谷桃子バレエ団で『眠れる森の美女』が上演されるのは今回が初めてだそうですね。
三木>本当に満を持してですね。谷先生の『眠れる森の美女』に対するこだわりが大きくて、そう簡単にできる作品ではない、もし上演するならイリーナ・コルパコワ先生に監修をお願いしたい、という思いがあったみたいです。公演が決まったときは谷先生もお元気だったので、楽しみにされていたようですけど……。昨年の秋までは稽古場にもいらしてましたが、ちょっと体調がすぐれないようなときでも、稽古場に来るとしゃんとした姿をみんなに見せてくださってましたね。永橋>昨年3月の『海賊』まではリハーサルをみていただいてました。私が谷先生と最後にお話ししたのは『海賊』が終わったあと。“舞台、良かったみたいね”“残念だったわ、観たかったわ”と言ってくださって……。私もこれまでバレエ団のレパートリーはひと通り踊ってきましたが、『眠れる森の美女』の全幕は踊ったことがなかったので、やっぱり嬉しい気持ちが一番ですね。ただ雄馬君がバレエ団に入ったときに初めて組んだ演目がロイヤル版の『眠れる森の美女』で、第三幕だけ踊ったことがあります。雄馬君、あのときすごく緊張してて(笑)。
(C) TOKIKO FURUTA
三木>2008年の秋ですね。あのときは自分でも驚くくらい緊張しました。日本でバレエ団に入ったのは谷桃子バレエ団が初めてだったので、こういうものなんだと学ぶことが多くて。谷桃子バレエ団は歴史も長いし、暗黙のルールがあるんです。例えば主演を踊る人間は全てのパートをひと通り知っておかなければいけない、とか。各々がそのシーンで何をしているか把握していないと、真ん中に立っても絵を描けないからと。またあのときは『眠れる森の美女』と平行して『白鳥の湖』にも出演していて、一日5役くらい踊っていたんです。あまりにも短期間に覚えることが多すぎて、自分の中で“準備不足なのでは……”という不安があったのかもしれません。
永橋>袖で手をつないでるときから緊張してて。雄馬君のことは10代の頃から知ってますけど、珍しいなと……。
三木>エントランスの階段を歩くときから、“ここから落ちたらどうしよう?”なんて考えたり。“もうやだ、出たくない!”って言ってましたね(笑)。
永橋>私も緊張が移って、“やめてよ、そんな緊張しないでよ”って言ってました(笑)。実際踊ってみると、やっぱりオーロラ姫はすごく緊張するけれど、ハッピーな物語なのでとても楽しかった記憶があります。
(C) TOKIKO FURUTA