女性として仕事をしていることがまだ新鮮。
自分の変化を楽しんでいます。

——音楽がお好きだと伺いましたが、一番最近感動した音楽は?
武満徹さんの作品『系図』です。詩人の谷川俊太郎さんの詩集『はだか』の6篇を元に作曲され、オーケストラの演奏と朗読で構成した作品です。世界観が素晴らしくて、全然違う所に連れて行かれて、気づいたら涙が溢れていました。人生丸ごと、影響される作品でした。武満さんの音楽が大好きで、譜面も持っていますよ。

——武満徹さんとは、ミュージカルとはまた違う世界ですね。

パフォーマンスをするのに好きな曲と家で聴く曲はぜんぜん違います。たとえば『ル・リアン』にも出てくる「雨に唄えば」も大好きですが、パフォーマーとしての眼から、とても魅力的な曲なんですよね。普段家で聴く曲とはまた全然違う位置にあるんです。

——退団後、作品から影響されたことはありますか。

毎公演ごとに役から何かをもらっています。その時はわからなくても、次の作品に取り組み始めた時に自分が大きく変化していることに気づいたり。特に私は男役をやっていたので、女性として仕事をしていることがまだ新鮮で。作品ごとに色のグラデーションがついてくる感じだったり、突然ふっと何かが軽くなる感じだったりと、自分の変化を楽しんでいます。

——女性として演じられるのはまだ3年ほど。きっと発見が多い時なのでしょうね。
そうですね。私自身、引き出しを少しでも増やしたいし、どの作品でも何かをもらって帰りたいと思います。

——ミュージカル『HEADS UP!』では主役の哀川翔さん演じる舞台監督の元妻で、女優役。振り返ってみて、いかがですか。

様々なジャンルから集められた個性豊かなキャストが揃い、その中に自分が身を置くことで、初めて自分が元宝塚だったことを忘れた気持ちになりました。皆さんの個性があまりにもバラバラ(笑)。普段はジャンル分けされがちで、それがしんどいと感じる時もあるし、頼りになる時もあります。しかし『HEADS UP!』では出身云々ではなく、ひとりの女としてポンと入った感じ。また相手役の哀川翔さんが人間的にとても大きな方で、「なんでもいいよ!」とドンと受け止めてくださり、気負いがなくなったと思います。ニュートラルな自分でいられたのは、演出のラサール石井さんを始め、周りの方のおかげですね。『HEADS UP!』を終えて、いろいろなものに対してこわばりがなくなって、ものすごく楽になった気がします。もちろん、今までの仕事を全部積み重ねてきて、ちょうど去年のラストの仕事が『HEADS UP!』だったというタイミングもあるのですが。

——ミュージカルの観劇体験で印象に残ったものを教えてください。

一番最近では、新国立劇場で観た『手紙』。最初、なぜこの作品をミュージカルに?と思ったのですが、観て納得しました。原作が人間の綺麗事じゃないところにテーマがあり、それをミュージカルとして上手く表していたと思います。音楽が人間にとって救いになる点が強調されていて、私の受け止め方では音楽が暗闇の中の光のように見えました。この演劇的な音楽の位置付けがすごく新鮮で、ミュージカルの新しい形なのではないでしょうか。きれいなものをきれいな音楽に乗せるミュージカルは珍しくありませんが、全く異なるアプローチに目を見張りました。