役作りはどうされていますか?
永橋>『海賊』のときもそうでしたけど、自分がこうしたい、ああしたいというよりも、振りの意味、アームスの置き方ひとつひとつをきちんとやっていけば自然と気持ちができていく。特別つくる必要もないし、役作りで苦労はしていないです。三木>エルダー先生から“前回の『海賊』は男性がメインに近かったけど、今回は真逆だよ”と言われています。いかにオーロラ姫を生かすかが大切だと。だから、今回はオーロラ姫が大変ですね。
永橋>引き立ててもらう以上、がんばるしかないですね(笑)。『眠れる森の美女』は役もいっぱいあるし、沢山のひとたちに支えてもらってる。でも、お姫さまって本来そういうものだと思う。だから、オーロラ姫になりきってしまえば、役の気持ちに入れるのではと考えています。
(C) TOKIKO FURUTA
三木>自分としては、控えめで押さえた表現=王子像だと思っていたんですけど、エルダー先生は違うんですよね。王子様は誰よりも気高く男らしくいなければいけないという。“えっ?”というくらい強さを求められます。その強さを溢れ出る気品で消すんだ、という感覚です。強さを出すと強さが勝ってしまう気がするけれど、それは違うと。そこはヨーロッパのバレエ学校の授業できちんと学んでいるでしょうと言う。確かに僕自身バレエ学校時代にそういうクラスがあったのを覚えていますが、ただ当時は全くそんなこと考えていなかったので、古い記憶を引っ張り出しながら、また教えてもらっている感覚ですね。学んできたこと全てに意味があるし、今だからこそ学べることもある。そのチャンスが去年の『海賊』一度だけだったらここまで考えが深まらなかったけど、二年続いているのはすごくラッキーであり、今年はなるほどと思うことがより多い気がします。
永橋>リハーサルをしていると、エルダー先生の愛情をたっぷり感じます。外国の方ってすごくわかりやすいので、イヤだったら教えてもらえないと思うし。ただ仕事だからという感じでもない。愛情があるからこそもっと教えてあげたい、良くしてあげたいという気持ちが伝わってくるので、こちらも一生懸命がんばろうと相乗効果が生まれてる。普通だったら海外でカンパニーに入らないと学べないものが、日本にいながらにして教えてもらえるのはありがたいことだなって思います。
三木>それに、エルダー先生自身すごくフレンドリーなひとなんですよね。僕は言葉がわかるのでよく話すんですけど、彼は僕と妻のことをいじるのが好きで、僕が踊ってる最中に妻が稽古場に来ると、“ほら、奥さんが来たからいいとこ見せろ!”“そんな踊りじゃ晩ご飯ないって!”なんて言われたり、しょっちゅう夫婦漫才をやらされてます(笑)。
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