産業医として良く遭遇する間違いだらけのストレス解消法
嫌なことがあっても、スマホをいじっていれば忘れられる…そんなストレス解消法で、本当に大丈夫?
「えっ!? そんな方法でストレス解消してるの?それじゃ逆にストレス溜めてしまってるよ!」
と思うものがあります。
ストレス解消の基本は「睡眠」と「リフレッシュ」です。
それにも関わらず、それらを無視した行動をとっている人が、実に多いのです。この傾向は、社会人経験の浅い若手社員に比較的多く見受けられます。私が実際に聞いたストレス解消法から、間違いとしてよくあるものを以下でご紹介しましょう。あなたにも当てはまるものはありませんか?
若手を中心に急増中…オンラインゲームでストレス解消?
「夜10時にオンラインで集まって、夜中の3時までダンジョンクリアに励んでます!」時間が経つのを忘れがちなゲーム。睡眠時間を削って熱中してしまった経験、あなたにもありませんか?
ゲーム。とりわけオンラインゲームをストレス解消法としてあげる20~30代の人が多いと感じます。オンラインゲームは、知らない人同士が仮想ゲーム上でチームメンバーとなり、チャットやネット電話をしながらゲーム内のダンジョンなどをクリアしていくものです。これ自体は、間違ったストレス解消法ではないのですが、大体において「行き過ぎてしまう」ケースが多いため、間違ったストレス解消法になっていることが多いです。
オンラインゲームをストレス解消と話す方の多くが、全員が集まりやすい時間として22時前後にスタートし、夜中までやり続けていることが多いようです。チームでやるオンラインゲームでは、能力や技術が低いとメンバーから必要とされない、ハブられる、チャットで怒られるということが発生するため、必死にレベルアップをすることになります。何がストレス解消の点で間違いかというと、「睡眠時間を削って、新たなコミュニティで頑張る」という状態を発生させてしまっている点です。仕事だけでなくプライベートでも頑張らないといけなくなってしまいます。気軽に始めた「ストレス解消法」のはずが、いつの間にかハマってしまってしまい、努力しなければいけない事柄になっていませんか? 依存性も高いので、思い当たる人は要注意です。
どの世代にも当てはまるスマートフォン依存
「スマホが手元にないと落ち着かなくて…。ストレス解消にもなるので、常に誰かにメッセージ送ってしまいます」インターネットが普及したことで、テキストだけでなく、動画情報を簡単に取得することができるようになりました。興味をそそられる内容のホームページやブログが紹介される親しい人のSNSは、「気になる情報」の宝庫です。また、友人や仕事のコミュニケーション手段も、会話や電話といった直接的なものから、メールを中心としたコミュニケーションの比重が高まるようになりました。最近では、より気軽なコミュニケーション手段として、多くの人がチャットを利用しています。
このようにコミュニケーションが変化した結果、空いた時間のリフレッシュタイムが、「気軽なスマホ利用」で埋められている人は非常に多くなっています。スマホを使って常に何かしてしまう、利用していないと気になる、ないとそわそわしてしまうという人は少なくないでしょう。スマホを家に忘れると、一日落ち着かない気持ちになってしまうことはありますよね。あの感覚が毎日続いてしまうのです。
ビジネスパーソンと話をしていると、スマホをストレス解消のツールとして挙げる方は多いです。何か嫌なことをあると、忘れるためにスマホをいじって気を紛らわすとのこと。
しかし、寝る直前までスマホをいじっていると、寝る時間が遅くなったり、アタマがさえて寝つきが悪くなったり、直前まで触れていた情報が夢の中まで影響を与えてしまったりと睡眠の質に悪影響を及ぼしてしまうことが多く、大事な睡眠を削ってしまうことで逆効果になりがちです。
女性のストレス解消法に多い買い物・ネットショッピング
「インターネットでクリックして買い物をすると気分がよくて。届いたまま着ないことも多いんですけどね」ショッピングでストレス解消しているという方も多いようです。特に、「土日どうやってリフレッシュしていますか?」と質問すると、多くの20~30代は「外出して買い物に出かける」と答えます。これもストレス解消として認識している人が多いようです。
好きなものを購入することはたしかにストレス解消になりますが、間違った考え方と捉え方に注意が必要です。気軽にいつでもどこでもワンクリックで買い物が出来る環境になったことで、一部の人たちはその便利さゆえに間違ったストレス解消法をしています。
例えば、「会社で嫌なことがあったから、むしゃくしゃして服を大量に買った」というようなケースです。こういうストレス解消をしてしまう方の部屋には、大量の使われない無駄買いされた「モノ」であふれている傾向があるようです。結果的に部屋にいても落ち着かない、リラックスできないという事態に陥ります。
また、買い物でのストレス解消法が良くない点としてもう一つ。日常で嫌なことがあると、買い物で気分が晴れるという刷り込みがあるため、金銭的に余裕がなくても衝動的な買い物に走りやすいという傾向も挙げられます。借金というと大げさに聞こえるかもしれませんが、カード使用がかさみ、結果的に借金を抱えているのと同じ状態になってしまうこともあります。常習化してしまうとぬけ出すのが大変ですので注意が必要です。
上手なノミニュケーションは難しい?
