リーダーシップ

これからのリーダーに必須な「多様性」の考え方

巷でよく耳にする「多様性」「ダイバーシティ」と言う言葉、日本企業では、主に“女性の活用”という意味で用いられていますが、それだけを意味するものではありません。今回は、「ダイバーシティ」-多様性をいかにマネジメントするかという視点で考えたいと思います。

藤田 聰

執筆者:藤田 聰

キャリアプラン・リーダーシップガイド

ダイバーシティの捉え方

多様な人を最適に組み合わせ、化学反応を起こすことができれば組織は活性化する

多様な人を最適に組み合わせ、化学反応を起こすことができれば組織は活性化する

このところ、巷でよく耳にする「ダイバーシティ」と言う言葉、ご存知ですか?

直訳すると「多様性」という意味です。日本企業では、主に“女性の活用”という意味で用いられています。この4月より、アベノミクスの実現に向けた「女性活躍推進法」が施行され、管理職登用や新卒採用等で、目標値の設定とアクションプランを開示することになり、いよいよ、待ったなし!の状況になるでしょう。

今回は、“女性の活用”という狭義の捉え方でなく、「ダイバーシティ」-多様性をいかにマネジメントするかという視点で考えたいと思います。

「ダイバーシティ」を広く捉えると、女性のみならず、外国人や中高年層の力を活かすことも含まれます。また、業種や職種や世代を超えた社内外での繋がりも含まれます。「多様性」のマネジメントシステムを構築した暁にはイノベーション(技術および商品・サービスの革新)を誘発していくことでしょう。

イノベーションを誘発するためには、縦・横・斜め-つまり、異なる属性の方々と連携し、化学反応を起こしていくかが成功への鍵となります。

ミスター・ダイバーシティは「カルロス・ゴーン氏」

ダイバーシティの重要性を説いている象徴的な方はルノーと日産自動車CEOのカルロス・ゴーン氏です。ゴーン氏はコスモポリタンで、フランス、レバノン、ブラジルの国籍を有しています。日本に来られる前には欧米や南米でのマネジメント経験があります。

以前、朝日新聞で連載していた記事をまとめた「ゴーン道場」という書籍の中で次のように語っています。
国際的に活躍する人には共通する特性があります。その最たるものは自分と違う者に対して興味を持ち、敬意を払える姿勢です。言葉や食べ物、習慣が自分のそれと違うことがイヤな人に、国際的なキャリアをめざすことはおすすめしません。(中略)リーダーに必要な資質でもある共感能力が次に必要です。理性を超えて他者と繋がれる力。相手への理解、直観力です。こうした特性は経験を重ねて体得するものです。(「ゴーン道場」/朝日新書/2008年)

「ダイバーシティ」はグローバル人材やグローバルリーダーの要件とも重なり合うのです。リーダーとして、コミュニケーションの手段である語学力や論理的思考力以前に、自分とは違う他者と関わる力、つまり「異文化適応能力」が求められるのです。


“異文化適応能力”を高めるには

違うことを興味を示し、尊重することが全ての始まりなのです

違うことを興味を示し、尊重することが全ての始まりなのです

異文化適応能力を高めるにはどうしたらよいか?それは多くの場で揉まれることです。文化の違う場にフットワーク良く参加していくことが功を奏します。国籍のみならず、都道府県、市区町村、企業や組織、業種や職種、世代等、形成する組織成員により文化が異なるのです。

新参者として始めはアウェイ感がありますが、回を重ねる毎にホームのようになっていくはずです。これを繰り返していくことでホームの数が多くなっていきます。その場数こそが実は異文化適応能力とリンクするのです。

同質集団であれば、軋轢も少なく、非常に居心地が良いのですが、中々、異文化適応能力の開発やイノベーションの誘発に至ることは少ないものです。“井の中の蛙、大海を知らず”ではもはや生き残ることができません。特に安定的な大企業在籍の方はこの点を今一度確認して欲しいものです。

戦力の活用例から何を学ぶか?

女性の戦力活用の例では、Panasonic社の生活家電、美容や健康部門が成功しているといえると考えています。この部門では、気が利いた新商品が矢継ぎ早に開発されていて、電車内で展開されている広告も、一味違う感があります。

この背景には、女性の戦力活用があります。例えば、ナノケアのヘアドライヤー等の美容分野は女性が多い職場になっています。また、台所分野でのLED 照明においても、女性ユーザーへの訴求を重視した専門部隊があり、そこでは女性が活躍されています。

中高年の戦力活用の例では、西武信用金庫の中高年層の活躍は一つの問題提起として共有化できればと思います。以前、お目に掛かったことがありますが、落合理事長は次のような問題意識を持っておられました。

“定年退職後、その人の価値が一気に1/3位になることはそもそもおかしなこと。であれば、きちんと能力を評価し、能力が高ければ、それ相応に処遇すべきだ。下がるだけではなく、上げることも考えるべき。”と一刀両断。

トップがこのような考え方であれば、企業文化が変わります。メガバンクの定年後の方々がトップの考え方に共感し応募してきます。優秀なバンカーも、もう一花咲かせたいと志願してきます。結果として、大手金融機関出身の優秀な方々を採用することができるのです。確かに今までの常識を覆す捉え方で結果的に成功に結び付いた例と言えましょう。

以上、「ダイバーシティ」を広く捉えると、女性、外国人、中高年等の力を活かす、現代のキーワードである「グローバル」「イノベーション」とも密にリンクしていることがおわかりになったかと思います。

最後に、ダイバーシティの共通言語はパーソナリティー(性格特性)だと思います。パーソナリティーの理解はダイバーシティへの近道です。人は皆違うという前提で他者と接することができれば、ゴーン氏が指摘するように、自分と違う者に対して興味を持ち、敬意を払える姿勢、理性を超えて他者と繋がれる力(共感力)に結びつくと思います。

参照記事:
リーダーシップのタイプ
2ページ目にパーソナリティーの診断テストが掲載され、3ページ目に解説があります。ご参考にして下さい。

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