≪2017年路線価は2年連続上昇、最高価格はバブル期超え≫ |
2016年(平成28年)分の路線価が7月1日に国税庁から発表されました。これは相続税や贈与税の算定に用いられる、1月1日時点の土地価格です。
全国平均がリーマン・ショック前の2008年以来、8年ぶりに上昇したほか、都道府県別平均では宮城県と愛知県が4年連続、東京都、神奈川県、大阪府など6都府県が3年連続の上昇となりました。
2015年1月1日の相続税法改正で大幅な課税強化が実施されたことにより、路線価の上昇が税金の負担増に直結する世帯も少なくありません。
2016年の路線価がどうなったのか、その動向を確認しておくことにしましょう。
路線価とは?
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があるものの、一般的に「路線価」といえば「相続税路線価」のことを指します。これは、相続税および贈与税の算定基準とされる土地評価額であり、毎年1月1日を評価時点として、都市部の市街地ではほぼすべての路線(公道)に対して価格が付されます。その他の地域の宅地については、固定資産税評価額に対する倍率を定める「倍率方式」によります。
この路線価は公示地価の8割が目安とされています。
地域によっては実際に取引される実勢価格との間にかなりの相違があるものの、2016年における路線価の調査地点(標準宅地)数は約32万8千で、公示地価の約2万5千よりも格段に多く、地価の傾向を知るためには公示地価よりも適した指標となります。
なお、路線価の特徴や公示地価との違いなどについて詳しくは ≪路線価・公示地価・基準地価の違いを知る!≫ をご覧ください。
また、国税庁のサイトにおいて2016年分の路線価図が7月1日から公開されています。こちらでは、2010年(平成22年)から2016年(平成28年)まで7年間分の路線価図などを閲覧することができます。
大都市圏の路線価は3年連続の上昇へ
路線価の全国平均は前年比0.2%のプラスで、2008年以来8年ぶりに上昇へ転じました。前年は0.4%のマイナスでしたが、下落率は6年連続で縮小していましたから、想定どおりの動きといえるでしょう。都道府県別の平均では、東京都が2.9%のプラスで最も高い上昇率を示し、宮城県(2.5%)、福島県(2.3%)が続いています。宮城県の上昇率は2013年から2015年まで3年連続トップでしたが、2016年は東京都を下回る結果となりました。
宮城県と愛知県(1.5%)が4年連続の上昇となったほか、東京都、福島県、大阪府(1.0%)、神奈川県(0.5%)、千葉県(0.4%)、埼玉県(0.2%)の6都府県が3年連続の上昇、さらに沖縄県(1.7%)と京都府(0.8%)が2年連続の上昇となっています。
また、北海道(0.8%)、福岡県(0.8%)、広島県(0.5%)、熊本県(0.1%)の4道県が今年から新たに上昇へ転じました。
残る33県の路線価は引き続き下落していますが、そのうち29県は下落率が縮小し、静岡県と徳島県の2県は前年と同じ下落率でした。その一方で、三重県はわずかながら下落率が拡大し、滋賀県は前年の横ばいから再び下落に転じています。
前年よりも悪化がみられたのはこの2県にとどまりますが、神奈川県では上昇率がわずかに縮小しました。
しかし、前年は5道県で下落率の拡大がみられたため、全体的には下落に歯止めがかかりつつあるといえるでしょう。
さらに、3%を超える下落が前年は4県(前々年は11県)でしたが、2016年は秋田県の1県にとどまり、12県は1%未満の下落となっています。大きな変動要因が起きないかぎり、来年には上昇へ転じる県が増えるだろうと考えられます。
なお、原発事故による帰還困難区域、居住制限区域などでは、引き続き評価額を「ゼロ」とする措置がとられています。
都道府県庁所在地の最高路線価は25都市で上昇
都道府県庁所在地の最高路線価では、大阪市北区角田町(御堂筋)が22.1%の上昇、東京都中央区銀座5丁目(銀座中央通り)が18.7%の上昇、京都市下京区四条通寺町東入2丁目御旅町(四条通)が16.9%の上昇など、10都市が2ケタの上昇でした。上昇が前年の21都市から25都市、横ばいが14都市から17都市に増え、下落は前年の12都市から5都市まで減りました。また、前年までみられた5%以上の下落都市はゼロとなっています。
ただし、青森市は前年の横ばいから下落に転じたほか、秋田市と鳥取市は前年よりも下落率が拡大しています。上昇が続いている都市でも、福島市、さいたま市、富山市、大津市、岡山市は上昇率が前年より小さくなっており、上昇傾向が一様に強まっているわけではありません。
税務署管内別では上昇、横ばい地点が3分の2に
全国の524税務署のうち、前年と比較が可能な522管内における最高路線価地点の動向では、上昇が前年の165地点から186地点に増え、下落は177地点にとどまりました。とくに東京国税局管内では、下落が1地点を残すだけとなっています。このうち2ケタの上昇となったのは、倶知安(北海道)の50.0%を筆頭に、北海道、宮城県、群馬県、東京都、神奈川県、石川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県の38税務署管内における最高路線価地点です。前年が12税務署管内でしたから、3倍以上に増えました。
東京都内では全48税務署管内における最高路線価が、横ばいの日野を除いてすべて上昇でした。また、福島県、神奈川県、岐阜県、滋賀県、沖縄県の税務署管内では下落がなく、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府では下落がそれぞれ1税務署管内を残すだけとなっています。
また、前年まで7年連続で上昇がゼロだった熊本国税局(熊本、大分、宮崎、鹿児島)の税務署管内における最高路線価では、8年ぶりに上昇がみられました。
全国の最高路線価は31年連続で銀座「鳩居堂」前
全国の最高路線価は、31年連続で銀座5丁目(銀座中央通り:鳩居堂前)となりました。前年よりも18.7%上昇し、1平方メートルあたり3,200万円(1坪あたり1億578万円)です。ただし、前年に引き続き銀座4丁目側の三越銀座店前および和光本館前も同額になっています。「鳩居堂」前の路線価はピーク時の1992年(1平方メートルあたり3,650万円)の9割近い水準になりましたが、地価を牽引してきたインバウンド消費にも減速感がみられ、このままの勢いで近いうちに過去最高額を更新することは難しいかもしれません。
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