この10年のマンション市場の変遷を追う
大規模、タワーマンション、再開発に注目集まる
マンショントレンド情報サイトがオープンして、10年を迎えました。2006年といえば、前年の耐震偽装事件の起きた翌年でもあり安心・安全に関心が高まった年でもありました。大規模マンションやタワーマンションの供給が活発化し人気になったのもこの頃のマンションからです。当時の記事を振り返りつつ10年のマンショントレンドを見ていきたいと思います。まずは、商品企画面を振り返ってみましょう。最初に紹介するのは、大規模マンションのスケールメリットを世に知らしめた『パークシティ豊洲』に関する記事『パークシティ豊洲にみる複合再開発の魅力』です。「パークシティ豊洲」の魅力は、多彩な共用施設とともに、隣接する大型商業施設「ららぽーと豊洲」と居住者専用の地下通路で結ばれるなど、複合再開発のメリットを享受できる点です。こうした生活シーンを想定した商品企画は、2013年供給され人気を博した駅直結の再開発タワー『キャピタルゲートプレイス』などにも引き継がれています。
タワーマンションがメジャーな住宅として認知されたこともこの10年間の大きな流れでしょう。2006年には、『タワーマンションは、どこまで高くなる?』で、当時最高層だった59階建てのタワーマンション『パークシティ武蔵小杉』などを紹介しました。2009年に見学した建物からの眺望は、圧巻でこれからのタワーマンション人気を予感しました。2011年3月11日に発生した、東日本大震災でやや売れ行きが鈍ったものの、2014年に紹介した最高階数60階建てのタワーマンション『ザ・パークハウス 西新宿タワー60』へとタワー人気が続いていきます。
再開発エリアの街の変貌も、この10年の大きなトピックスでしょう。当サイトでも2006年に『新駅誕生で供給ラッシュ 武蔵小杉に注目』で、注目エリアとして『武蔵小杉』駅を取り上げていますが、『武蔵小杉エリア上昇率トップの理由』で、述べているように交通アクセスと利便性を兼備えた街は、共働き層やシニア層に支持され、地価やマンション価格も大きく上昇しました。
同様な街の変貌は、『豊洲』駅などの湾岸エリアにも言えることで、『豊洲に「キャナリスト」は本当にいるのか? 』で、当時増加していたファミリー層を現地で取材しましたが、職住近接のニーズは、あらゆる層のニーズとして顕在化していて、オリンピック効果もあり湾岸エリアのマンションマーケットは、変わらず活況を呈しています。
マンションづくりの流れを変えた東日本大震災
防災やコミュニティづくりが大きな課題に
この10年の最も大きなトピックとして挙げるとすれば、間違いなく東日本大震災でしょう。今年でもうすぐ震災後5年目を迎えますが、商品づくりも含めマンショントレンドに与えた影響は、大きかったです。震災直後の分譲マンションとして印象に残っているのが、『ワテラスタワーレジデンス』です。『メイドインニッポン!ワテラスタワーレジデンスに注目』で、東日本大震災後初めて、タワーマンションを取り上げましたが、オフィスと商業・住宅の複合再開発で制震構造を採用していましたが、非常用自家発電機の対応時間を72時間とするなど、防災面の配慮がなされていました。開発地内には、千代田区の帰宅困難者向けの防災倉庫も設置されています。さらに、『パークシティ武蔵小杉に見る震災後の防災対策 』で紹介したように、独自に防災対策を深化するマンションも目立つようになってきました。『パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー』では、太陽光発電パネルで創られる電力を、停電時に共用廊下などの照明に活用。東日本大震災の経験から、重要性が認知された水に関しては、飲料水と生活用水を十分確保。敷地外の下水道が損傷した場合も排水できるように約3日間分のトイレ汚水が溜められる汚水槽なども設置していて、さらに「コミュニティ」の育成なども加えた、複層的な対策が構築されています。ちなみに水の重要性に関しては、『震災当事者が語る「地震に備えて直ぐに水を備えよ』でも、紹介していますのでぜひご参考ください。
震災以降の商品企画の流れとしては、免震構造と制震構造を組み合わせた揺れの対策などの技術面と、防災備蓄倉庫・非常用発電機などの防災対策、コミュニティづくりなど共助の仕組みづくりが活発化しています。地熱利用も行う、『スカイズ タワー&ガーデン』などもその集大成の一つと言えるでしょう。
次ページでは、さらにマンションマーケットのトレンドを追ってみたいと思います。