「ラ・グルヌイエール」とは
フレンチ好きなら一度は訪れてみたい、フランスのレストラン「ラ・グルヌイエール」。シェフはその独創的な料理哲学で広く名が知られるアレキサンドリア・ゴーチエ。2015年のゴー・ミヨ(フランスでもっとも影響力のあるレストランガイド)で「今年最高の若きシェフ」にも任命されているほか、日本でもおなじみのミシュランでは一つ星を獲得しています。「僕の料理にメニュー書きはないよ」と語るシェフ。そのこころは何かと聞くと、次のように答えてくれました。「僕のポリシーは、自然に忠実な料理を出すこと。自然の恵みは変化するものでしょう? だからメニューを書く必要がないんだ」。そんな考え方を象徴するように「ラ・グルヌイエール」のテーブル席には、くしゃっと丸められたメニューがポンっとおかれています(写真)。初めてこのメニューを見ると驚くかもしれませんが、ネガティブな意味ではなく、シェフの哲学を反映していただけなんですね。「自然に忠実」、それが彼の考え方の主軸なのです。
空気が違う! 田舎の余暇に、最高の料理を堪能
写真をぜひご覧いただきたいのですが、ラ・グルヌイエールは超のつく田舎の中にあります。行き方は、まずパリの北駅から高速電車で約二時間かけてエタプル駅へ。ここはノール・パ・カレという地方。さらにそこから車で15分、ドライブしてようやくたどり着きます。到着してすぐの感想は「空気が違う~」。日本でもフランスでも田舎のすてきな環境は五感に響いてくるものですね。ゆったりと散歩するのも楽しいですよ。そして、なんといっても「ラ・グルヌイエール」の良さは「オーベルジュである」ということに尽きるかもしれません。オーベルジュとは、郊外にある宿泊施設付きのレストランのこと。ここにはたくさんの仕掛けがあって、部屋の中で楽しみながらくつろぐことができます。ガイドは今回、二度目の「ラ・グルヌイエール」訪問でしたが、ディナーと宿泊は初めて。思いっきり堪能することができました。
それでは、そのディナーの内容をご紹介しましょう。
憧れのダイニングテーブルで舌鼓
田舎ならではの自然を堪能しつつ、散歩を楽しんだ後、今回はお部屋で着物に着替えて心身をディナーに集中。いざレストランのダイニングテーブルへと向かいます。なんと今夜はキッチンの目の前、シェフズテーブルでいただける幸運に恵まれました!余談ですが、店名の「ラ・グルヌイエール」は日本語で直訳すると「蛙」という意味。実際、スペシャリテのひとつに「蛙」の料理があります。今回も蛙だけは「食べたい!」という旨を伝え、あとはシェフにお任せしました。
ここでは自然の恵みを活かすシェフに従うのが、一番良いオーダー方法だと思います!
自然へのオマージュが具現化された作品たち
お料理は全部で11品。一言で言うなら「自然へのオマージュが具現化された作品」が揃います。そこに広がるのは「単なる料理ではない世界観」。素材が上手に活かしつつ、かつ味もシンプルで研ぎ澄まされています。前菜はリズム良く、たて続けにサーブされます。まるで近隣の池のような「卵とメレンゲ」、苔のような「海苔と香草」、帆立や小海老など海の恵みの小さなお皿がさらに3品続き……。このスピード感が、食いしん坊にはたまらない! 加速し始める食欲と料理の絶妙なラリーが心地いいですね。
少量で多品種を提供するお店との「相性」は、始まりのサーブの「流れ」に大きく影響されます。その点、「ラ・グルヌイエール」のリズムは絶秒です!
「今日、採れたてです」。そう言いながらシェフが差し出してくれたのはポルチーニ茸。その大きさに思わず感動!秋に再訪できた喜びを感じながら、バターソテーでいただきます。シンプルなバターソテーこそ、味の活かし方のセンスが出ますね。ポルチーニ茸の切り方(軸やかさの大きさ、厚み)、バターの量、焦がし方、どれも相性良く、おいしくいただきました。
続くスペシャリテ「蛙のグリル」もシンプルで火入れとソースの量が抜群にいい。持ち上げて、骨周りに潜むソースを「ちゅるん」っとすする時の快感ったらありません(笑)。
そして、シェフの心憎いセンスに感銘したのが、最後のお料理です。メインのオマール海老を堪能した後、デザートへの期待をしつつ「あのポルチーニ茸の大きさとおいしさ、日本では味わえないなぁ」と名残り惜しんでいたときのことです。「最後に一口揚げたてを」とポルチーニのフリットが。シェフに気持ちを察していただけたうれしさとおいしさで二重の喜びでした。
デセールのスペシャリテはアメの美しさと甘すぎない上品さ、ハーブの香り高さが好印象の一品。ここでは自家製の蜂蜜とハーブティーとで食べた後の透明感を楽しみたいところ。自然に従った彼の思いと具現化された「中身」を、ぜひ堪能してください。
「ディナーと宿泊」で最高の贅沢。そして朝食も。
冒頭にも書きましたが、同店はオーベルジュ。ぜひとも、宿泊も堪能していただきたいところです。お部屋は「こんな草がいっぱいの場所……?」と一瞬驚きますが、その奥にこそワクワクが待っています。特にお風呂の作り方が最高にユニークで、画像だけでは伝えきれないので実際に体感してほしいです~(モドカシイ)。さて、余談ですが、宿泊したからには朝食も楽しみのひとつ。全て手作りのコンフィチュール、ヨーグルト、シャルキュトリ、パン、ジュースなどが堪能できます。やはり素材をありのままに使用していて、ナチュラルで体に快適に染み入るおいしさです。
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■ラ・グルヌイエール
住所:Rue De La Grenouillere, La Madelaine/Montreuil
電話:+33 3 21 06 07 22
営業時間:ランチ12:00~15:00 、ディナー 19:30~
定休日:春と秋、夏、冬など季節により変動あり
公式HP: http://www.lagrenouillere.fr/#