたいものです。

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