セクシュアルマイノリティ・同性愛/LGBT

2016年、いい年にしましょう! 今年のLGBT展望(3ページ目)

2016年最初の記事は、この1年がどんな年になるかを占うような内容でお届けします。と言っても預言者ではないので、こうなったらいいな、という希望的観測です。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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LGBT関連映画作品が続々、公開!

2016年1月~3月、特筆すべきトピックとして挙げられるのが、LGBT関連映画作品の公開ラッシュです。以前はメジャーで公開されるゲイ映画(レズビアンやバイセクシュアルやトランスジェンダーの映画ってあまりなくて、ほとんどゲイでした)って年間を通じて1本か2本という感じだったのですが、短期間にこれだけたくさん一気に上映されるのはゴトウが知る限り初めてです。全部とは言いませんが、気になる作品をぜひチェックしてみてください。『リリーのすべて』と『キャロル』は主演男優賞や女優賞、衣装デザイン賞などでアカデミー賞にノミネートされているので、オスカーの行方にも注目、ですね(ちなみに『恋人たち』もまだ劇場公開中ですので、まだの方はぜひ!)。以下、公開日時順にご紹介していきます。

ユートピア
ユートピア

『ユートピア』劇中写真

香港のインディー映画界で活動し、過激な作品を発表しているスカッド監督(昨年の映画祭にも来場してご挨拶してくれました)の新作。男女の新しい愛のあり方を模索した作品。カトリック信者の恋人との婚前交渉を我慢する生真面目な男子大学生ヒンズが、三島由紀夫の作品に傾倒している時に自由奔放なゲイの大学教授と出会い、恋人と共に教授の手引で新たな愛の世界に足を踏み入れていくというストーリー。この作品は、スカッド監督が敬愛する三島由紀夫をはじめ、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、デレク・ジャーマンに捧げられています。(1月16日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開)

ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~
ジェンダー・マリアージュ

『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』劇中写真

同性婚が合法とされていたアメリカ・カリフォルニア州で2008年11月、結婚を男女間に限定する州憲法修正案「提案8号」が住民投票で採択され、同性婚が再び禁止されることになった。この「提案8号」を人権侵害であるとして州を提訴したのが、レズビアンカップルのクリス&サンディとゲイカップルのポール&ジェフ。アメリカ合衆国最高裁判所で婚姻の平等が初めて争われるこの訴訟のもと、かつてブッシュ対ゴアの大統領選で敵同士だった2人の弁護士、テッド・オルソンとデヴィッド・ボイスも手を取り合う。愛とは、家族とは、人権とは…。彼らのかつてない闘いを5年以上にわたって撮影し続けた感動のドキュメンタリー。『アゲンスト8』のタイトルで2014年の映画祭で上映され、場内にすすり泣きが響き渡った名作です。(1月30日からシネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次公開)

キャロル
キャロル

『キャロル』劇中写真

1950年代ニューヨークを舞台に女同士の美しい恋を描いた恋愛ドラマ。『太陽がいっぱい』などで知られるアメリカの女性作家パトリシア・ハイスミスが1952年に発表したベストセラー小説『ザ・プライス・オブ・ソルト』を『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ監督が映画化。ジャーナリストを夢見てマンハッタンにやって来たテレーズは、クリスマスシーズンのデパートで玩具販売員のアルバイトをしていた。彼女にはリチャードという恋人がいたが、なかなか結婚に踏み切れずにいる。ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルにひと目で心を奪われてしまう。それ以来、二人は会うようになり、テレーズはキャロルが夫と離婚訴訟中であることを知る。生まれて初めて本当の恋をしていると実感するテレーズは、キャロルから車での小旅行に誘われて愛の逃避行に出かけるが……。ルーニー・マーラが第68回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したほか、ケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞にノミネートされています。(2月11日から全国でロードショー)

これが私の人生設計
これが私の人生設計

『これが私の人生設計』劇中写真

『ジョルダーニ家の人々』のパオラ・コルッテレージと『エイリアンVS.プレデター』のラウル・ボバが共演したイタリア製コメディ。天才建築家として国外で成功をおさめた女性セレーナは、故郷が恋しくなりイタリアに帰国する。しかし、イタリアにおける女性の就労状況は厳しく、仕方なくカフェでアルバイトして生計を立てることに。セレーナはカフェのオーナーであるバツイチ男性フランチェスコと心を通わせていくが、実は彼はゲイだった。やがて、ある集合住宅が再開発案を募集していることを知ったセレーナは、架空の男性上司をつくりあげて応募するが……。監督は『ようこそ、大統領!』のリッカルド・ミラーニ。イタリア映画祭2015では『生きていてすみません!』のタイトルで上映されました。(3月5日から新宿ピカデリーほかで公開)

リリーのすべて
リリーのすべて

『リリーのすべて』劇中写真

『英国王のスピーチ』でアカデミー賞を受賞したトム・フーパー監督と『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたエディ・レッドメインが『レ・ミゼラブル』に続いてタッグを組み、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を描いた伝記ドラマ。1930年、デンマーク。風景画家のアイナー・ベルナーは、肖像画家の妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自身の内側に潜む女性の存在を意識する。それ以来「リリー」という名の女性として過ごす時間が増えていくアイナーは、心と身体が一致しない現実に葛藤する。ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、次第にリリーに対する理解を深めていく。(3月18日から全国でロードショー)

人生は小説よりも奇なり
人生は小説よりも奇なり

『人生は小説よりも奇なり』劇中写真

2011年に同性婚が合法となったニューヨークを舞台に、念願の結婚式を挙げたゲイカップルが、結婚が原因で長年安定していた生活に変化が生じていく様を丹念に描いた悲喜劇。保険・年金・不動産の問題、そして社会からの差別や肩身の狭い居候生活に押しつぶされそうになりながらも、二人の優しく、強い愛情が少しずつ周囲の人たちを変えていく過程を『あぁ、結婚生活』のアイラ・サックス監督が丁寧に紡ぎ、小さな驚きと大きな喜びの詰まった素敵な映画となっています。『チョコレートドーナツ』『パレードへようこそ!』を大ヒットさせたシネスイッチ銀座での上映とあって、期待がつのります。(3月、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開)

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