【15年11月掲載記事】
颯爽として雄々しい『キャッツ』のリーダー猫、マンカストラップ。強さと脆さの両面を持ち合わせ、愛に殉じる姿を通して舞台をロマンティックに染め上げた『アイーダ』のラダメス。ヒロイックな持ち味と温かな美声を武器に様々な大役で鮮烈な印象を残し、13年に初出演となった『レ・ミゼラブル』でもジャン・バルジャン、ジャベール役の系譜にその名を刻みつけたのがこの方、福井晶一さんです。

今後ますますの活躍が期待される彼ですが、その最新作は原田優一さん構成・演出の『KAKAI歌会2015』。一般的なミュージカルコンサートとは一味も二味も異なる、“爆笑必至”(?)のコンサートとして人気のシリーズですが、これまでの福井さんの持ち役とは明らかに異なる路線とあって、想像もつかない方も多いかもしれません。どんなことになりそうか、ご本人に直撃しました。

「エンタテインメントのありとあらゆる形」が詰め込まれた(?!)コンサート『歌会』

――今回の出演は、『レ・ミゼラブル』での(マリウス役)原田さんとの共演がきっかけだったのでしょうか?
『KAKAI歌会2015』リハーサルより。(C)Marino Matsushima

『KAKAI歌会2015』リハーサルより。(C)Marino Matsushima

「はい、『レミゼ』の出演中に原田さんに声をかけていただきまして、即、決めました。僕は前回の『歌会』を拝見していまして、その時にすごく楽しくて、何も考えずにただただ笑い転げていたんです。まさか自分にお声がかかるとは思っていなかったのですけど、せっかく声をかけていただいたので、自分にこういう舞台ができるかどうかわかりませんが、優一君に委ねればどうにかなるかな(笑)、と。ただ、スケジュール的なことだけが不安で、この公演の直前まで『何処へ行く』に出演していることになっていたので、“稽古に出られる期間がこれしかないんだけど大丈夫かな”と尋ねたら“全然大丈夫です!”と言ってくださって、“よろしくお願いします”ということになりました」

――…で、大丈夫でしたか。

「いや全然、ですね(笑)。自分で自分の首を絞めてる状態です」

――「歌会」をご覧になったことのない読者もいらっしゃると思うのですが、一般的なミュージカルコンサートとはちょっと違うのですね。

『KAKAI歌会2015』

『KAKAI歌会2015』

「違いますね。これまで僕は、お客様が期待されるような、華やかできれいなミュージカルコンサートをよく観てきたのですが、『歌会』はきれいじゃないもの(笑)も含めて、エンタテインメントのありとあらゆる形が登場するようなイメージです。“この人こういうこともやっちゃうの?”というようなものも出てきて、度肝を抜かれました」

――ミュージカルコンサートには、ミュージカル「作品」に出演するのとは違う楽しみがありますか?

「“作品”だと役を突き詰めて歌い方を探る必要があるけれど、“コンサート”にそれはないので、ある程度、役とはかけ離れた世界で、より自分の色を出していいのかなと思っています。

これまでのミュージカルコンサートでは、共演の皆さんの集中力に圧倒されてきました。こういったコンサートは稽古時間がすごく短くて、稽古を一回やると次はもうゲネプロだったりするんですよ。僕がいた劇団四季では、ミュージカルコンサートの要素を持つ『ソング&ダンス』という演目でも1か月しっかり稽古していたので、始めはとまどいました。皆さんの追い込みの集中力はものすごくて、最初は歌も入っていない状態でいらっしゃるけれど、次の稽古ではもう入っていて、翌日にはもう舞台に乗ってしまう。凄いなあと思います。もっとも、意外と本番はみんなドキドキで、すごい緊張感のなかでやってたみたいですけど(笑)」
『KAKAI歌会2015』リハーサルより。(C)Marino Matsushima

『KAKAI歌会2015』リハーサルより。白羽ゆりさん、谷口ゆうなさんが歌うのは女性二人の定番デュエットであるあの名曲。(C)Marino Matsushima

――今回の『歌会』、始めに台本(構成案)をご覧になっての第一印象は?

