「KAKAI歌会2015」観劇レポート
演じ手の目線で「歌遊び」を極める、ユニークなショー
『KAKAI歌会2015』写真提供:ショウビズ
各人のソロ・コーナーへと移行すると、トップバッターの谷口ゆうなさんはアップテンポの「シネマ・イタリア―ノ」で躍動感あふれる歌声を披露。その後ろでは黒いハットを被った原田さん、福井晶一さんがフォッシー風ダンスを披露していますが、特定のミュージカル作品世界の縛りがないため、同じ振付を踊っていてもそれぞれの“味”が如実に現れるのがコンサートならではの面白さ。福井さんの久々ののびやかなダンスに、彼の当たり役であるマンカストラップ(『キャッツ』)を懐かしく思い出した方も多いのではないでしょうか。
白羽ゆりさん、原田さんのソロは“ここではないどこか”への憧憬タイプの楽曲で、ロマンと物語を一曲の中に描き出すお二人の表現力が流石です。続く泉見洋平さんの「A Whole New World」も同系統のナンバー…と心地よく耳を傾けていると、泉見さんはくるりと半身を返し、邪悪な声でジャファーのナンバーに転換…と思えばまたアラジン役…という、“ディズニーいいものVS悪者”対決コーナーが、予告なしに始まっていました。『リトル・マーメイド』アリエルとアースラの伊東えりさん、『ライオンキング』シンバとスカーの福井さんともども、誇張たっぷりで“いいものVS悪者”の歌い分けを楽しみつつも、歌唱そのものは決しておふざけにならず、きちんと歌っていらっしゃるところにミュージカル俳優のスタンスがうかがえます。
『KAKAI歌会2015』
ソロ・コーナーと思っていたらこれも3曲が“悲劇自慢”というテーマでくくられていた白羽さんの「私だけに」(『エリザベート』)、谷口さんの「命を上げよう」(『ミス・サイゴン』←泉見さんトゥイが一瞬特別出演)、そして原田さんの「Tomorrow」(『アニー』)のマッシュ。伊東さん、泉見さん、福井さん(ダイナミックな歌唱で本編で拝見したくなる「Music of the Nighit」)ソロに、全員の「Showほど素敵な商売はない」まで駆け抜け、前半の幕が下ります。
『KAKAI歌会2015』
『KAKAI歌会2015』
気をとりなして(?)フォーマル・スーツに着替えたゲストの今井さんが「観たことないんだけど」という驚きのコメントとともに「神よなぜ許される」(『モーツァルト!』)で迫力の歌声を聞かせた後は、白羽さん、谷口さんが情感豊かに「For Good」(『ウィキッド』)を歌い、泉見さんの「サラ」(『ダンス・オブ・ヴァンパイア』)、伊東さんの「夢破れて」(『レ・ミゼラブル』)などお一人ずつの正統派歌唱タイムで、舞台はいよいよクライマックスへ…と思いきや、終盤に6人がそれぞれに「私が主役です」とばかりにサビ合戦。最後まで遊び心を忘れず、アンコールには美空ひばりの「歌はわが命」を皆さんの気概の象徴として歌い、お開きとなりました。
『KAKAI歌会2015』