ストレス/ストレス発散・解消法

テンションが高すぎる人は「躁的防衛」かも…ハイテンションに潜む心の危機

【公認心理師が解説】テンションが高く元気にふるまう人は、ストレスとは無縁と思われるかもしれません。ですが、不自然なまでにハイテンションにふるまう場合には「躁的防衛」という不安定な心の状態になっているのかもしれません。躁的防衛の特徴と心のバランスをとる方法を解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

テンションが高い人は、わざと明るくふるまう躁(そう)的防衛かも

テンションが高すぎる人は注意!

いつも明るく元気な自分でいたくて、ハイテンションで遊んでしまう……。それは「躁的防衛」かもしれません

ストレスが多い時期だからこそ、「120%元気な自分」でいようと頑張る。つらいときには、無理やりにでも笑顔をつくり、明るくなろうとする。このように、どんなときでもテンションを高くして明るく元気でいようとする人は、「陽キャな人」「ポジティブな人」などと呼ばれてプラスに評価されることが多いでしょう。しかし、実はそうしてテンションを上げてまで頑張ってしまうと、心に大きな負担をかけてしまうことがあります。

臨床心理学に「躁的防衛」という言葉があります。明るい自分や元気な自分を演じることで、沈んだ気持ちに蓋をしようとする無意識的な防衛行動です。緊張を強いられる場面やストレスの多い状況に負けずに頑張っていこうと無理をする人によく見られます。

たとえば、ストレスが増えるたびに仲間とどんちゃん騒ぎをして、暴飲暴食に走ってしまう。忙しければ忙しいほどさらに仕事を増やしたくなり、寝食を忘れて仕事に熱中する――。このような場合には、心が躁的防衛によってハイテンションな状態を無理につくりだし、自分自身を興奮状態に追い込もうとしている可能性があります。
 

躁的防衛のリスク……気分を上げて頑張りすぎると心身に無理が生じる

躁的防衛は、短期的なストレスを乗り越えていく際には有効です。しかし、長期的にその方法を用いていると、心身が疲弊してしまいます。

たとえば、スケジュールに穴が空かないように、分刻みで予定を入れて常に忙しい状態にする。日々の憂さを晴らすために、毎晩のようにお酒を煽るように飲み、気分を上げる。孤独な気持ちから逃れるために、毎日のように仲間たちと浮かれ騒ぐ。こうした行動を繰り返すと、精神だけでなく、体の健康や生活にも支障が生じてしまいます。
 

なぜ躁的防衛を用いるのか……まずは自分を知ろう

1人で考える女性

「躁的防衛に走るのはどんなときだろう?」―自分を振り返ってみましょう

躁的防衛によって自分の心身を追い込まないようにするために必要なのは、自分自身と向き合い、自分の心の状態を理解することです。「なぜ、いつも無理やりに忙しくしてしまうのだろう?」「なぜ、いつも極端なまでにぎやかにふるまってしまうのだろう?」このように、自分自身を振り返ることです。

たとえば新しい環境に移れば、人は不安になり、緊張するものですし、傷つくことがあれば、落ち込んでしまうこともあるでしょう。こうしたときに浮かれ騒いで、一時的に憂さ晴らしをしようとすることは、誰でにでもあることだと思います。
 
しかし、どんなつらいときにでもテンションを上げて乗り切ろうとしている場合、躁的防衛がくせになってしまっているのかもしれません。
 

無理をせずに行動できる方法を探し、ストレス対処のレパートリーも広げる

では、躁的防衛によって自分の心身を追い込まないようにするためには、どのようなことを心がけていくとよいのでしょうか? たとえば、異性と接する際に緊張感によって躁的防衛が生じてしまう場合(過剰に「陽キャ」を演じて異性に接してしまう、など)、どうしたらいいのでしょう?

こうした人は、まずは等身大の自分で異性にかかわれる機会を増やしていくとよいのです。いきなり合コンやパーティーなどから男女交際のきっかけを求めるのではなく、まずは日常の活動の場で仲間づくりのチャンスを探してみてはどうでしょう? 躁的防衛をしなくとも、等身大の自分自身で異性に接することができると思います。

また、躁的防衛が生じないようにするためには、これまでのストレス対処法を見直していくことも大切です。ストレスに直面したときにいつも躁的防衛で乗り切ってきた人は、ほかのストレス対処法を取り入れながら、ストレス対応力を伸ばしていくことも大切です。具体的には、ストレスコーピングのレパートリーを増やしていくことです。コーピングは『「攻める」「散らす」……ストレスに勝つ2つの極意』という記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

長い人生の中では、さまざまなストレスに何度も遭遇します。したがって、上記のような対処法も試みながら、上手にストレスと付き合っていきましょう。

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