世界遺産/世界遺産関連ニュース

2016年新登録の世界遺産(5ページ目)

2016年7月、トルコのイスタンブールで開催された第40回世界遺産委員会はクーデターの影響を受け、夏と秋の分散開催となった。7月の審議では新たに21件の世界遺産が誕生し、世界遺産総数は1052件となった。日本関連では「ル・コルビュジエの建築作品」の構成資産として国立西洋美術館本館が登録された。今回は新登録の世界遺産全リスト、危機遺産リストの変更点をはじめ、世界遺産委員会の概要をお伝えする。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

<自然遺産6件>
世界遺産「ルート砂漠」

荒涼たる景色が広がるイランの世界遺産「ルート砂漠」のヤルダン地形(風による浸食を受けた奇岩帯) (C) Hadi Karimi

■ルート砂漠
Lut Desert
イラン、自然遺産(vii)(viii)
“Lut” はペルシア語で水や植物が生えない不毛の地のこと。山地に囲まれた盆地に広がる乾燥地帯で、湿気を遮る山地から吹き込む熱風のため、最高気温70.7度という強烈な気候を生み出している。大型の動植物はきわめて少ないが、岩石砂漠・礫砂漠・砂砂漠・砂丘・塩田と多様な景観を誇り、美的あるいは地質学的にきわめて貴重な土地となっている。

■西天山
Western Tien-Shan
ウズベキスタン/カザフスタン/キルギス共通、自然遺産(x)
天山山脈・カラタウ山脈にまたがる3か国7か所の国立公園や自然保護区などからなるシリアルノミネーション&トランスパウンダリー・サイトで、総延長は約2500km、海抜では約700~4500mに及ぶ。古生代~中生代の地質から多数の化石が出土しているほか、多様な気候に数多くの固有種や絶滅危惧種を有し、特に豆類や果実の種類の豊富さは他に類を見ない。

■湖北省の神農架
世界遺産「湖北省の神農架」

「野人」が生息するという伝説でも有名な神農架

Hubei Shennongjia
中国、自然遺産(ix)(x)
医療と農業の神・神農大帝が訪れたことでその名が付いた神農架。大巴山脈と武当山の間に位置する標高1500m以上の山地で、神農架/巴東、老君山の2件を構成資産としている。氷河期の影響が少ない独特の地形で、落葉広葉樹林・常緑広葉樹林・常緑針葉樹林・針広混交林といったさまざまな森林タイプの中に数多くの固有種や絶滅危惧種が生息している。

 

■ミステイクン・ポイント
Mistaken Point
カナダ、自然遺産(viii)
ニューファンドランド島のアバロン半島南端に位置する全長17kmの断崖で、5億8千万~5億6千万年前に遡る先カンブリア時代に栄えたエディアカラ生物群の化石が豊富に出土する。単細胞から多細胞への進化の過程をよく示す地球最初期の多細胞生物群だが、骨格や外骨格を持たないことから化石として残りにくく、非常に貴重な資料となっている。

■レビジャヒヘド諸島
世界遺産「レビジャヒヘド諸島」サン・ベネディクト

レビジャヒヘド諸島の火山島サン・ベネディクト

Archipiélago de Revillagigedo
メキシコ、自然遺産(vii)(ix)(x)
バハ・カリフォルニア半島の南西約390kmに浮かぶ諸島で、サン・ベネディクト、ソコロ、ロカ・パルティダ、クラリオンの4火山島とその海域で構成される。周辺海域の最深部は水深3700mに達し、ソコロ島の標高1050mまで一気に駆け上がっている。美的・地質学的に貴重であるだけでなく、海洋&陸上生物・海鳥・植物等々の宝庫となっている。

 

■サンガネブ海洋国立公園とドンゴナーブ湾-ムカワル島海洋国立公園
Sanganeb Marine National Park and Dungonab Bay - Mukkawar Island Marine National Park
スーダン、自然遺産(vii)(ix)(x)
サンガネブ海洋国立公園は紅海上に浮かぶ環礁で、環礁としては世界最北端に位置する。ドンゴナーブ湾-ムカワル島海洋国立公園はムカワル島を中心に島嶼部に広がる国立公園で、サンゴ礁をはじめマングローブ林や砂浜・湿地など多彩な生態系を備えている。クジラ、マンタ、ウミガメ、ジュゴン等々、絶滅の危機に瀕する大型海洋生物が数多く生息している。

<複合遺産3件>
世界遺産「カンチェンジュンガ国立公園」

世界第三の標高8586mを誇るカンチェンジュンガの雄大な景観 (C) Dipankar Chetia

■南イラクのアフワール:生物多様性保護区とメソポタミア都市群の残存景観
The Ahwar of Southern Iraq: Refuge of Biodiversity and the Relict Landscape of the Mesopotamian Cities
イラク、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(ix)(x)
ウル、ウルク、エリドゥというメソポタミアの3件の古代都市遺跡と、東ハマー、西ハマー、フワイザ、セントラルの4件の湿地帯からなるシリアルノミネーション・サイト。チグリス川、ユーフラテス川、両大河周辺の湿地帯が人類初の文明であるメソポタミア文明を生み出し、また多彩な渡り鳥や数々の固有種・絶滅危惧種を有する豊かな生態系を育んでいる。

■カンチェンジュンガ国立公園
Khangchendzonga National Park
インド、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(vii)(x)
世界第三位の標高を有するカンチェンジュンガは6000mを超える峰を20も有する世界屈指のスケールを誇り、標高1220~8586mの間に森林から氷河に至る多彩な気候を有し、東ヒマラヤ生物多様性ホットスポットの一角を担う豊かな生態系を作り出している。シッキムの先住民にとって天地開闢の地でもあり、仏教寺院や僧院等々を備えた巡礼地として尊崇されている。

■エネディ山塊:自然及び文化景観
Ennedi Massif: Natural and Cultural Landscape
チャド、文化遺産(iii)、自然遺産(vii)(ix)
サハラ砂漠の一角に位置する年間降水量50~150mmという乾燥地ながら(東京は年1500mm程度)、夏に降る雨が特有の生態系をもたらし、風雨が山を削って険しい渓谷や奇岩群を形成している。また、古くから人類が住み着いており、紀元前5000年から現在に至る約7000年の間に描かれた多彩な岩絵が残されていて、当時の生活や環境を知る手掛かりとなっている。


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