ーー今回はアレクサンダー・ザイツェフと元香港バレエ団ソリストの高比良洋によるダブル・キャストで上演します。
ジョヴァンニ>『春の祭典』は34分間のソロ作品で、体力的にスタミナをキープするのが非常に難しいため、今回はダブル・キャストにしました。日本人ダンサーの高比良洋さん、ロシア人ダンサーのアレクサンダー・ザイツェフさん、それぞれ全く違ったタイプのダンサーであり、私ともまた異なるタイプのダンサーです。
私の役割はダンサーの振付指導ではありますが、それぞれの良さをどう引き出すか、特にそれぞれの感情面をどのように引き出すかを課題にしています。ふたりとも非常に美しく、しっかりしたテクニックを持っているダンサーです。最初この振付を日本人ダンサーが踊ることができるか心配していましたが、高比良さんはとても豊かに彼の持つ感情を出してくださり、非常に満足しています。
高比良さんの方がアレクサンダーよりかなり若手ですが、若いひとの方が経験が少ないから表現が乏しいかというとそうではありません。作品を自分のなかにどう取り入れるか、作品を自分の人生とどう照らし合わせていくかが大切になる。ふたりとも表現の仕方が全く違い、私も振付指導をしながらとても感動していますし、この作品自体が特別なものになってきているのを感じます。
ステージ上では、ダンサーが踊っている背景に私の踊った初演時のビデオが投影されます。当時ウヴェ・ショルツが編集してつくったビデオです。今回はウヴェ・ショルツの遺志を継ぐという意味で新しくふたりのダンサーが踊りますが、投影されるビデオはオリジナルの自分の映像です。
『春の祭典』リハーサル(c)miki sato
ーー初演時はジョヴァンニさんが踊ったソロバージョンに加え、グループバージョンの『春の祭典』も発表されています。どういった作品だったのでしょう。
ジョヴァンニ>2003年の初演時はソロバージョンとグループバージョン、ふたつの『春の祭典』をひと晩で上演しました。グループバージョンは木村規予香さんをはじめ40~50人が出演する壮大な作品で、オーケストラの生演奏での上演です。ソロの方はストラヴィンスキーのピアノ曲二曲をピアニストたちが演奏しました。
ソロバージョンに続いてグループバージョンと同じ曲をひと晩で二回聴くことになりましたが、ある場面では全く違う曲のように聴こえてきたこともありました。グループバージョンはオーケストラを使っているのでよりシンフォニックで、ウヴェ・ショルツはこの作品の制作後、シンフォニックの振付家といわれるようになりました。
『春の祭典』リハーサル(c)miki sato