「ある程度は予想していたんですけど、やはり優一君の作品ということで…、細かい(笑)。いろんな要素が入っていますね。通常のコンサートのような、バックダンサーの方がいらっしゃるところに登場して歌って、終わったら次の方と入れ替わって…ということでは全くないです。今回はアンサンブルの方もいらっしゃらなくて、自分も久々に踊ったりもしますし、笑いの要素もあります」

――そうそう、久々に福井さんのダンスが拝見できるのですよね。

「数日前に振り付けていただいたのですが、どうなることでしょう(笑)。谷口ゆうなさんがソロを歌っている時に後ろで踊っていたりします。ダンス専門の方に比べたら申し訳ないですけど、『歌会』ということで(笑)」

正統派ナンバーのソロ・コーナーVS「見てはいけない」(?)コスプレ・ナンバー

『KAKAI歌会2015』リハーサルより。(C)Marino Matsushima

『KAKAI歌会2015』リハーサルより。和やかな空気の中、複雑に編曲された楽曲を瞬く間に体に入れ込んでゆく福井さん、泉見さん。背後に積まれた鬘はひょっとして…?(C)Marino Matsushima

――ソロの選曲はご出演者それぞれのリクエストによるものだとうかがっています。一般的にはいわゆる「持ち歌」を歌う方が多いかと思いますが、今回、福井さんが選んだ2曲は、いずれもこれまで演じたことの無い作品のナンバーですね。

「これまで出演したコンサートで持ち歌は歌いましたので、今回は違う曲もいいかなと思ったんです。2曲のうち『Music Of The Night』(オペラ座の怪人)は劇団時代、いつかはやりたいと思っていた役ですし、もう一曲も好きな曲です。“ザ・ミュージカル”というような大ナンバーを自分なりにしっかり歌いたいなと思っています。一曲一曲、その歌の世界にお客様を連れていければいいかな」

――2幕頭では凄い扮装をされるようですが…。一瞬、『ジーザス・クライスト=スーパースター』ジャポネスクバージョンのヘロデ王ナンバーの演出がよぎりました。

『KAKAI歌会2015』

『KAKAI歌会2015』

「そこは優一君のアイディアで、コンセプトについてはわかりません。僕は言われるがままに(笑)やらせていただきます」

――昭和歌謡のコーナーも楽しくなりそうですね。

「女性陣がピンク・レディーを歌ったり、男たちでキャンディーズを歌ったりします、振り付きで(笑)。あの時代を思い出せるような、すごく懐かしいシーンになるのではないかな。あと『歌会』では“マッシュ”といって、数曲を一つの曲に入れ込んでかわるがわる歌って、最後に一緒に終わるというコーナーがあって、それも面白いと思います。皆さんに喜んでいただければいいですね」

――ご出演者は原田さん、福井さんのほか伊東えりさん、泉見洋平さん、白羽ゆりさん、谷口ゆうなさん。共演歴のある方も、初めての方もいらっしゃいますが、どんな雰囲気のカンパニーでしょうか。

「僕は遅れて稽古に入ったのですけど、みんなでSNSのグループを作っていて、日々稽古の様子を写真入りで見ることができたんです。既に仲が良さそうで僕大丈夫かなと思っていたんですけど、昨日初めて来たら皆さんが分らない箇所を教えてくれたり、すごく優しくしてくれて。いいチームです」

――どんなライブになりそうでしょう?

「とにかく楽しいと思います。僕も客席から観たいです(笑)」

――福井さんのどんな新しい一面が拝見できるでしょう?

「どんなものかはまだわからないですけど、“優一君マジック”で新たなものを引き出していただけると思います!」

*お待たせしました、ここで演出の原田優一さんのスペシャル・コメントをご紹介します!
『KAKAI歌会2015』

『KAKAI歌会2015』

――『レ・ミゼラブル』で長期間共演された原田さんから見て、福井さんはどんな方ですか?

原田優一「根が体育会系の方ですから、内なるメラメラをそれはそれは感じます。そこが福井さんの魅力の一つだと思います。まさに“ギャップ萌え”。穏やかなのに熱きイケメンってズルいですよね。

歌会のチラシを和服女装でとお願いしたのは、確か『レ・ミゼラブル』の舞台袖でした。バルジャンの衣裳に身を包んだ福井さんに「花魁をやりたいんです」と言っているマリウス。大変滑稽な図でございました(笑)」

――今回、どんな福井さんが見られそうでしょうか。

原田優一「まさにギャップに萌えていただきましょう。そして今回私は、福井さんのテーマは「やりたかったんじゃん!」にしました。な~んだ、やりたかったんじゃん結局!という福井さんをお楽しみください!」

*次頁では福井さんのこれまでをうかがいます。野球少年だった福井さんですが、一本のミュージカルによって人生が変わったのだそう。その作品とは?