出したり引いたりのエネルギーの扱いはものすごく重要。
宝塚で勉強した大きな財産です。

——確かにミュージカルは一般的に歌と踊りで華やか&ハッピーと思われがちですが、一方でドラマを真剣に語るミュージカルもあり、ブロードウェイやウエストエンドでは昨今そちらが主流ですよね。綺麗なものだけではなく。

私もドラマを伝えたいという気持ちが強いですね。今はあまり語りすぎないほうがいいという思いもあって。たとえばミュージカルだと一曲歌うと、心情が伝わりますよね。それはダイレクトに伝わるから確かにわかりやすいのですけど、そこであえて言わないことで、「あの人こんな思いだったのかも?」とお客様に余白を渡す。そんな勉強をしたいと思っています。洗いざらい全部歌って、ああスッキリしたという感じは、私の年齢と感覚にはそぐわなくなってきた部分があるんですよ。もっと大人向けの精神的な駆け引きがある、人間ドラマとして成立したミュージカルがあれば、いいなぁと。

——ああ、わかる気がします。最近は、テレビでもテロップが出てきたり、なんでもわかりやすく、伝わりやすくという傾向がありますね。演劇でも、サービス過剰だなと思うことがしばしばあります。もちろん伝わらなければ意味がないけれども、観客に考えさせる、想像させるというのも必要かと。それが挑戦できるのも、舞台の醍醐味なんですけどね。
もちろん、無理やり難解にする必要はないと思います。わかりやすくしよう、難解にしよう、ではなく、物語としてこうあるのが美しい、こうあるべき、という作品が理想かと。

——漠然とでも、この先、出たい作品や演じたい役はありますか。

今はどんな役をいただいても新鮮です。今までシェイクスピア劇には挑戦したことがないので、ぜひやってみたいですね。『マクベス』が好きです。

——『マクベス』なら、マクベス夫人役が似合いそう。
憧れます。いつかやれたらいいですね。

——初めての観劇体験はいつでしたか?

多分、宝塚。0、1歳から観ていると思います。今はそんなことはできませんが、当時、抱っこして観たと母から聞きました。

——物心ついた時には宝塚を観ていらっしゃって、近い世界だったわけですね。その経験はご自分に影響しましたか。特に感性の面で。

それは影響しまくっていますよね。だって仕事になってしまったのですから。感性としては、自分が演じる側になってしまったからよくわからないですけど。でもパフォーマーとして観ることはとても栄養になると実感しました。特に普通の創作活動と違って、宝塚にはファンの方々がいて、ファンが何を望んでいるのか、わかっていることが重要だと思います。自分が宝塚のファンであったことは、武器でした。退団後の今は、自由である分、そのあたりが難しいです。

——宝塚で培った経験で、今の武器になっていると思われることは?

大劇場という非常に大きな空間をトップスターとしてひとりで埋めたことは、すごく力になりました。私は華やかになることの訓練よりも、静寂の中でお客様に集中してもらうことを考えていました。押すよりも惹きつける、凝縮する。出したり引いたりのエネルギーの扱いはものすごく重要で、宝塚で勉強した大きな財産です。
大劇場のサイズに馴れている分、今は逆にコントロールが難しい時もあります。でも大は小を兼ねるとも言いますしね。マックスを知ることで、自分の中に怖いものがなくなるのは強みかと。また宝塚は見せることが要求されますが、今は見せることより中身が大事になります。宝塚では役として存在しつつ見せることが習慣になっていたので、まだまだ勉強です。もちろん今だって見せることはゼロではなくて。舞台の正面はひとつなので、その感覚なくしてはできないと思います。