定期返済不要でも、いきなりジエンドがあるVC資金

このような状況下で、銀行に代わる役割を果たしてくれるのが、投資家会社=ベンチャーキャピタル(以下VC)と言う存在です。VCのビジネスモデルは銀行と異なり、融資ではなく資本出資という形で資金を提供し、企業価値を高め上場等を果たした段階で株式を売却してキャピタルゲインを得ます。

ベンチャー企業にとってVCからの出資の何がありがたいかと言えば、銀行融資と異なり定期的な返済が不要であるという点。「死の谷」や「ダーウィンの海」にあるような未だ事業が安定収入に至らない状況下では、たとえ月々わずかな返済額でもボディブローのように効いてきます。出資という「当面返さなくてよい資金」は、この上なく有難いのです。

さらにVCは資本出資を基本とするために、一般的に担保や保証人をとるというリスクヘッジ策はとりません。資金の定期的な返済を迫らず担保も不要。ではVCのリスクヘッジはどうなっているのでしょう。彼らは、株主としてあるいは役員派遣という形で経営に参画し、ベンチャー企業を育成の名目の下、経営的側面からリスクヘッジするのです。

リスクを考えよ

解説

資金がなければ研究開発現場は成り立たない

しかし、VCキャピタルも良い面ばかりではありません。彼らは一般的に投資事業組合を組成し投資家から資金を集め、その資金で将来性のある企業に投資します。すなわち、いずれかの将来に投資回収し、キャピタルゲインを得て投資家に配当することが目的です。事業の先行きが思うに任せず「キャピタルゲインの見込みなし」と判断されれば、投資の引き上げということもあり得ます。すなわち、「資金を全額返してください」ということです。

銀行借入の場合には、一度実行した融資は返済が滞ったり業況の劇的な変化でもない限り、「全額まとめて返済せよ」ということにはなりません。VC出資利用最大のリスクはここにあるのです。もし全額返還を求められれば、企業はVC所有の株式の買い取りを迫られ、経営者自らが買い取るか新たな出資者を探さなくてはならなくなります。つまり、事業自体に終止符を打たざるを得なくなるリスクをはらんでいるのです。

私の知っているIT系ベンチャー企業でも、VCからの出資返還を求められ慌てて友人親戚一同からおカネをかき集めるなどして、なんとかかんとか倒産を免れたと言う例があります。資本出資は、決して寄付や慈善事業ではないということをしっかりと押さえておかないと、大変なことになりかねません。

ちなみに、もうひとつベンチャー企業への資金供給源として、親戚友人とVCとの間に位置するビジネス・エンジェルというベンチャー支援を志す富裕層も存在します。親戚友人が1千万円レベル、VCが億単位の出資であるのに対して、ビジネス・エンジェルはその間に位置する数千万円レベルが一般的です。しかし、リターン期待であることには変わりなく、いくらベンチャー支援とは言っても慈善事業でないことはVCと同様です。

『下町ロケット』に見る佃製作所のような技術系の研究開発型企業が、自社技術の事業化の過程で必ずや苦労する資金調達問題。高すぎる銀行借入のハードル、見切りをつけられれば元の木阿弥のVC出資。多くの技術系中小、ベンチャー企業経営にとって資金調達問題は、表からは見えにくい大きな課題であるのです。



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