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川口隆夫『TOUCH OF THE OTHER』インタビュー!(3ページ目)

公衆トイレにおける男性間性行為の研究を行ったロード・ハンフリースの論文をもとに発足した国際共同プロジェクト『TOUCH OF THE OTHER』。ロサンゼルスと東京での制作を経て、2016年新春に新作を発表します。ここでは、川口隆夫(振付・出演)、ジョナサン M. ホール(コンセプト)、飯名尚人(ドラマトゥルク)の三者にインタビュー。作品についてお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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ロスと日本ではマイノリティを取り巻く環境に違いはありますか?

川口>人種構成が違ったり、経済的な状況が違ったり、宗教的な問題もあったり、社会的にいろいろ違いはあると思います。ただ、エイズ以前は同じだった気がするけれど……。

ジョナサン>最近のロスの傾向として、公衆トイレなどハッテン場で出会いを求めるひとは、例えば移民で英語ができなかったり、家族と一緒に住んでいたり、連れて帰る家のないひとなど、収入の低いひとが多い。もちろんそこに行くしかないひとだけではなく、好んで行くひともいます。外での行為を好んだり、汚いところが好きだったり……。出会い系サイトも沢山ある今、あえてそういう場に行くこと自体に特有の意味があり、利用の仕方がだんだん変わってきている。日本もそうですが、特にアメリカではその変化が大きく見られます。ただ中国などに行くと、似たような現象は今でもあって。日本でも私たちよりもう少し前の世代は、トイレに行くことをよく“事務所に行く”という言い方をしていました。あと山手線の一番先頭の車両が出会いの場になっていた時代もありましたね。

川口>山手線、埼京線、中央線とか、電車でハッテンするんです。電車の車両=箱でひとと出会う、“箱専”です。

ジョナサン>そう考えると、ゲイの世界では違いはしてもそれほど大きな差はない気がします。けれど、一般のひとの理解が違う。当事者よりも他のひとたちの感覚の方が違ってきていると思います。

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近年は日本でもマイノリティの存在が受け入れられるようになりつつあるのでは?

飯名>そう見せかけられているだけ、かもしれませんよ。受け入れているように思わされている、安心させられている、ということかもしれない。テレビでオネエタレントが活躍したり、LGBTという言葉 をよく聞くようになったり、GAPの企画でLGBTをカミングアウトしたひとたちに自社の洋服を着せて写真家がポートレート写真を撮ったり……。もちろんそれが悪い訳ではなくて、むしろ良いことですけど、過剰になっていくとLGBがコマーシャルとして利用されてしまうこともあるでしょう。日本の社会は彼らに寛容である、という巧みなコマーシャルになってしまうかもしれません。実際はまだまだ不寛容な側面の方が多い訳ですから、それがきっかけになって議論が進めばいいのですが、一時的なイベントで終わってしまうこともよくある話です。

ジョナサン>例えば日本で40代の男ふたりがアパートを借りようとしても、ほとんど不可能でしょう。レズビアンもそう。好きなひとと住めないというのは良い状況だとは思えないし、抑圧はまだ多く残っているのを感じます。作品のビジュアルイメージを撮ってくれた鷹野隆大さんは、以前愛知県で写真展を開催したとき、警察の取り締まりが入って昨品を撤去するよう命じられたことがありました。彼は結局写真に布きれをかけて展示しましたが、そういう締め付けは今もある。いろいろな法律ができたりして、むしろ締め付けが強まりつつある。そうなると生きずらくなるひとも沢山出てきてしまう。直接・間接的に法律の影響を受けるひとが増えている現在の監視社会で、どうテーマに取り組んでいくべきか。それは僕らにとってチャレンジであり、闘っていきたいと思います。

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