世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

マラケシュ旧市街/モロッコ(3ページ目)

世界最大の砂漠・サハラの北の果て、アトラス山脈の麓に位置するモロッコのオアシス都市マラケシュ。灰色の荒野と褐色の砂漠の果てに立つその都市は、水と緑にあふれる庭園・公園、イスラム装飾で覆われた宮殿やモスク、歌と掛け声に満ちた広場や市場で彩られ、古来、砂漠を渡る旅人たちを癒してきた。今回はモロッコ観光のハイライト、世界遺産「マラケシュ旧市街」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

世界遺産「マラケシュ旧市街」の見所

アル・マンスール・モスク

緑色のトルコ石で彩られたミナレットが美しいアル・マンスール・モスク

「マラケシュ旧市街」は東西2.5km×南北7kmほどを登録範囲とする世界遺産で、北部のメディナに見所が集中している。ここではメディナとその周辺の主な見所を紹介しよう。

■城壁・門
アグノウ門

馬蹄型の意匠が特徴的なアグノウ門

マラケシュは12世紀、ムワッヒド朝の時代に城壁を有する城郭都市として整備された。現在でもメディナは3×2kmほどの城壁に囲まれており、アグノウ門・ロブ門・ケミス門など19の門が存在する。

■ジャマ・エル・フナ広場
一辺200mほどの正三角形状の広場。11世紀に街が建設されて以来の広場で、大道芸や交易品の売買が行われたほか、治安を維持するために公開処刑場として使われたこともある。2001年に「人類の口承及び無形遺産の傑作」に選出され、2008年に無形文化遺産の代表リストに登録された。

 

■スーク
スークの金物街

スークの金物街

ジャマ・エル・フナ広場の北や東に縦横無尽に広がる市場で、無数の店や露店が軒を連ねている。絨毯・革製品・金銀細工・陶磁器のような名産品から土産物・食料品まで多彩で、地元民から商人・旅行者までさまざまな人が利用している。定価は存在せず、値段交渉が醍醐味でもある。

■庭園・公園
庭園や公園は豊富な水と植物で人々の癒しとなっていただけでなく、水を供給する灌漑設備の一部でもあった。一例が12世紀に建設されたメナラ庭園で、200×150mの人工湖は60km先のアトラス山脈から地下水路(カナート)を通して水を引いており、ここから周囲の畑に送水していた。マジョレル庭園は植物園やイスラム芸術美術館を備えており、アグダル庭園はスルタン(王)のハーレムやプール・果樹園が見物。

 

■クトゥビア・モスク
80×60mを誇るメディナ最大のモスクで、高さ77mのミナレット(礼拝を呼び掛ける塔)はマラケシュのランドマークとなっている。ミナレットは12世紀の建設で、隣接していた王のハレム(後宮)の中を覗けないよう意図的に見晴らしが悪く設計されている。イスラム教徒以外は入場禁止。

■ベン・ユーセフ・マドサラ
クバ・アル・バディン廟

1120年に建設されたムラービト朝の現存唯一の建物、クバ・アル・バディン廟

ベン・ユーセフ・モスク隣接の高等教育機関=マドラサ。もともと12世紀にスルタン、アリ・ユーセフが建設したものだが、16世紀に倒壊してアブダラ・アル・ガリブが再建した。アラベスク、カリグラフィー、ムカルナスをはじめイスラム芸術の最高峰を堪能できる。隣接のマラケシュ博物館、クバ・アル・バディン廟とともに見学したい。

 

■サアド朝墳墓群
サアド朝墳墓群

サアド朝墳墓群。イスラム装飾で覆われた空間の下部に墓が並べられている

16世紀に建設されたサアド朝のスルタンと貴族約60人が眠る霊廟。アラウィー朝のスルタン、ムーレイ・イスマイルが壁で取り囲んだことから忘れ去られていたが、1917年に空撮写真によって発見された。鮮やかな象嵌装飾・彩色タイル・モザイクで彩られた内部空間は必見。アル・マンスール・モスクが隣接している。

■バヒア宮殿
19世紀後半、ハッサン1世の宰相アハメッド・ベン・ムーサが4人の正室、24人の側室とともに暮らしたと伝えられる宮殿。イスラム芸術の粋を集め、7年を費やして完成したもので、モロッコ随一の装飾で知られる。マラケシュにはこの他にバディ宮殿と王宮があるが、前者は破壊されて遺跡となっており、後者は一般公開されていない。 

 

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