彼は糖尿病で亡くなったとされていますが、中医学では糖尿病は「消渇(しょうかち)」と呼ばれています。まずはそのメカニズムと考え方をご紹介します。
食生活・ストレス・運動不足がおもな原因
糖尿病になるとよくのどが渇く。体内の水分不足でほてりも生じる
中医学では消渇といって、多飲、多食、多尿、そして体重が減るので「三多一少」といいます。初期の段階ではあまり症状がでませんが、病状が進行してくるとタイプによって下記のような症状を起こしやすくなります。
A:多飲タイプ(上消証)
□のどが渇く
□水、とくに冷たいものを飲みたがる
□トイレの回数が増える
□食欲が増す
□空せきやたんが出る
B:多食タイプ(中消証)
□食欲が旺盛になる
□のどが渇く
□カラダが熱っぽく、汗をかく
□カラダが痩せてくる
□便秘になる
C:多尿タイプ(下消証)
□頻尿。とくに夜トイレに行く回数が増える
□尿が混濁している
□目がかすみ、めまいがする
□足腰が重だるい
□口が乾燥し、手足がほてる
糖尿病で用いられる漢方薬
話が進むにつれ五代氏が飲酒するシーンが増えてきましたが、立場上接待なども多くあったはずです。消渇は古典では「富貴で、お酒やお肉などが好きな美食家がよくなる」と記載されています。なお大阪経済の立て直しに過大な功績を残したのはいうまでもないですが、相当のプレッシャーもあり、ストレスも大きな原因のひとつであることは間違いないでしょう。五代氏が一般庶民とは異なるとはいえ、すでに明治時代からこのような生活習慣による病気があったのは明らかです。
さて、消渇の症状により処方もかわります。Aなら肺の熱を冷まして体液を増やす白虎加人参湯合麦門冬湯などが有名です。Bは胃熱があるので、それを改善させて体液を増やす玉女煎か、白虎加人参湯に六味丸を加味したものを用います。
Cは腎機能の衰えがあるので、ほてりなどの熱感があるなら六味丸、尿の混濁や手足の冷えをともなえば八味丸や海馬補腎丸などがオススメです。
では次のページで、五代氏の処方された「小柴胡湯」について説明しましょう。