「やっぱりストレス溜まった時は、仲間と夜遅くまで飲むのが一番!」会社での無礼講での飲み会、仲間との楽しい集まり…お酒の席はほどほどにすることが大切です
親しい仲間と楽しい時間を過ごすことは、ストレス解消につながりますよね。気の置けない友人との飲み会もストレス解消法としてとても効果的です。しかし、このストレス解消法も間違えている人がいると感じます。
毎日の仕事のストレス解消と称して、毎日のように飲み歩いている方もいます。職場の仲間、大学時代の親友、地元の友人、趣味の仲間……。交友関係が広いのはいいことですが、当然ながら、飲み会には健康に対するリスクがあります。夜遅い時間に食事をとることによる肥満、塩辛い料理を摂取することで高血圧など様々な健康への影響があります。ストレス解消の観点から特に注意したいのは、先にも述べた「睡眠」への悪影響です。飲酒による睡眠の質低下、夜遅くまで集まることによる睡眠時間の短縮など、飲み会をすることで翌日にも疲れが持ち越されやすくなります。そうすると、本来のパフォーマンスが出せないまま仕事をすることになり、よりストレスを感じやすくなります。
飲み会をストレス解消につなげるには、2つのことに気を付けるべきです。1つ目は飲酒量。飲酒量は、当然ながら多ければ多いほど翌日の朝まで持ち越しやすいので、飲み会の前から「今日は2杯まで」と飲酒量を決めておき、そのルールに従うのがいいでしょう。ビール→烏龍茶→ビールのように順番を決めておくのもいいでしょう。2つ目は飲み会のタイミング。これも非常に重要です。金曜日に多く飲んでも、翌日は休日なので仕事に影響はそれほどありませんが、月曜日に飲み会をするとその1週間「疲労」とつきあうことになってしまいます。できれば週のはじめの飲み会は避け、週の後半に2回まで飲み会を入れるといったルールを作っておかないと、あっという間に夜の日程が埋まってしまいます。
中長期的な目で見ると逆効果…喫煙でのストレス解消
「激務なので、仕事の途中に時間ができたらタバコ部屋に行ってタバコを吸ってぼーっとしています。タバコを吸うことが自分にとってはストレス解消になっていると思う」リフレッシュのための一服? 実は一服できない時に感じるストレスの方が大きくなっていませんか?
医学的な見解を言えば、タバコによるストレス解消は「今」のストレスをその瞬間解消するだけで、中長期的なストレスは解消できません。むしろストレスを溜めることになります。喫煙者の方の場合、タバコは「吸いたい」という欲との闘いでもあるので、余計にストレスが溜まってしまうのです。喫煙しているときにリフレッシュできるのではなくて、吸えない場所や時間、人といるときに吸えないことで、イライラしたり、気分が沈んだりしがちです。そもそも「吸わない」ことで、そういった不要なイライラから解放され、本来の喫煙に縛られない自由な生活スタイルを取り戻せるとも言えます。私は禁煙外来もやっていますが、「タバコを辞めたことでストレス溜めずに生活できるようになったのが何よりうれしい」というコメントを頂戴します。
間違いだらけのストレス解消法は、依存症リスクも高いもの
ここまで挙げた間違いだらけのストレス解消法、あなたにも当てはまるものはありませんでしたか?ここまで読まれてお気づきの方もいるかもしれませんが、基本的に間違ったストレス解消法は「依存症になりやすいモノばかり」なのです。
一時的な気晴らしと思っていても、それぞれが「ゲーム依存」「SNS依存」「買い物依存」「アルコール依存」「ニコチン依存」に進んでしまうリスクもはらんでいます。間違ったストレス解消法に頼ることで、実はこれら依存の扉を開いてしまっているのかもしれません。一歩を踏み出すとこれらは習慣化し、常習化するものばかりなので、そこから抜け出すのはとても苦労します。だからこそ、はじめから正しいストレス解消方法を身につける必要があるのです。
繰り返しになりますが、ストレス解消の基本は「睡眠」と「リフレッシュ」ということを、しっかり押さえるようにしてください。
みなさんもこれを機にご自身のストレス解消法も振り返ってみてはいかがでしょうか。